ベン・ウェブスター
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ベン・ウェブスター(Ben Webster、1909年3月27日-1973年9月20日)(「ザ・ブルート」、もしくは「フロッグ」という呼び名でも知られている)は、アメリカ合衆国のジャズ・テナー・サックス奏者。
ベン・ウェブスター Ben Webster | |
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ベン・ウェブスター(1946年) | |
基本情報 | |
出生名 | Benjamin Francis Webster |
生誕 | 1909年3月27日 |
出身地 | アメリカ合衆国 ミズーリ州カンザス・シティ |
死没 | 1973年9月20日(64歳没) |
ジャンル | ジャズ |
職業 | ミュージシャン |
担当楽器 | テナー・サクソフォーン |
共同作業者 | デューク・エリントン、コールマン・ホーキンス、オスカー・ピーターソン |
ウェブスターは、ミズーリ州カンザス・シティに生まれ、コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングとともにスウィング期の3大テナーの一人と考えられている。
愛情を込めて「ザ・ブルート」と呼ばれ、[1] 堅く、とがっていて、すごくいかした音色でストンプのリズムを刻む(彼自身の明らかに他人とは異なったうなるような演奏によって)。しかし、バラード曲では、温かみと情趣あふれる演奏をもこなすのである。スタイルの点から見れば、ウェブスターのそれは、ジョニー・ホッジスに負うところが大きい。ウェブスターによれば、ホッジスこそが彼に、サックスをどのように演奏したらよいか教えてくれた人物だということである。
若年期と経歴
編集ウェブスターはピアノとヴァイオリンを幼少の頃から習っていた。サキソフォンの演奏について学ぶのはその後のことになるのだが、それでも彼は時々、ピアノに立ち帰っていた。時にはピアノで録音に参加することもあったのである。ある時、バド・ジョンソンがウェブスターにサキソフォンの基本的な演奏法について教えたことがあったのだが、それ以来、サキソフォンをヤング・ファミリー・バンド(当時、メンバーの一人にレスター・ヤングがいた)で演奏するようになった。
カンザス・シティは、この当時、様々なミュージシャンが集まる「るつぼ」と化しており、1930年代にはジャズの大物達が何人かここから生まれている。
その後、ウェブスターは1932年にベニー・モーテンの伝説的なバンドに加わる。このバンドには、カウント・ベイシー、オラン=ホットリップス=ペイジ、ウォルター・ペイジらがいた。この頃の様子はロバート・アルトマンの映画「カンザス・シティ」の中で描かれている。
ウェブスターは、1930年代に、それなりに多くのバンドを転々とした。具体的には、アンディ・カーク・バンド、フレッチャー・ヘンダーソン・オーケストラには1934年に加入、その後、ベニー・カーター・バンド、キャブ・キャロウェイ・バンド、そして長くは続かなかったテディ・ウィルソン・ビッグ・バンドなどで演奏している。
デューク・エリントンと
編集1935年にデューク・エリントンのオーケストラと初めて共演して以来、1940年までに、ベン・ウェブスターはエリントン・オーケストラの最初のテナーのソリストとなっていた。ウェブスターは、このオーケストラのアルト・サックスのソリストであるジョニー・ホッジスを、自分に大きな影響を与えた人物として挙げている。
その後3年の間、ウェブスターは数々の有名な録音に参加する。その中には、「コットン・テール」や「オール・トゥー・スーン」などがある。オーケストラのベースを務めていたジミー・ブラントンとともに、ウェブスターはエリントン・オーケストラとって欠くことのできない存在となり、結果として、この期間のバンドは、「ブラントン=ウェブスター・バンド」として知られることとなった。
ウェブスターは、証拠はないものの、口論となってエリントンのスーツを切り裂いたと言われている。この出来事の後、1943年に彼はバンドを去ったのだが、2003年にニュアーク・スター・レジャーとのインタヴューで、トランペッターのクラーク・テリーは、「ウェブスターがエリントンのバンドを辞めたのは、彼がデュークをひっぱたいたからで、その後すぐ、二週間の猶予つきの解雇通知をもらったんだ」と述べている。
エリントン後
編集1943年にエリントンのもとを去ってから、ウェブスターはニューヨーク市の52丁目で働いた。リーダーとして、また共演者として、何枚も録音を残している。レイモンド・スコット、ジョン・カービー、シド・キャレット、そしてジェイ・マクシャン・バンドなどである。ジェイ・マクシャン・バンドでは、歌手のジミー・ウィザースプーンも呼び物となっていた。1948年には、ウェブスターは、数ヶ月の間だけだが、エリントン・オーケストラに復帰したこともあった。
1953年には、「キング・オヴ・ザ・テナーズ」をピアニストのオスカー・ピーターソンと一緒に録音している。ピーターソンは、この後1950年代を通じてウェブスターにとって重要な共演者となった。そして、ピーターソンだけでなく、トランペッターのハリー・スウィーツ・エディソン達とも合流して、ノーマン・グランツがプロデュースする「ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)」に参加し、ツアーや録音に携わるようになる。「コールマン・ホーキンス・エンカウンターズ・ベン・ウェブスター」は、仲間であるコールマン・ホーキンスと一緒に、1957年12月16日に録音されたものだが、オスカー・ピーターソン、ハーブ・エリス(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)、アルヴィン・ストーラー(ドラムズ)らも参加している。ホーキンスとウェブスターの録音は、いわゆるジャズのクラシックであり、カンザス・シティで最初に出会った二人のテナー・サックスの巨人の、「共演」だったのである。
1956年には、ピアニストのアート・テイタムと組んで、ベースのレッド・カレンダー、ドラマーのビル・ダグラスのサポートで、正統派スタイルの録音を残している。
最後の十年、ヨーロッパで
編集ウェブスターはおおむね、むらなく、定期的に働いていた。しかし1964年にヨーロッパで活動しているアメリカ人のジャズ・ミュージシャンに加わるべく、移住した。ヨーロッパでは、気が向いた時に演奏するというスタイルで、人生最後の10年間を過ごしたのである。一年間ロンドンに住み、次の四年間はアムステルダムに住んだ。そして最後にコペンハーゲンに移り住んだのは1969年のことだった。1970年のデンマークのブルー・フィルム「クリッシーでの静かな日々(Quiet Days in Clichy)」では、ウェブスターが安いキャバレーでサックスを演奏する様子を目にすることができる。1971年にはウェブスターはデューク・エリントンと再会し、デンマークのチボリ・ガーデンで行われたショーで何度かエリントン・オーケストラとともに演奏している。また、アール・ハインズとともにフランスでライヴ録音を残している。その他、バック・クレイトン、ビル・コールマン、テディ・ウィルソンらとも共演している。
ディスコグラフィ
編集リーダー・アルバム
編集- 『キング・オブ・テナーズ』 - The Consummate Artistry of Ben Webster (1954年、Norgran)
- 『ミュージック・ウィズ・フィーリング』 - Music With Feeling (1954年、Norgran) ※ベン・ウェブスター・ウィズ・ストリングス名義
- 『アート・テイタム〜ベン・ウェブスター・カルテット』 - The Art Tatum - Ben Webster Quartet (1958年、Verve)
- 『ソウルヴィル』 - Soulville (1958年、Verve)
- 『コールマン・ホーキンスとベン・ウェブスター』 - Coleman Hawkins Encounters Ben Webster (1959年、Verve)
- 『ベン・ウェブスター・アンド・アソシエイツ』 - Ben Webster & Associates (1959年、Verve)
- 『ベン・ウェブスター・ミーツ・オスカー・ピーターソン』 - Ben Webster Meets Oscar Peterson (1959年、Verve)
- 『ソウル・オブ・ベン・ウェブスター』 - The Soul of Ben Webster (1960年、Verve)
- 『マリガン・ミーツ・ウェブスター』 - Gerry Mulligan Meets Ben Webster (1960年、Verve)
- 『ウォーム・ムーズ』 - The Warm Moods (1961年、Reprise)
- BBB & Co. (1962年、Prestige)
- 『ベン・ウェブスター=スイーツ・エディソン』 - Wanted to Do One Together (1962年、Columbia)
- 『ソウルメイツ』 - Soulmates (1963年、Riverside) ※with ジョー・ザヴィヌル
- 『シー・ユー・アット・ザ・フェアー』 - See You at the Fair (1964年、Impulse!)
- Intimate! (1965年、Fontana)
- 『恋人と恋泥棒のために』 - Atmosphere For Lovers And Thieves (1966年、Black Lion)
- 『ビッグ・ベン・タイム』 - Big Ben Time! (1967年、Fontana)
- 『ベン・ウェブスター・ミーツ・ドン・バイアス』 - Ben Webster Meets Don Byas (1968年、SABA)
- Big Sound (1969年、Polydor)
- Ben Webster at Ease (1969年、Ember)
- For the Guv'nor (1969年、Columbia)
- Webster's Dictionary (1970年、Philips)
- Ben at His Best (1970年、RCA Victor)
- Autumn Leaves (1972年、Futura) ※with Georges Arvanitas
- Swingin' in London (1972年、Black Lion)
- 『マイ・マン』 - My Man: Live at Montmartre 1973 (1973年、Steeplechase)
- Previously Unreleased Recordings (1974年、Verve)
- 『モンマルトルの夜』 - Saturday Night at the Montmartre (1974年、Black Lion) ※with ケニー・ドリュー・トリオ
- Rare Live Performance 1962 (1975年、Musidisc)
- Ben and the Boys (1976年、Jazz Archives)
- Sunday Morning at the Montmartre (1977年、Black Lion)
- Layin' Back with Ben Vol. 1 (1977年、Honeydew)
- Layin' Back with Ben Vol. 2 (1977年、Honeydew)
- Carol & Ben (1977年、Honeydew)
- Did You Call? (1978年、Nessa)
- The Horn (1982年、Circle)
- 『ベン・ウェブスター・アット・ザ・ルネッサンス』 - Ben Webster at the Renaissance (1985年、Contemporary)
- 『プレイズ・デューク・エリントン』 - Plays Duke Ellington (1988年、Storyville)
- 『バラッズ』 - Ben Webster Plays Ballads (1988年、Storyville)
- 『ストーミー・ウェザー』 - Stormy Weather (1988年、Black Lion)
- 『ミーツ・ビル・コールマン』 - Meets Bill Coleman (1989年、Black Lion)
- Live in Paris 1972 (1989年、France's Concert)
- Live in Amsterdam (1989年、Affinity)
- 『ザ・ジープ・イズ・ジャンピング』 - The Jeep Is Jumping (1990年、Black Lion)
- 『マイ・ロマンス』 - Live In Denmark (1990年、Vantage) ※with ケニー・ドリュー・トリオ
- 『ベン・アンド・バック』 - Ben / Buck (1995年、Storyville) ※with バック・クレイトン
- 『テナー・タイタンズ』 - Tenor Titans (1997年、Storyville) ※with デクスター・ゴードン
- 1953: An Exceptional Encounter (2000年、The Jazz Factory)
参加アルバム
編集- 『ザ・ブラントン=ウェブスター・バンド』 - Never No Lament: The Blanton-Webster Band (1986年、RCA) ※1938–1942年録音
- 『ユー・ベター・ノウ・イット!!!』 - You Better Know It!!! (1965年、Impulse!)
- 『ポーギーとベス』 - Porgy & Bess (1958年、RCA Camden)
- 『続ブルースの真実』 - More Blues and the Abstract Truth (1964年、Impulse!)
- The Tatum Group Masterpieces, Vol. 8 (1956年)
- 『ハッピー・ホーンズ』 - The Happy Horns of Clark Terry (1964年、Impulse!)
脚注
編集- ^ liner notes by Billy James taken from the 1962 recording Ben and "Sweets" CBS 460613