ペリカン属

ペリカン目に含まれる分類群、それに属する鳥の総称
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ペリカン科(ペリカンか、Pelecanidae)は、ペリカン目に含まれる科。ペリカン属のみで本科を構成する。

ペリカン属
モモイロペリカン
モモイロペリカン Pelecanus onocrotalus
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ペリカン目 Pelecaniformes
: ペリカン科 Pelecanidae
Rafinesque1815
: ペリカン属 Pelecanus
学名
Pelecanus Linnaeus1758
タイプ種
Pelecanus onocrotalus Linnaeus, 1758
和名
ペリカン科[1][2]

ペリカン属[3]

分布

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アフリカ大陸北アメリカ大陸南アメリカ大陸沿岸部、ユーラシア大陸南部、アメリカ合衆国北西部、オーストラリアカナダ西部、スリランカニュージーランド

形態

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最大種はハイイロペリカンで全長170センチメートル。翼開張330センチメートル。体重11キログラム。メスよりもオスの方が大型になる[2]。羽色は灰色や白[2]。初列風切は黒い[2]

嘴は大型で長く、下嘴から喉にかけて袋状に伸長する皮膚(咽喉嚢)がある[1][2]。重心が胃にあり、大量の獲物を胃に入れた状態でもバランスを崩さずに飛翔する事ができる[2]

ペリカンは、前後に頭の位置をシフトさせることによって、重心を変化させてバランスを維持する。また、両翼にある1対ないし3対程度の羽根エルロンのように動かすことで、左右のバランスを調整している。[4]

卵は白い殻で覆われる[2]

ペリカンの気嚢は、翼先端まで伸びている[5]

分類

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シロペリカン

カッショクペリカン

ペルーペリカン

モモイロペリカン

コシグロペリカン

コシベニペリカン

ハイイロペリカン

ホシバシペリカン

系統[6]

以下の分類・英名は Clements Checklist v2015・IOC World Bird List ver.5.1 に、和名は(Schreiber, 長谷川訳, 1986)・(長谷川, 1992)・日本鳥類目録改定第7版に従う[1][2][7][8]

生態

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沿岸湖沼などに生息する[1][2]

食性は動物食で、主に魚類を食べるが[2]、甲殻類を食べることもある[1]。水面で獲物を水ごと咽喉嚢に含み水だけを吐き出して捕食し、モモイロペリカンなどは集団で魚群を追い込み捕食することもある[1][2]。カッショクペリカンは空中から急降下して水中の獲物を捕らえる[1][2][9]。他の鳥類(鳩など)を捕食するという報告もある[10][11][9]

繁殖様式は卵生。オスが巣を作る場所を決め、その場でメスに求愛する[2]。メスが営巣し、オスは巣材を運ぶ[2]。集団繁殖地(コロニー)を形成する[2]。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は約1か月[2]。育雛も雌雄共に行う[2]。卵を複数個産んだ場合でも巣立つ雛は通常1羽で、巣立った幼鳥も生後1年以内に大半が死亡する[2]

人間との関係

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モチェのペリカン ラルコ博物館収蔵、ペルー、リマ
 
ペリカンのステンドグラス、 First Congregational Church, Amherst, Massachusetts、親ペリカンが自らの胸に穴を開けて子に血を与えている。同様のデザインは世界各地で見られる。

ペットとして飼育されることがある。人によく馴れ、ときには、主人のもとに魚を持ってこさせたりするほどにしつけることができる。古くは、マクシミリアン皇帝が飼育したペリカンは、80年以上生きたとされている[12][13][14]

肉食であるペリカンの肉は臭く、味は非常にまずいため食用に向かない。アメリカンインディアンはペリカンを猟獲し、その袋を加工して、財布やタバコ入れなどを制作していた。18世紀にはそれらの一部がヨーロッパに輸出された[14]

淘鵝油とうがゆは、ハイイロペリカンの脂肪油であり、通常、秋または冬に捕獲し、化膿性のできもの、腫れもの、悪性のでき物、風疹や湿疹の疼痛に用いる[15]。ペリカンの油脂はインド、ペルシアでも古くから用いられた[16]

ペリカンが胸に穴を開けてその血を与えて子を育てるという伝説があり[2]、あらゆる動物のなかで最も子孫への強い愛をもっているとされる。この伝説を基礎として、ペリカンは、全ての人間への愛によって十字架に身を捧げたキリストの象徴であるとされる[2][17][18]。このようなペリカンをキリストのシンボルとみなす記述は、古くは中世の著作にも見つけることができる[19]

ペルーモチェ文化において陶製のペリカン像が発見された。カッショクペリカンかそれに近い種をモデルにしている可能性がある[20]

鵜の字は、日本では鵜飼いなどに用いるを指すが、もともとはペリカンの意である[21]

アラビア語では、呼称として al-qadus が用いられていた[22]。この語がポルトガル語で alcatruz となり大型の海鳥広範を指すようになり、英語でアホウドリ類を指す albatross の語源となっている[22][23][24]

ハイイロペリカンやホシバシペリカンは、漁業と競合する害鳥とみなされることもあり、開発による生息地の破壊、漁民によるコロニーの破壊により生息数が減少している[25][26]

参考文献

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  1. ^ a b c d e f g 長谷川博 「大きなのど袋を使う漁法」『動物たちの地球 鳥I 2 ペンギン・ペリカン・ウなど』第14巻、朝日新聞社1992年、58-60頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Elizabeth Anne Schreiber & Ralph W. Schreiber 「ペリカン類」長谷川博訳『動物大百科7 鳥I』黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編、平凡社1986年、62-66、68頁。
  3. ^ 長谷川博編著 「ペンギン目、アビ目、カイツブリ目、ペリカン目の分類表」『動物たちの地球 鳥I 2 ペンギン・ペリカン・ウなど』第14巻、朝日新聞社、1992年、64頁。
  4. ^ W.Hawley Bowlus,I Studied the Birts to Learn to Fly, Popular Science, Bonnier Corporation出版、117巻、5号 ISSN 0161-7370 p.57, p.154
  5. ^ 菅野宏文 『オウム、大型インコの医・食・住』、どうぶつ出版 、2004年11月、ISBN 9784924603943、p.34
  6. ^ TiF Checklist: Pelecaniformes”. 2014年10月28日閲覧。
  7. ^ Clements, J.F.; et al. "Clements checklist of birds of the world: v2015 (Excel spreadsheet). (Retrieved 15 December 2015).
  8. ^ Pheasants, partridges & francolins, Gill F & D Donsker (Eds). 2015. IOC World Bird List (v 5.1). doi:10.14344/IOC.ML.5.1 (Retrieved 15 December 2015)
  9. ^ a b Maurice Burton, Robert Burton, International Wildlife Encyclopedia, Marshall Cavendish Corp; 3版 (2002/01), ISBN 978-0761472667, p.1909
  10. ^ BBC EARTH ライフ エピソード5『鳥類』より。『アガラスバンク』の記事も参照。
  11. ^ ペリカンが生きた鳩を丸飲みして食べる動画
  12. ^ Colin Macfarquhar,George Gleig 編 Encyclopedia britannica 第 14 巻、第 1 部
  13. ^ Oliver Goldsmith, A history of the earth, and animated nature, 第 2 巻, Washington Irving
  14. ^ a b Oliver Goldsmith, 『動物誌 ( 5 )』, 1995/4/28, ISBN 4562025557
  15. ^ 森井 啓二『ホメオパシー マテリアメディカ大全1(Abel-Agar)』エンタプライズ、2008年7月27日、291頁。ISBN 978-4-87291-188-6 
  16. ^ Surgeon General Edward Balfour, The Cyclopaedia of India and of Eastern and Southern Asia, Commercial, Industrial, and Scientific; Products of the Mineral, Vegetable, and Animal Kingdoms, Useful Arts and Manufactures. 3 Volumes , Bernard Quaritch, 1885), ASIN: B000IZ84QE
  17. ^ George Wells Ferguson ,Signs & Symbols in Christian Art, Oxford Univ Pr ,1966/12/31, ISBN 978-0195014327
  18. ^ Delphine Haley ,Seabirds of Eastern North Pacific and Arctic Waters, Pacific Search Pr, ISBN 9780914718864,1984/05
  19. ^ Bonnie Kime Scott,New Alliances in Joyce Studies: When Its Aped to Foul a Dephian,Univ of Delaware Pr, 1988/08, ISBN 978-0874133288
  20. ^ The Continuum Encyclopedia of Animal Symbolism in Art, Continuum Intl Pub Group, 2003/11, ISBN 978-0826415257
  21. ^ 伊東信夫、『成り立ちで知る漢字のおもしろ世界動物・植物編: 白川静著『字統』『字通』準拠』、スリーエーネットワーク、 2007/04、63ページ、ISBN 978-4883194315
  22. ^ a b Robert W. Burton & Peter A. Prince 「アホウドリ類」長谷川博訳『動物大百科 7 鳥I』黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編、平凡社、1986年、52-54頁。
  23. ^ Peter D. Jeans、Seafaring Lore and Legend : A Miscellany of Maritime Myth, Superstition, Fable, and Fact、April 1, 2004),、ISBN 9780071435437、p.320
  24. ^ Adrian Room著、A dictionary of true etymologies、Feb 1989、ISBN 9780415030601、 p.14
  25. ^ 竹下信雄 「ハイイロペリカン」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社2000年、179頁。
  26. ^ 竹下信雄 「フィリピンペリカン」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、166頁

関連項目

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