国鉄1260形蒸気機関車
概要
編集元は、簸上鉄道(現在の西日本旅客鉄道木次線の一部)が1923年(大正12年)に日本車輌製造で2両(製造番号102, 103。5形(5, 6))を製造した、飽和式の2気筒単式の小型機関車で、1934年(昭和9年)に簸上鉄道が国有化されたのにともない、鉄道省籍となったものである。車軸配置0-6-0(C)のサイド・ウェルタンク・30t級機関車である。
原設計は、1895年(明治28年)・1901年(明治34年)英国ダブス製の1480形で、これを鉄道院から払い下げを受けた八幡製鉄所が1921年(大正10年)に同仕様で日車に3両を増加発注したのを契機に、動輪径の若干異なる同形機を製造して、各地の私鉄に売り込んだ。その一つが本形式である。
国有化後は、1260形(1260, 1261)に改番の上、鷹取工場の入換用に使用されたが、1943年(昭和18年)に両機とも大江山ニッケル鉱業に譲渡された。大江山ニッケル鉱業は同年、日本冶金工業に合併され、その傘下にあった加悦鉄道に車籍編入された。1260は、加悦鉄道の終点加悦駅と大江山鉱山を結ぶ専用線で使用されたが、1947年(昭和22年)に昭和電工魚津工場に譲渡された。一方の1261は、1947年4月に日本ニッケル鉄道(後の上武鉄道(2代))に貸し出され、1949年(昭和24年)3月に返却された。その後は加悦鉄道で使用され、廃車後は加悦SL広場で静態保存されていたが、2022年3月に移転された。
同形機
編集本形式の同形機は、最初となった八幡製鉄所の3両を皮切りに10両が1926年までに製造されている。その状況は次のとおりである。
- 1921年(3両)
- 製造番号33 : 八幡製鉄所 300
- 製造番号34 : 八幡製鉄所 301
- 製造番号35 : 八幡製鉄所 309
- 1922年(2両)
- 製造番号63 : 越後鉄道 16 → 鉄道省 1740
- 製造番号64 : 越後鉄道 17 → 鉄道省 1741
- 1923年(2両)
- 製造番号102 : 簸上鉄道 5 → 鉄道省 1260 → 大江山ニッケル鉱業(加悦鉄道) 1260 → 昭和電工
- 製造番号103 : 簸上鉄道 6 → 鉄道省 1261 → 大江山ニッケル鉱業(加悦鉄道) 1261
- 1924年(1両)
- 製造番号124 : 陸奥鉄道 5 → 鉄道省 1750
- 1926年(2両)
- 製造番号148 : 茨城鉄道 1 → 茨城交通(茨城線) 11
- 製造番号149 : 茨城鉄道 2 → 茨城交通(茨城線) 12
越後鉄道
編集越後鉄道(現在の東日本旅客鉄道越後線、弥彦線)へは、1922年製の2両が入り、16, 17と付番された。1927年(昭和2年)の越後鉄道国有化にともなって、1740形(1740, 1741)と改番された。この機関車の動輪径は1,067mmであったが、簸上鉄道のものに比べて側水槽が大きく、原形となった1480形並みの容量があった。
ブレーキ装置は真空ブレーキと手ブレーキであったが、国有化後に真空ブレーキは空気ブレーキに改められた。越後線などで使用されたが、1937年(昭和12年)に1両が札幌鉄道局に移動し、1942年(昭和17年)に2両とも廃車となった。
陸奥鉄道
編集陸奥鉄道(現在の東日本旅客鉄道五能線の一部)へは、1924年製の1両が入り、B形(5)と称した。1927年の陸奥鉄道国有化にともなって、1750形(1750)に改番された。この機関車の動輪径は1,118mmで、その分高さ関係の寸法が大きくなっている。ブレーキ装置は蒸気ブレーキと手ブレーキであったが、国有化後に蒸気ブレーキは空気ブレーキに改められた。
国有化後も仙台鉄道局管内にあって、郡山、弘前、盛岡等で使用されたが、1949年(昭和24年)に廃車解体された。
茨城鉄道
編集茨城鉄道(後の茨城交通茨城線)へは、1926年製の2両が開業用として用意され、1, 2と付番された。茨城交通成立後は、合併した旧・湊鉄道の機関車と番号の重複が生じたため、茨城線用の機関車を11から付番することとし、1948年(昭和23年)6月に11, 12と改番した。
その後、11は1958年(昭和33年)5月11日、12は1962年(昭和37年)5月10日付けで廃車され、いずれも解体された。
主要諸元
編集1260形の諸元を示す。
- 全長 : 8,307mm
- 全高 : 3,482mm
- 軌間 : 1,067mm
- 車軸配置 : 0-6-0(C)
- 動輪直径 : 1,070mm
- 弁装置 : ワルシャート式
- シリンダー(直径×行程) : 356mm×508mm
- ボイラー圧力 : 12.5kg/cm2
- 火格子面積 : 1.02m2
- 全伝熱面積 : 60.8m2
- 煙管蒸発伝熱面積 : 54.7m2
- 火室蒸発伝熱面積 : 6.1m2
- 小煙管(直径×長サ×数) : 45mm×2,824mm×154本
- 機関車運転整備重量 : 32.65t
- 機関車空車重量 : 26.45t
- 機関車動輪上重量(運転整備時) : 32.65t
- 機関車動輪軸重(第3軸) : 11.00t
- 水タンク容量 : 2.3m3
- 燃料積載量 : 1.00t
- 機関車性能
- シリンダ引張力 : 6,390kg
- ブレーキ装置 : 蒸気ブレーキ(原形)、手ブレーキ → 空気ブレーキ(国有化後)