塩化水銀(I)
水銀の塩化物の一つ
塩化水銀(I)(えんかすいぎん いち、calomel)は、水銀の塩化物の1つ。水銀の塩化物である塩化水銀は2種類あり、もう1つは塩化水銀(II) である。Hg2Cl2 という組成をもち、塩化第一水銀(えんかだいいちすいぎん)、甘汞(かんこう)、カロメルとも言う。水銀原子同士が共有結合により結合しているため HgCl とは表記しない。
塩化水銀(I) | |
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塩化水銀(I) | |
別称 甘汞、カロメル | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 10112-91-1 |
EC番号 | 233-307-5 |
国連/北米番号 | 3077 |
RTECS番号 | OV8750000 |
特性 | |
化学式 | Hg2Cl2 |
モル質量 | 472.09 g/mol |
外観 | 白色の固体 |
密度 | 7.150 g/cm3 |
沸点 |
383 °C, 656 K, 721 °F (昇華) |
水への溶解度 | 0.2 mg/100 mL |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 0984 |
EU分類 | 有害(Xn) 環境への危険性(N) |
EU Index | 080-003-00-1 |
Rフレーズ | R22, R36/37/38, R50/53 |
Sフレーズ | (S2), S13, S24/25, S46, S60, S61 |
関連する物質 | |
その他の陰イオン | フッ化水銀(I) 臭化水銀(I) ヨウ化水銀(I) |
その他の陽イオン | 塩化水銀(II) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
性質
編集光に当たると塩化水銀(II) と金属水銀に分解する。毒性は塩化水銀(II)よりは弱いが、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されている。白色またはやや黄ばんだ白色をしていて水には溶けにくい。
アンモニア水と反応すると黒色に変わる。反応式は次の通りである。
構造
編集水銀は第12族元素では唯一 M-M 結合を形成する元素で、Cl-Hg-Hg-Clの単位構造をとる。
Hg-Hgの結合長は253 pmで、Hg-Clの結合長は243 pmである[1]。全体的に水銀原子を中心とした八面体形構造をとり、2番目に近い4個の塩素原子との距離は321 pmである。
用途
編集かつては化粧品(白粉)や下剤・利尿剤として利用されていたが、水銀中毒の危険があるために現在は使用されていない。塩化水銀(I) は基準電極として利用されることがある。
脚注
編集- ^ Wells A.F. (1984) Structural Inorganic Chemistry 5th edition Oxford Science Publications ISBN 0-19-855370-6