トロサ・ハント症候群
トロサ・ハント症候群(とろさ・はんとしょうこうぐん、英語: Tolosa–Hunt syndrome; THS)は稀な疾患である。
トロサ・ハント症候群 | |
---|---|
治療前のトロサ・ハント症候群患者における眼筋麻痺を示している神経眼科学的試験。中央の写真は正面視を示しており、その周囲の画像はそれぞれの方向を注視している時のものである(例えば、左上の写真は患者が右上を見ていて、左眼に運動障害が認められる)。この試験は左眼瞼下垂、左眼のthe primary gaze[訳語疑問点]の外斜視、左動眼神経・滑車神経・外転神経の麻痺(機能不全)を示している。 | |
概要 | |
診療科 | 神経学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | G44.850 |
ICD-9-CM | 378.55 |
DiseasesDB | 31164 |
eMedicine | neuro/373 |
MeSH | D020333 |
第III, IV, V, VI脳神経のいずれかに関係する、外眼性の麻痺を伴った片側性で重い頭痛と、特定の眼筋の脱力と麻痺(眼筋麻痺)を伴う眼の側方と後方の痛みを特徴に持つ[1]。
原因
編集徴候と症状
編集症状は通常、頭部の片側に限定され、ほとんどの場合で眼周囲の筋に強烈で鋭い痛みと麻痺を生じる[3]。加療なしに症状が治まることがあるが、突然再発することがある[4]。
また、顔面神経の麻痺や眼瞼下垂を示すこともある。他の徴候には複視、発熱、慢性疲労、めまい、関節痛がある。時折、患者は片側または両側の眼球突出の感覚を覚えることがある[3][4]。
診断
編集THSは通常、他の疾患の除外によって診断される。他の病因を排除するために、全血算や甲状腺機能検査、血清蛋白電気泳動検査など多数の検査が必要である[3]。脳脊髄液の分析により、本疾患と類似の徴候を示す疾患とを区別できる可能性がある[3]。
海綿静脈洞や上眼窩裂および/または眼窩頂部の炎症性変化を検出するには、MRIや磁気共鳴血管画像 (MRA)、ディジタル差分血管造影(DSA)、CTが有用である[3]。脳神経の麻痺を認めない場合、眼窩断面像で認められる炎症性変化は、より一般的かつ良性の所見として眼窩偽腫瘍と称される。
治療
編集THSの治療には副腎皮質ステロイド (多くの場合プレドニゾロンが用いられる)や免疫抑制剤 (メトトレキサート、アザチオプリン等)を使用するのが通例である。副腎皮質ステロイドは鎮痛剤として作用し、通常24~72時間で疼痛を軽減させる。免疫抑制剤が自己免疫反応を抑制するのに対し、副腎皮質ステロイドは炎症性腫瘤を縮小させる[3]。7~10日に渡って等用量で服用させ、その後漸減していく[3]。
予後
編集THSの予後は一般に良いと考えられており、患者は通常、副腎皮質ステロイドに反応性を示す。眼筋の運動に障害が残る可能性があるが、自然寛解することが多い[3]。一方、治療を受けた患者の約30~40%に再発がみられる[3]。
疫学
編集THSは国際的にも珍しい。ニュージーランドで、オーストラリアのニューサウスウェールズ州でそれぞれ1症例の報告がある[3]。THSの発症に性差はなく、罹患年齢は60歳前後である[1]。
出典
編集- ^ a b “Tolosa–Hunt syndrome”. Who Named It. 2008年1月21日閲覧。
- ^ “Tolosa–Hunt syndrome: critical literature review based on IHS 2004 criteria”. Cephalalgia 26 (7): 772–81. (2006). doi:10.1111/j.1468-2982.2006.01115.x. PMID 16776691 .
- ^ a b c d e f g h i j k l <Danette C Taylor, DO. “Tolosa–Hunt syndrome”. eMedicine. 2008年1月21日閲覧。
- ^ a b “Tolosa Hunt Syndrome”. National Organization for Rare Disorders, Inc.. 2008年1月21日閲覧。
- ^ “Long-term cure of Tolosa–Hunt syndrome after low-dose focal radiotherapy”. Headache 45 (4): 389–91. (2005). doi:10.1111/j.1526-4610.2005.05077_5.x. PMID 15836581 .