ホットドッグ
ホットドッグ(英語: Hot dog)は、加熱したソーセージを細長いバンで挟んだ食品である。なお、英語の"dog"はソーセージを意味する俗語で、そのためパンを含まないソーセージ単体も"Hot dog"と呼ばれる。
ホットドッグ | |
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ホットドッグ | |
発祥地 | アメリカ合衆国 |
Cookbook ウィキメディア・コモンズ |
概要
編集ソーセージは湯煎または焼網や鉄板、店舗用の回転式専用グリラーなどでグリルされる。 パンは常温、トースト、スチームと、店や好みによって様々である。 味付けはマスタードを基本にトマトケチャップ、レリッシュ(タマネギやピクルスを細かく刻んだもの)、ザワークラウトなどが用いられる。日本ではマスタードとケチャップの組み合わせがよく見られるほか、チリミートをかけたチリドッグ、溶かしたチェダーチーズをかけたものや、トマトなどの野菜を挟んだシカゴドッグ、サルサをかけたサルサドッグなどさまざまなバリエーションがある。
具材
編集ソーセージは、太さ2~3cm長さ15~16cmほどの大ぶりなものが用いられ、牛肉、絹挽き、豚肉の荒挽きなど多様。 日本では、豚肉(ドイツ式のソーセージ、フランクフルト、ウインナーソーセージ)が主に用いられていて、普及初期の敗戦後は魚肉ソーセージで代用されたといい、現在でもデニッシュに魚肉ソーセージを焼き込んだおかずパンは、子供達に愛されている。
パンについては、北米では柔らかく甘みのあるやや角張った小さめのもので、水平にスライスされる。日本ではコッペパンを小型にしたような形状のロールパンや、表面の固いフランスパンのような生地のものが多く、底面に対して垂直に切り込みが入れられる。一部チェーン店では、ナンを用いたナンドッグも販売されている。
日本では、昭和の時代に移動販売車や駅構内などのスタンドで小型のロールパンに赤いウインナーとカレー粉で炒めたキャベツなどを挟んだもの(発祥のドイツにも、カレー味のカリーヴルストという屋台料理があるという)や、喫茶店で炒めたキャベツとともに挟んでトーストしたものを、さらにキムラヤでは、薄切りハムとコールスローをパンに挟んだものを『ホットドッグ』と称して販売していた。
名称
編集アメリカにおいて"ドッグ"という用語は、19世紀にはソーセージの同義語として使用されていたが、これはソーセージに犬肉が使用されているという都市伝説によるものだった。実際ドイツでは19世紀から20世紀にかけて一部の地域では犬肉の消費は一般的でソーセージにも含まれていた。
日本においては、その中身よりもパンにソーセージを挟むというスタイルそのものが注目されたため、ドッグバンを用いたサンドイッチであれば、中身がソーセージでなくとも「~ドッグ」と呼ばれる例がある。
またホットドッ「ク」という表記もしばしば見られ、商品名として採用している会社も存在する[1]。
2016年、アメリカのプレッツェルチェーン、アンティ・アンズが、マレーシアにおいて自社製品のプレッツェルドッグ(プレッツェル生地でソーセージを巻いた食品)にハラル認証を求めたところ、ドッグの語感がイスラム教では不浄な存在にあたる犬(dog)に通じるとして当局から難色を示された。結果的にアンティ・アンズはドッグを外し、「プレッツェルソーセージ」への改名を行っている[2]。
歴史
編集熱いソーセージをパンに挟んで供するという工夫はドイツからアメリカへやってきた移民達によって伝えられたと考えられている。鍋で温めたソーセージを売り歩いていたドイツ人の売り子がソーセージを掴んで食べるための手袋を貸していたが、それを持ち去る客に困惑し、代案としてパンに挟んで提供することを思いついた[3]という説である。
ホットドッグに挟んであるソーセージは元々はドイツのフランクフルトで生まれたフランクフルターソーセージ[4]だった。当時のホットドッグの呼び名は「フランクフルター」だった[4]。フランクフルト・アム・マイン市の主張するところでは、1847年 コーブルクの食肉製造販売業者ヨハン・ゲオルク・ヘーナー(Johann Georg Hehner)がフランクフルトでこのソーセージ料理を発明したという[5]。
このスタイルがアメリカ合衆国において広まるきっかけを作った人物はコニーアイランドで屋台を開いていたチャールズ・フェルトマン(フェルトマンの使用人のネイサンが始めたホットドッグスタンドがネイサンズである)や、ポロ・グラウンズの売り子であったハリー・スチーブンスなど諸説あるが、定かではない。チャールズ・フェルトマン(Charles Feltman)は元々カール・フィリートマン(Karl Friedmann)と称し、故郷の北ドイツから15歳でアメリカに移住した人物である[6]。いずれにせよ19世紀後半のニューヨークではこうした形の食べ物が認知され、様々な場所で販売されていたことは間違いのないところである。
ちなみに、名付け親は、漫画家のタッド・ドーガンだという説が有力である[4]。この説では、球場で売っているダックスフントソーセージの様子を新聞漫画にしたいと考えたが、ダックスフントのつづりが分からなかったためDogと書いた[4]。そして、HOT DOGという表記で新聞漫画に描かれた[4]。この事がきっかけで以後はホットドッグと呼ばれるようになったとされる[4]。ただし、この漫画はまだ見つかっていない[4]。
アメリカ在住のドイツ人の多くが「ソーセージの形の」犬、つまりダクスフント(Dachshund, Dackel)を飼っていたからとする説もある。ちなみにドイツ語のフント(Hund)は語源的に英語の hound(猟犬)に対応する語であるが、猟犬に限らず犬一般を意味する[7]。
ドイツのソーセージは本来豚肉を原料としていたが、アメリカに伝来してからはより入手しやすい牛肉が主に使われるようになった。現在では牛肉以外にも豚肉、鶏肉、七面鳥、およびそれらのブレンドなどに加え、大豆たんぱくを用いたベジタリアン・ホットドッグまでも生産されている。
アメリカでは1人当たり年間60食を消費していると言われ、国民食の代表として位置づけられている[8]。特に野球観戦とホットドッグの繋がりは深く、ドジャー・ドッグ(ドジャー・スタジアム)、フェンウェイ・フランクス(フェンウェイ・パーク)など、野球場にはそれぞれ名物とされるホットドッグがある。
また、米国史上最高の自動車CMとして名高い[9]1970年代のシボレーのテレビCMで用いられたキャッチコピー「ベースボール、ホットドッグ、アップルパイ & シボレー」(考案者は名コピーライターのジェームズ・ハーツェル)によりさらにアメリカ文化を代表する食べ物としてのイメージが高まったとされる[10]。
1916年より、毎年7月4日にニューヨークにおいて「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」が開催されており、2001年から6連覇を果たした小林尊など日本からの参加者が上位に入賞することがある。
言葉
編集Hot dogという語は、アメリカ合衆国において、驚きや喜びを表す感嘆詞、あるいは有能な人材や目立ちたがり屋の喩えなどとして用いられることがある。後者の場合には、Hotdog等とも綴る[11]。
中国語では熱狗といい、Hot dogのおのおのの語彙を漢字に当てている。日本とは違ってパンに挟んだ状態に限らず、英語同様にソーセージそのものも意味する単語である。中国や香港、台湾のコンビニエンスストアで熱狗として売られているものは、大抵が日本でもおなじみの温めた串つきソーセージである。
東ドイツでは、かつてKetwurst(ケートヴルスト)と呼ばれていた。ケートとはドイツ語でのケチャップの最初の三文字を採ったもので、ヴルストとは同じくドイツ語で腸詰めを意味する。ケートヴルストは東ベルリンを訪れる訪問客の人数に対して飲食店が不足気味という事情を改善するために、1977年ないし1978年に考案された。製法は独特なもので、まず熱せられた太い金串に細長い小麦パンを刺して、パンに穴を通すと同時に内側から温め、そこへ湯煎してケチャップを塗った腸詰めを差し込むというものだった。
ホットドッグに関連した作品
編集- 映像作品
- ドキュメンタリー「アメリカ人は何を食べてきたのか」第3回「ホットドッグ」(専門チャンネル:ヒストリーチャンネル)
- ドキュメンタリー「美味しさのテクノロジー」第9回「ホットドッグ」(専門チャンネル:ヒストリーチャンネル)
- 映画 「ペーパー・ムーン」 劇中に登場するホットドッグを、登場人物が 「コニーアイランド」 と呼んでいる。日本語字幕は「ホットドッグ」。
- 歌 ホットドッグレッド・ツェッペリン
- 映画 2010年 (映画) 地球に帰れたらやりたいこととして野球観戦をあげ、食べるホットドッグのマスタードに拘るシーンがある
- ゲーム
- ホットドッグストーム(1996年のアーケード用シューティングゲーム)
- アイドル
- 歌
アーマー社はテレビでアニメと一緒に流す覚えやすい曲を発表した。
「ホットドッグ、アーマー・ホットドッグ
どんな子がアーマー・ホットドッグを食べるの?
大きな子、小さな子、石の上にのぼる子、
太った子、やせた子、水疱瘡の子だって
みんなホットドッグが、アーマー・ホットドッグが大好き。
子供たちがよろこんでかみつく犬はホットドッグ!」[12]
出典
編集- ^ ホットドックドトールコーヒー
- ^ ハラル取得に「ドッグ」駄目=米チェーンが商品名変更時事通信(2016年11月29日)2016年12月3日閲覧
- ^ 21世紀研究会編『食の世界地図』文藝春秋・70P
- ^ a b c d e f g author (2019年2月10日). “ホットドックって、なぜドック?→実はダックスフントだったけどつづりがわからずドックと書いてしまったから | チコちゃんに叱られる!”. xn--h9jua5ezakf0c3qner030b.com. 2020年5月24日閲覧。
- ^ Duden - Auf gut Deutsch! 2023. Athesia Kalenderverlag GmbH, D-82008 Unterhaching, Germany. (ISBN 978-3-8400-2859-5) 22. Mai 2023.
- ^ Duden - Auf gut Deutsch! 2023. Athesia Kalenderverlag GmbH, D-82008 Unterhaching, Germany. (ISBN 978-3-8400-2859-5) 22. Mai 2023.
- ^ Duden - Auf gut Deutsch! 2023. Athesia Kalenderverlag GmbH, D-82008 Unterhaching, Germany. (ISBN 978-3-8400-2859-5) 22. Mai 2023. - de:Duden. Etymolgie. (Duden Band 7: Herkuntswörterbuch der deutschen Sprache) Bearbeitet von Günther Drosdowski, Paul Grebe und weiteren Mitarbeitern der Dudenredaktion. Bibliographisches Institut Mannheim/Wien/Zürich Dudenverlag 1963 (ISBN 3-411-00907-1), S. 277.
- ^ アメリカで国民食となったホットドッグ macaroni
- ^ Sticks, Pies & Bowties: Why The Patriotic Ad Era Is OverJalopnik blog 2010年9月15日
- ^ This Classic Chevrolet TV Ad Is A Perfect Americana Time Capsule: VideoGM Authority 2019年5月30日
- ^ Hotdog Dictionary.com
- ^ 『ホットドッグの歴史』株式会社原書房、2017年7月21日、95,96頁。
関連項目
編集- ホットドッグの一覧
- ソーセージサンドイッチ
- ホットドッグカート
- ホットサンド
- ウィンナーモービル
- アメリカンドッグ
- ハンバーガー
- ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権
- 大腸包小腸 - 台湾のホットドックと称される屋台料理。