タカオヒゴタイ
タカオヒゴタイ(高尾平江帯、学名:Saussurea sinuatoides)は、キク科トウヒレン属の多年草[3][4][5]。
タカオヒゴタイ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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東京都八王子市 2020年9月下旬
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Saussurea sinuatoides Nakai[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
タカオヒゴタイ(高尾平江帯)[3] |
特徴
編集株全体が淡緑色になる。茎はやや斜上し、高さは35-60cmになる。茎に翼はなく、上部で分枝する。根出葉はふつう花時にも存在する。根出葉と茎の下部につく葉の葉身は草質、卵形から長卵形で、長さ7-11cm、先は急鋭尖頭、基部は心形になり、縁は波状縁で大きく浅く湾入し、バイオリン状になる。葉の両面に短毛があり、葉柄は長さ7-10cmになる。近縁で、関東地方西部と四国に分布し、山地の林縁の岩場に生育するコウシュウヒゴタイ S. amabilis のように葉の裏面が青白色にはならない[3][4][5]。
花期は9-10月。頭状花序は総状または散房状に3-8個がゆるくつき、頭花の径は約2cm、花柄は長さ3-10mmになる。総苞は緑色、長さ17-18mm、径10-18mmになる筒形から狭筒形で、少しくも毛がある。総苞片は11-12列あり、総苞外片は披針形で、総苞内片の半分の長さになり、総苞中片とともに鋭突頭で、先は開出するかゆるやかに反曲する。頭花は筒状花のみからなり、花冠の長さは13-14mm、色は淡紅紫色になる。果実は長さ5mmになる痩果で、楕円形。冠毛は2輪生で、落ちやすい外輪は長さ11mm、花後にも残る内輪は長さ1-3mmになる[3][4][5]。なお、平凡社の旧刊『日本の野生植物 草本III 合弁花類』では、総苞片の数は7列とある[6]。
分布と生育環境
編集日本固有種[7]。本州の関東地方南西部[3](東京都・神奈川県・山梨県)に分布し、低山から山地帯の夏緑林の林下や道ばたに生育する[4][5]。なお、平凡社の旧刊『日本の野生植物 草本III 合弁花類』では、分布地は東京都、神奈川県とある[6]。
名前の由来
編集和名タカオヒゴタイは、「高尾平江帯」の意で、タイプ標本の採集地が東京都高尾山であることからいう[5]。植物学者中井猛之進による命名である[8]。
種小名(種形容語)sinuatoides は、「sinuatus (=縁が強い波状の)に似た」「縁が深い波状の」の意味[9]。
分類
編集植物学者中井猛之進は、船橋忠一が高尾山で採集したいくつかの植物の検定を依頼された。そのうち1種にトウヒレン属があり、当時そのエリアに知られていたオオダイトウヒレン S. nipponica やセイタカトウヒレン S. tanakae と異なり、葉の左右とも中央が湾状に裂刻し、総苞片の先端部分が長いなど、それらの種と異なっており、別種と考えた。ロシアの植物学者コマロフが1907年に記載した満州産の新種であるタニヒゴタイ S. sinuata Kom.[10] に似ているものの、葉形が若干違うことから、同種の品種 S. sinuata Kom. f. japonica Nakai (1909)とし、和名を「たかをひごたい」とした[2][8]。なお、中井は、後に本種を独立種 S. sinuatoides Nakai (1915) としている[11]。
ギャラリー
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頭花は総状または散房状に3-8個がゆるくつく。
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総苞は筒形から狭筒形で、少しくも毛がある。総苞片は11-12列あり、先は開出するかゆるやかに反曲する。
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葉の表面。卵形から長卵形で、縁は波状縁で大きく浅く湾入し、バイオリン状になる。
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葉の裏面。短毛があり、コウシュウヒゴタイのように裏面が青白色にならない。
下位分類
編集下位分類に、変種としてキントキヒゴタイ S. sinuatoides Nakai var. glabrescens Nakai (1931) がある[12]。
脚注
編集- ^ タカオヒゴタイ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ a b T. Nakai "Plantæ novæ Asiaticæ.", Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.23, No.273, p.en192, 1909, doi:10.15281/jplantres1887.23.273_185
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.564
- ^ a b c d 門田裕一 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キク科アザミ亜科」p.268
- ^ a b c d e 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1136
- ^ a b 北村四郎 (1981)『日本の野生植物 草本III 合弁花類』「キク科」p.224
- ^ 『日本の固有植物』pp.147-148
- ^ a b 中井猛之進, 「注意スベキ二三植物竝正誤」, Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.23, No.273, pp.442-443, 1909, doi:10.15281/jplantres1887.23.273_433
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1513
- ^ タニヒゴタイ 「BG Plants 和名?学名インデックス」(YList)
- ^ Takenoshin Nakai. "Synopsis Specierum Koreanarum Generis Saussureæ", Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.29, No.346, pp.en197-198, 1915, doi:10.15281/jplantres1887.29.346_189。
- ^ キントキヒゴタイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
編集- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本III 合弁花類』、1981年、平凡社
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 中井猛之進, 「注意スベキ二三植物竝正誤」, Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.23, No.273, pp.442-443, 1909, doi:10.15281/jplantres1887.23.273_433
- T. Nakai "Plantæ novæ Asiaticæ.", Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.23, No.273, p.en192, 1909, doi:10.15281/jplantres1887.23.273_185
- Takenoshin Nakai. "Synopsis Specierum Koreanarum Generis Saussureæ", Botanical Magazine, Tokyo,『植物学雑誌』、Vol.29, No.346, pp.en197-198, 1915, doi:10.15281/jplantres1887.29.346_189