ノアザミ

キク科アザミ属の多年草

ノアザミ(野薊、学名: Cirsium japonicum[1])はキク科アザミ属多年草。日当たりのよい山野に生えていて、初夏から夏に花を咲かせるアザミのなかまの一種。深く切れ込んだ葉の縁にはとげがあり、花色は赤紫色や淡紅色のほか、白色もある。

ノアザミ
ノアザミ
Cirsium japonicum
(2008年6月、福島県会津地方
分類APG III
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : タンポポ亜科 Cichorioideae
: アザミ連 Cardueae
亜連 : Carduinae
: アザミ属 Cirsium
: ノアザミ C. japonicum
学名
Cirsium japonicum
Fisch. ex DC.
和名
ノアザミ(野薊)
英名
Japanese thistle
亜種変種

名称

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和名ノアザミは、「野アザミ」の意味で、アザミはこの仲間の植物(アザミ属)の総称である[2]。アザミの由来については、一説には触ろうとするとトゲに刺されて「欺かれた」という意味からついた名とも言われている[3]。別名を、コアザミともいう[3]。中国植物名(漢名)は、大薊(たいけい)[4]

花言葉は、「触れないで」である[3]

分布と生育環境

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ノアザミの分布域は広く、日本本州四国九州のほか[2][5]アジア大陸にも変種が分布する。丘陵近くの野原[6]山野草原道ばた河川敷に自生し[4][7]、日当たりのよいところでよく見かける[2]

特徴

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多年生草本[7]の高さは60 - 100センチメートル (cm) ほどになり、上部で枝分かれする[7][6]タンポポにも似た形で[2]、多形で変化があり、羽状に中裂し、葉縁にある鋸歯の先は硬くて鋭いとげになっている[7][8]。茎につく葉は互生し、基部は茎を抱く[9][6]。地際にある根生葉は花期まで残っている[7][5]

花期は初夏から夏(5 - 8月)で[7]、アザミ属の中では咲きの特徴をもつが、まれに10月まで咲いているものも見られる。は、枝の頂に上向きに直立して頭花がつく頭状花序で、すべてが筒状花管状花)で構成され、直径は4 - 5 cmある[9][10]。花の色は紅紫色がふつうであるが、淡紫色であったり、まれに白色のものもあったりする[9][6]。はじめは筒状花から雄しべが現れて、昆虫などが花を刺激すると、接触運動により雄しべから花粉が湧き出てきて、昆虫に花粉を与える[9][10][8]。雄しべが引っ込むと、続いて雌しべが現れて、花粉をつけた昆虫の媒介によって受粉する[8]。頭花の外側にある総苞は緑色の球形で、総苞片は反り返らず、直立して先端は鋭いとげになり、粘液を出して背面はよく粘る[7][5][6]

栽培

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夏から秋にかけて種を採取し、春に蒔く[7]。土質は特に選ばず、排水が良い土壌で日当たりを好む性質がある[7]

利用

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若い茎は山菜として食用になり、油炒め煮物に調理されて食べられる[4]。3 - 4月ころの葉を採って、葉についているとげは気にせず、天ぷらにして食べられる[8]。地中部に20本ほどついている根も食べることができ、切り取って5分ほど煮てからきんぴらにして食べることが出来る[8]。いずれの食べ方でも、香り高い食材として、おいしく食べられると評されている[8]

花期に掘り上げた天日干しした根の乾燥品は生薬になり、大薊(たいけい)とよばれるが[4]小薊(しょうけい)とも称され、生薬名は混乱している[7]。茎葉の乾燥品を用いたり、生の茎葉を用いるときもある[7]健胃利尿、消炎、腫れ物催眠に薬効があるとされる[7][8]民間療法で全草10グラムを水300 - 400 ccで半量になるまで煎じて服用する用法が知られている[7]。患部の熱をとって止血する薬草でもあり、各患部に熱感がある出血によいと言われ、鼻血吐血子宮出血に対して、1日量5グラムを600 ccの水で煎じて3回分服する用法が知られる[4]。また、皮膚化膿症には生根の汁をそのまま飲んだり、患部に塗る用法もある[4]

近縁種

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ミヤマコアザミ伊吹山

アザミの仲間は多くの種類があり、分類は困難だと言われている[2]。日本で見かけるアザミの仲間は100種類ほどあるが、春先に開花するアザミは、ほとんどが本種(ノアザミ)である[2][8]。園芸品種のドイツアザミは、本種ノアザミを改良したものである[7]

  • ノハラアザミ - 日本の本州中北部に多く分布するアザミ[2]。開花期は夏から秋で、花形はノアザミに似ている[11]
  • フジアザミ - 富士山周辺に多く見られるアザミで、頭花はかなり大きい[2]

脚注

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  1. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2011年5月18日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 大嶋敏昭監修 2002, p. 33.
  3. ^ a b c 主婦と生活社編 2007, p. 52.
  4. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 234.
  5. ^ a b c 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 36.
  6. ^ a b c d e 菱山忠三郎 2014, p. 53.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 88.
  8. ^ a b c d e f g h 川原勝征 2015, p. 35.
  9. ^ a b c d 『野に咲く花』、84頁。 
  10. ^ a b 『花と葉で見わける野草』、36頁。 
  11. ^ 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 37.

参考文献

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  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、33頁。ISBN 4-415-01906-4 
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、234頁。ISBN 4-09-208016-6 
  • 亀田龍吉、有沢重雄『花と葉で見わける野草』近田文弘監修、小学館、2010年、36頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、35頁。ISBN 978-4-86124-327-1 
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、36頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 主婦と生活社編『野山で見つける草花ガイド』主婦と生活社、2007年5月1日、52頁。ISBN 978-4-391-13425-4 
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、88頁。ISBN 4-416-49618-4 
  • 菱山忠三郎『「この花の名前、なんだっけ?」というときに役立つ本』主婦の友社、2014年10月31日、53頁。ISBN 978-4-07-298005-7 
  • 平野隆久写真『野に咲く花』林弥栄監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1989年、84頁。ISBN 4-635-07001-8 

関連項目

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外部リンク

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