悪名
『悪名』(あくみょう)は、今東光の長編小説。昭和の戦前期を舞台に、「八尾の朝吉」こと村上朝吉が故郷の河内を出て博徒となり、弟分とともに喧嘩と恋に明け暮れるさまが描かれる。この項目では本作を原作とした映画シリーズおよび、演劇についても記述する。
小説
編集1960年に『週刊朝日』で連載。1961年に新潮社で単行判が発売され、1963年に角川文庫(全2巻)、1964年に新潮文庫で再刊された。
映画
編集勝新太郎主演版
編集原作小説を連載していた『週刊朝日』の編集長田中利一が、大映の監督・田中徳三の実兄だった縁で、1961年に映画化された。朝吉を勝新太郎、その弟分(1作目・2作目「モートルの貞」→3作目~14作目「清次」[1])を田宮二郎が演じた。映画第1作のヒットを受け、以降は脚本家依田義賢のオリジナルでシリーズ化され、大映で15作、勝プロで1作の全16作が製作された。
原作の朝吉は基本的に流れ者であるが、第2作では没落した博徒一家に乞われ親分の座に就く描写がある。また原作小説が朝吉の出征で物語が完結するのに対し、映画シリーズでは舞台を戦後に移し、朝吉らが行く先で暗躍するヤクザたちを退治するさまが描かれた。
同シリーズ中で永田靖が演じたライバル「シルクハットの親分」に類似したキャラクターが『緋牡丹博徒シリーズ』(東映)に「シルクハットの大親分」(演:若山富三郎)として登場している。
- 悪名(1961年、大映)
- 続悪名(1961年、大映)
- 新悪名(1962年、大映)
- 続新悪名(1962年、大映)
- 第三の悪名(1963年、大映)
- 悪名市場(1963年、大映)
- 悪名波止場(1963年、大映)
- 悪名一番(1963年、大映)
- 悪名太鼓(1964年、大映)
- 悪名幟(1965年、大映)
- 悪名無敵(1965年、大映)
- 悪名桜(1966年、大映)
- 悪名一代(1967年、大映)
- 悪名十八番(1968年、大映)
- 悪名一番勝負(1969年、大映)※田宮は大映退社により出演せず
- 悪名縄張(しま)荒らし(1974年、勝プロ・東宝)※『悪名』『続悪名』のリメイク
幻の東映版
編集原作の版権が東映へ移り、1973年には菅原文太主演でリメイクすると公表されたが、製作されなかった[2]。
的場浩司主演版
編集2001年に再び映画化され、朝吉役を的場浩司、貞役を東幹久が演じた。この節ではオリジナルビデオとして制作された続編についても扱う。
舞台
編集脚注
編集- ^ 原作での弟分であるモートルの貞は2作目『続悪名』において対立する博徒に襲われて亡くなり、3作目以降の清次は、貞の弟という設定。
- ^ 「映画往来」『シナリオ』1973年4月号、日本シナリオ作家協会、85頁。