ブーイング
ブーイング(booing)とは、観客が出演者や選手などに対して不満や怒り、非難を表すために行われる行為である。日本語の「野次(やじ)」もこれに近いが、こちらはむしろ言葉をもって行われる。
概要
編集普通、舞台やグラウンドにいる出演者や選手などに向って「ブー」などと唸ることを指す。また、現在では、周りから一斉に非難を浴びることを「ブーイングを浴びる」、「ブーイングの嵐を浴びる」と言うことがある。テレビ放送のバラエティ番組では観客が「えー」と言い不満感を表すことさえも「ブーイング」とされることも多い。ブーイングとは逆に、賞賛を表す行為は、立ち上がって拍手をする、スタンディングオベーションである。
ブーイング、スタンディングオベーションのいずれも欧米圏での風習だが、近年では日本でも普通に見られるようになっている。
いわゆる「帰れコール」もブーイングの一種で、出演者や選手が舞台やグラウンドにいること(あるいはイベントや大会等に参加していること)自体を毛嫌いし、舞台やグラウンドからの退場を求める意味で行われることもある。
オペラにおけるブーイング
編集特にカーテンコールの際に、個別に登場してくる歌手、指揮者、演出家に対して行われることが多い。アリアなどの直後に行われることもある。余程ひどい演奏をしない限りは歌手や指揮者がブーイングを受けることはあまりないが、保守的な観客が多いと、特に演出が斬新な場合に、演出家がブーイングを受けることがよくある。あまりのブーイングに、上演が中止になったり、公演が打ち切りになったりした例もある。
1815年、ローマでの《セビリャの理髪師》初演は、罵声が飛び嘲笑が起る、挙げ句に猫が舞台に放たれると、てんやわんやだった。1861年にパリで《タンホイザー》が上演された時の妨害も大変で、ワーグナーはすぐに作品を引っ込める破目になったという[1]。
日本ではブーイングはあまり見られない。 悪役の俳優に対して賞賛の意味でブーイングをすることもある。
スポーツにおけるブーイング
編集選手や審判[2]、プレーに対して行われる[3]。「ブー」と唸るだけでなく、指笛を鳴らしたり(アメリカや日本では賞賛だがヨーロッパでは野次に相当)[4][5][6]、手の親指を立てて逆さまにすることもある(サムズアップに対するサムズダウン)。サッカーや野球などではよく見られるが、肯定派と否定派で善悪の意見が分かれている[7]。また、一部のサッカーや野球のファンサイトでは、相手に威圧感を与える行為として、肯定・紹介しているところもある。アメリカンフットボールではクラウドノイズと呼ばれ[8]、ひどすぎる場合罰則が適用されることもある。
サッカーの試合では、世界中のほぼ全てのチームにおいてサポーターの一部がブーイング行為をしているのが見受けられ、日本においてもJリーグ発足の1990年代から行われるようになった[9]。
日本のプロ野球においては、主に牽制球が投げられた際に起こり[10][11]、守備側のファンが拍手で掻き消すというシーンも見受けられる[12]。
プロレスにおいては、悪役(ヒールもしくはルード)に対してブーイングを送ることがヒールに対する賛辞となっており、プロレス特有の特殊事例と言える[13][14]。ただし、ベビーフェイス(善玉)へのブーイングは通常のブーイングと同じ意味である[15]。また、単につまらない試合には“boring”(つまらない、退屈)チャントが発生する場合がある[16]。
大相撲では、横綱が平幕力士に敗退した際に観客席で“座布団の舞”が起きるが、これは金星力士への賞賛とも横綱へのブーイングともとれる。
ブーイングの対象としては、選手・チームのプレーや試合経過等への不満、相手選手やサポーターに対する威圧、審判のプレーに対する判断に対しての不服などがある[17]。
脚注
編集出典
編集- ^ “ブーイング考~音楽史、上演史を変えた「ブー!」と、今どきの作法”. 音楽之友社. 2024年11月15日閲覧閲覧。
- ^ “ブーイングへのリスペクトが大谷翔平の流儀だ”. news.jsports.co.jp. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “大谷翔平、ヘルメット飛ばし大絶叫 元同僚から顔面スレスレ…ブーイングも塁上で笑顔”. Full-Count(フルカウント) ― 野球ニュース・速報・コラム ― (2024年3月26日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ ““らしくないドイツ”にサポーターが怒りの指笛…「公平に見ても日本代表の方が魅力的」カメラマンが敵地で目にした“ドイツ国民の心が折れた瞬間”(原壮史)”. Number Web - ナンバー. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “「彼に指笛を吹く必要はない」酒井高徳にブーイングを浴びせた自軍サポーターに同僚が憤慨! | サッカーダイジェストWeb”. www.soccerdigestweb.com. 2024年7月25日閲覧。
- ^ “フランスで行なわれたブラジルvs.チュニジア戦で暴挙! リシャルリソンにバナナを放り投げ、ネイマールにレーザー、指笛…。サポーターの愚行に批判集中「台無しだ」 | サッカーダイジェストWeb”. www.soccerdigestweb.com. 2024年7月25日閲覧。
- ^ “J1神戸・三木谷会長のブーイング廃止案にネット大紛糾「サポの分断を生む」”. 東スポWEB (2024年3月19日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “12人目の選手になろう~クラウドノイズの重要性~ | ニュース | ニュース | パナソニック インパルス | Panasonic”. panasonic.co.jp. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “【三浦泰年の情熱地泰】ブーイングは結果論。恐れることなくチームのため、仲間のため、自分のために走れ! | サッカーダイジェストWeb”. www.soccerdigestweb.com. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “甲子園がブーイング合戦に 阪神・加治屋のけん制球が発端 異様な雰囲気に - スポニチ Sponichi Annex 野球”. スポニチ Sponichi Annex. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “侍ジャパン 日本ファンの「牽制ブーイング」が物議 否定派の声続々「酷すぎる」「初回からやるのは」「海外では当たり前」/デイリースポーツ online”. デイリースポーツ online (2024年6月26日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “阪神・大竹の一塁けん制球に巨人ファンがブーイング 阪神ファンは拍手で応戦/デイリースポーツ online”. デイリースポーツ online (2024年6月26日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “プロレスのブーイングにも「大人のマナー」がある。”. WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ). 2024年6月26日閲覧。
- ^ 千葉修宏. “【AEW】オカダ・カズチカ、コンチネンタル王座初防衛「ブーイングありがとう」すっかりヒール - プロレス : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2024年6月26日閲覧。
- ^ “プロレスラー内藤哲也「カラ回りの人」から「人気沸騰」に至ったワケ「リスクを考えなくなった瞬間、流れが変わった」”. GetNavi web ゲットナビ. 2024年6月26日閲覧。
- ^ Danny Hart. “5 Times WWE Superstars received 'boring' chants”. Sportskeeda. 2024年6月26日閲覧。
- ^ 中野椋. “【阪神】岡田監督、審判団と握手せず不敵な笑み ファンはDeNA京田と敷田審判にブーイング - プロ野球 : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2024年6月26日閲覧。