グロス・ミチェル

1950年代まで主として栽培されていたバナナの輸出品種

グロス・ミチェルGros Michelフランス語発音: [ɡʁo miʃɛl])は、1950年代まで主として栽培されていたバナナの輸出品種である。

グロス・ミチェル
熟成の様々な段階にあるグロス・ミチェル
Musa acuminata
品種群 AAA Group英語版
品種 グロス・ミチェル
開発 東南アジア原産[1]マルティニークジャマイカで採種栽培された[2]
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英語ではフランス語のGros Michelのほかに、翻訳された"Big Mike"という名前でも知られている[3]。輸送中に打ち付けられることに強い厚い皮を持つことや、バナナが実る房が密であり運びやすいといった特性から、輸出品種として大変優れていた[4]。しかし、1960年代にはパナマ病の流行によって、バナナの栽培品種は大半がキャベンディッシュにとって代わることになった。

分類

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グロス・ミチェルは、野生種のバナナであるMusa acuminata三倍体栽培品種であり、そのゲノム構成はAAAとなっている[5]

正式名称はMusa acuminata (AAA Group) 'Gros Michel'であり、以下のようにも表される。

  • Musa acuminata L. cv. 'Gros Michel'
  • Musa × paradisiaca L. cv. 'Gros Michel'

スペイン語では、グロス・ミチェルは"Guineo Gigante"、"Banano"、そして、"Plátano Roatán"として知られている。また、マレーシアでは"Pisang Embun"、フィリピンインドネシアでは"Pisang Ambon"、ミャンマーでは"Thihmwe"、カンボジアでは"Chek Ambuong"、タイでは"Kluai hom thong"、そしてベトナムでは"Chuoi Tieu Cao #2"として知られている[5][6]

栽培の歴史

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初期の人気とその衰退

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Brandes作:枯れたバナナ(1919年
パナマ病に襲われたコスタリカのグロス・ミチェル種を栽培する農園

フランス人の博物学者ニコラ・ボーダンは、東南アジアから少量のグロス・ミチェルの球茎を運び込み、カリブ海の島であるマルティニークの植物園にそれらを持ち込んだ。1835年にフランス人の植物学者ジャン・フランソワ・プーヤがボーダンのバナナをマルティニークからジャマイカに運んだ[7]。グロス・ミチェルはホンジェラスや、コスタリカ、そして、中央アメリカの至るところの大規模プランテーションで栽培されていた。

グロス・ミチェル種は、中央アメリカで栽培されるヨーロッパや北米向けの輸出バナナとして支配的であった。しかし、1950年代になるとパナマ病、つまり、真菌(Fusarium oxysporum f.sp. cubense英語版)によって引き起こされる萎凋病が、中央アメリカからグロス・ミチェルのプランテーションを一掃した(ただし、地域内で非感染エリアではいまだ小規模に栽培されている)[8]

1960年代にはグロス・ミチェルの輸出業者らは、そのような影響を受けやすい栽培品種を取引するのをやめ、抵抗力のある(とされていた)キャベンディッシュ(別のMusa acuminata AAA品種)を栽培することを始め、グロス・ミチェルは栽培されなくなっていった[8]

遺伝子組換え

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遺伝子工学の成果によって、パナマ病に抵抗力を持つグロス・ミチェルが開発されている[9]。また、開発されたキャベンディッシュとグロス・ミチェルのハイブリッド種もパナマ病への抵抗力を現わしているという[10]

2013年の論文は、別の真菌感染症である黒シガトカ病英語版に抵抗力を持つグロス・ミチェルを開発する実験について明らかにしている[11]

文化との関わり

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1922年ブロードウェイ・シアターレヴューMake It Snappy英語版」に登場する食料品店に関するコミックソング「イエス・ウィー・ハブ・ノー・バナナ」は、20世紀初頭のパナマ病の流行に伴う、グロス・ミチェルの品不足にインスパイアされたといわれている[12]

グロス・ミチェルは「バナナ味」として食品に利用されるエステルである酢酸イソアミルを、キャベンディッシュよりも高濃度で含有している[13]

参考文献

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  1. ^ Marin, Douglas H.; Sutton, Turner B.; Barker, Kenneth R. (1998). “Dissemination of Bananas in Latin America and the Caribbean and Its Relationship to the Occurrence of Radophouls similis”. Plant Disease (Scientific Societies) 82 (9): 964–974. doi:10.1094/pdis.1998.82.9.964. ISSN 0191-2917. PMID 30856847. 
  2. ^ Robert J. Lancashire (25 August 2006). “Jamaican bananas and plantains”. The Department of Chemistry, University of the West Indies. 22 July 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。11 January 2011閲覧。
  3. ^ Koeppel, Dan (2008年6月18日). “Yes, We Will Have No Bananas” (Editorial). New York Times. https://www.nytimes.com/2008/06/18/opinion/18koeppel.html 2008年6月18日閲覧。 
  4. ^ “The History of Banana Flavoring” (英語). Lucky Peach. (2016年5月19日). オリジナルの2017年6月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170627233708/http://luckypeach.com/the-history-of-banana-flavoring/ 2017年4月11日閲覧。 
  5. ^ a b Michel H. Porcher (2002年7月19日). “Sorting Musa names”. The University of Melbourne. 11 January 2011閲覧。
  6. ^ Molina, A.B.; Roa, V.N. (2000). Advancing Banana and Plantain R and D in Asia and the Pacific. International Plant Genetic Resources Institute. p. 3. ISBN 978-971-91751-3-1. https://books.google.com/books?id=lV4k4j85r2AC&pg=PA3 2021年12月8日閲覧。 
  7. ^ Dan Koeppel (2008). Banana: the fate of the fruit that changed the world. Hudson Street Press. pp. 33. ISBN 978-1-4295-9325-0. https://archive.org/details/bananafateoffrui00koep 
  8. ^ a b Panama Disease: An Old Nemesis Rears Its Ugly Head Part 1: The Beginnings of the Banana Export Trades”. apsnet.org. 2018年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月15日閲覧。
  9. ^ Dale, James; James, Anthony; Paul, Jean-Yves; Khanna, Harjeet; Smith, Mark; Peraza-Echeverria, Santy; Garcia-Bastidas, Fernando; Kema, Gert et al. (2017-11-14). “Transgenic Cavendish bananas with resistance to Fusarium wilt tropical race 4”. Nature Communications 8 (1): 1496. Bibcode2017NatCo...8.1496D. doi:10.1038/s41467-017-01670-6. ISSN 2041-1723. PMC 5684404. PMID 29133817. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5684404/. 
  10. ^ Fusarium wilt”. 2022年5月12日閲覧。
  11. ^ Kovács, Gabriella; Sági, László; Jacon, Géraldine; Arinaitwe, Geofrey; Busogoro, Jean-Pierre; Thiry, Els; Strosse, Hannelore; Swennen, Rony et al. (2013). “Expression of a rice chitinase gene in transgenic banana('Gros Michel', AAA genome group) confers resistance to black leaf streak disease”. Transgenic Research英語版 22 (1): 117–130. doi:10.1007/s11248-012-9631-1. PMC 3525978. PMID 22791138. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3525978/.[[Transgenic Research|Transgenic Research]]([[:en:Transgenic Research|英語版]])&rft.aulast=Kovács&rft.aufirst=Gabriella&rft.au=Kovács, Gabriella&rft.au=Sági, László&rft.au=Jacon, Géraldine&rft.au=Arinaitwe, Geofrey&rft.au=Busogoro, Jean-Pierre&rft.au=Thiry, Els&rft.au=Strosse, Hannelore&rft.au=Swennen, Rony&rft.au=Remy, Serge&rft.date=2013&rft.volume=22&rft.issue=1&rft.pages=117–130&rft_id=info:doi/10.1007/s11248-012-9631-1&rft_id=info:pmc/3525978&rft_id=info:pmid/22791138&rft_id=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3525978/&rfr_id=info:sid/ja.wikipedia.org:グロス・ミチェル"> 
  12. ^ Koeppel, Dan (19 June 2005). “Can This Fruit Be Saved?”. Popsci.com. 21 February 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月22日閲覧。
  13. ^ ScienceFriday: Why Don't Banana Candies Taste Like Real Bananas?”. 2022年5月12日閲覧。

関連項目

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