キャベツ
キャベツ(英: Cabbage、学名: Brassica oleracea var. capitata)は、アブラナ科アブラナ属の多年草。野菜として広く利用され、栽培上は一年生植物として扱われる。
キャベツ | |||||||||||||||||||||||||||
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収穫期のキャベツ
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Brassica oleracea L. var. capitata | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
甘藍、玉菜 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Cabbage |
名称
編集キャベツという名前は英語名キャベジ(Cabbage: 頭上の野菜の意)が転訛して名付けられており[1]、英名の語源は古いフランス語のカボシュ(caboche: 頭でっかちの意)からきており、さらに古くはラテン語のカプト(caput: 頭の意)に由来する[2][3]。別名の甘藍(カンラン)は漢名の甘藍(gānlán)から、玉菜(タマナ)[4]は結球する性質に由来する[2]。
フランス名は chou cabus [5]、イタリア名は cavolo [5]という。
野菜としてのキャベツは、生産される季節により玉が固くしまって中が白い「冬キャベツ」と、巻がゆるくて緑色が濃い「春キャベツ」というように呼び分けも行われている[5]。
特徴
編集100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 96 kJ (23 kcal) |
5.2 g | |
食物繊維 | 1.8 g |
0.2 g | |
飽和脂肪酸 | 0.02 g |
一価不飽和 | 0.01 g |
多価不飽和 | 0.02 g |
1.3 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(1%) 4 µg(0%) 49 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.04 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.03 mg |
ナイアシン (B3) |
(1%) 0.2 mg |
パントテン酸 (B5) |
(4%) 0.22 mg |
ビタミンB6 |
(8%) 0.11 mg |
葉酸 (B9) |
(20%) 78 µg |
ビタミンC |
(49%) 41 mg |
ビタミンE |
(1%) 0.1 mg |
ビタミンK |
(74%) 78 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 5 mg |
カリウム |
(4%) 200 mg |
カルシウム |
(4%) 43 mg |
マグネシウム |
(4%) 14 mg |
リン |
(4%) 27 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
亜鉛 |
(2%) 0.2 mg |
銅 |
(1%) 0.02 mg |
他の成分 | |
水分 | 92.7 g |
水溶性食物繊維 | 0.4 g |
不溶性食物繊維 | 1.4 g |
ビオチン(B7) | 1.6 µg |
硝酸イオン | 0.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[7]。別名:かんらん、たまな 廃棄部位:しん | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
西ヨーロッパの海岸の崖の上が原産といわれ、ヨーロッパでは古代ギリシア人の時代に薬用され、紀元前4世紀には保健食から野菜として栽培された[1]。現在は世界各地で栽培されている[4]。日本ではじめて野菜として栽培されたのは、明治4年の北海道開拓使だといわれている[1]。
冷涼な気候に適応した野菜で、気温5度まで下がっても生長し続け、15 - 20度でよく生育する[8]。小さい苗ならば、-12度まで気温が下がっても、一晩から二晩くらいまでならば耐えられる[8]。
一年草、または二年草(越年草)[1]。春に十字型の淡黄色の花を咲かせる[1]。
キャベツは結球(丸く玉になる性質)のイメージが強いが、結球する品種と、しないものがある。また、同じ原種に由来するケール、カリフラワー、カイラン、メキャベツ、コールラビ、ブロッコリーなどと同様に長い品種改良の過程を経ているため、多くの品種がある。
結球
編集キャベツに限らず結球する野菜は、葉の成長ホルモン(オーキシン)が裏側に偏ることで、その形態をとる。
一般に流通しているグリーンキャベツの場合、外葉が18 - 21枚になってから結球が開始し、葉序に従い螺旋状に茎頂を包む。結球時、茎はほとんど伸長せず、短縮茎となる。
断面を見ると、中心に近い葉ほど内側を向いている。これは外側が先に育ち、内側はその後から出葉して次第に混んでくるためである。消費者が店頭でキャベツを選ぶ際に、大きさではなく重さで選ぶことが多いのは、こうした理由による。
栄養
編集生の場合、可食部100グラム (g) あたりのエネルギー量は23 kcal (96 kJ)で、水分含有量は92.7 gを占める[9]。栄養素は比率で炭水化物が5.2 gと最も多く、次いで蛋白質1.3 g、灰分0.5 g、脂質0.2 gと続く[9]。食物繊維1.8 gのうち、水溶性は0.4 g、不溶性は1.4 gである[9]。
キャベツは淡色野菜の中では、カロテンやビタミンCを多く含む野菜で、ビタミンC含有量は季節変動の影響をあまり受けず、夏場のホウレンソウよりも多い[9]。ただし、キャベツのビタミンCは加熱すると半減してしまう欠点がある[9]。また、調理の過程で千切りにして水にさらした場合では、ビタミンCの減少率は約20%程度である[9]。キャベツ特有成分として、胃腸粘膜の新陳代謝を活発にするビタミン様成分とされるビタミンU(キャベジン)が知られている[9]。ビタミンUは熱に弱く、加熱調理をすると減少する[9]。部位によってビタミンの含有量に差があり、外側の緑色が濃い部分はカロテンを多く含み、中心の芯の方にはビタミンCを多く含んでいる[9]。
不快成分
編集キャベツを不快に感じる要素としては、苦味や、長時間火を通しすぎたときに感じる特有の臭いがある[10]。
特有の臭いの元は硫黄を含む化合物で、主に硫化ジメチルという化学物質はキャベツの他、ブロッコリー、カリフラワー、オクラを加熱したときの風味となっている[11]。もう一つの硫化化合物のチオ酪酸メチルは、高濃度の匂い分析では、チーズやニンニク、キャベツ臭と表現されるが、イチゴの匂いの基本成分にもなっている[11]。またカラシの風味がするイソチオシアン酸アリルも含まれている[12]。こうした成分も結球したキャベツ内でばらつきがあり、外葉には内側の若い葉に比べて、4倍の硫化ジメチルと5倍のイソチオシアン酸アリルが含まれている[12]。
生のキャベツの苦味の元になっている成分は、グルコシノレートという有機化合物から生じている[13]。キャベツと近縁のアブラナ科アブラナ属の植物が、共通してこうした成分をつくっている[13][注釈 1]。人によってはキャベツの苦みを敏感に感じるが、反対にまったく感じない人もいる[13]。グルコシノレート化合物が空気に触れると、分解して他の化学物質を生成し、そのひとつのイソチオシアン酸アリルが、辛くてえぐみのある苦味と臭気を生じさせている[15]。イソチオシアン酸アリルには、真菌類やカビの成長を抑制し、キャベツをある種のうどんこ病から守る働きがある[14]。
歴史
編集起源
編集キャベツの原種は、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea、和名:ヤセイカンラン)という野草で、これから都合の良い性質を残して結球するキャベツが作られた[16]。この原種は、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、芽キャベツなどと同じ起源植物とされ、もともとヨーロッパ西部や南部の海岸地域原産の植物から生まれたものである[2]。
世界最古の野菜のひとつといわれるキャベツは[17]、古代よりイベリア人が利用していた原種がケルト人に伝わり、ヨーロッパ中に広まったとされる。紀元前6世紀にヨーロッパに侵入したケルト人が野生キャベツの栽培をはじめ、当時は結球しないケールのような姿の野菜であった[2]。また野菜より薬草として用いられ、古代ギリシャや古代ローマでは胃腸の調子を整える健康食として食されていた。アテネのエウデモスが書いた『牧場論』に最初のキャベツの記述が見られる。初期の栽培品種にはブロッコリーのような茎があったが、ローマ時代に改良が進み、茎はなくなり大型化していった[18]。遺伝学や言語学の研究から、ブラッシカ・オレラセアを原種とするキャベツは、はじめギリシアとローマの庭師によって栽培が可能になり、その後古代ローマ軍とともにヨーロッパ全土に広がり、イギリスに渡ったといわれる[19]。結球したキャベツに言及した最初の記録は、博物学者の大プリニウスのものとされ、西暦77年の『プリニウスの博物誌』のなかで、キャベツを使った87種の薬をあげている[20]。
野菜としての栽培
編集その後、9世紀頃に野菜としての栽培が広まった。現在日本で普及しているものは、12世紀から13世紀のイタリアで品種改良されたものが起源とみられる。13世紀のイギリスでは、現在のような球結性のキャベツの記録が残されている[2]。13世紀から18世紀にかけて中世ヨーロッパでは、小作人など貧しい農民たちのあいだで自ら食べる分の食料として非課税対象であったキャベツを含む野菜が重宝され、穀物畑のすき間の空き地や農民の自家菜園で栽培された[21]。18世紀のイギリスでは、耐寒性があるキャベツは、穀物飼料が不足する冬場の家畜の餌として適していたため、冬期の飼料作物として本格的に栽培されるようになっていた[22]。
15世紀末にクリストファー・コロンブスが新大陸に到達してからは、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパからの入植者たちの手によってキャベツ栽培が始められ、新世界全域に定着した[23]。18世紀にアメリカ合衆国へ渡ると、より肉厚で柔らかく改良が進んだ。アメリカの先住民にとっても、交易をきっかけにキャベツ栽培が行われるようになった[24]。19世紀のヨーロッパの貧農民にとってキャベツは生活の糧として最後の頼みの綱といえる野菜であり続け、アメリカの多くの貧しい労働者階級の家庭でもジャガイモと並んで毎日食卓に上がる安価でありふれた野菜であった[25]。19世紀末には、輸送手段が発達したことにより、遠隔地間のキャベツの売買が可能になった[26]。たとえばアメリカでは、夏は北部で生産したキャベツを南部に供給し、冬を越すころには南部産のキャベツが北部に送られた[26]。
日本での普及
編集江戸時代前期にオランダ人によって長崎に伝来したが、主に観賞用に一部で栽培されたとみられている[2]。貝原益軒が1709年(宝永6年)に出版した『大和本草』にはオランダナ(紅夷菘)として「葉は大きくて艶がなく白っぽい。花はダイコンに似る。おいしい。3年で花が咲き、カブの仲間である」と紹介されている。しかし食用として広まることはなく、むしろ観賞用としてハボタンを生むこととなった。
結球性のキャベツは幕末の1850年代に伝わり、明治にかけて横浜周辺の根岸、子安、生麦などで居留地の外国人向けとして栽培された[27]が、一般の日本人が口にすることはなかった。
明治になると殖産興業の一環として栽培が奨励された[27]。1870年(明治2年)農学者の津田仙が築地外国人居留地の居住者むけに種を取り寄せた[27]。
1872年(明治4年)、北海道開拓使により札幌で試験栽培が行われ[27]、北海道開拓使が発行した『西洋蔬菜栽培法』に「キャベイジ」の名で記載された。1874年(明治7年)内務省勧業寮が後の三田育種場で、欧米から取り寄せた種子で栽培試験を行った[27]のが、本格的な生産の始まりとされる。この後、増えた種子を日本各地42府県に配布と試作を依頼した。多くの地で栽培に成功し1893年(明治26年)には外国人避暑客のために、長野県北佐久郡軽井沢町でも栽培が始まった[28]。
大正時代に品種改良が進められ、寒冷地に適することから、栽培は北海道のほか、東北地方や長野県で拡大した。
太平洋戦争前には洋食の習慣が普及しておらず需要も限られていたが、戦後の食料増産と食の洋風化が相まって生産量は急激に増加し、1980年代にはダイコンと並ぶ生産量となった。
キャベツは現在では専ら「キャベツ」という名前で呼ばれているが、太平洋戦争前は「かんらん(甘藍)」とも呼ばれていた。
品種
編集キャベツはさまざまな品種改良が行われており、世界中で寒さや暑さ、病害虫などに耐性を持つ多様な品種が作出され、利用されている[29]。例えば『ラルース料理百科事典』には、60種を超える品種の記載があるという。日本でも用途、栽培時期、栽培地、病害抵抗性などの異なる数多くの品種が栽培されている[30]。
- グリーンボール
- デンマーク産のコペンハーゲンマーケットの交配種で、丸玉とも呼ばれる[31]。グリーンボールという名称は銘柄名だが、この種の総括名として用いられる。1 kg程度の小ぶりのボール型で、葉につやがあり、葉の内部まで緑色を帯びている。葉は肉厚のわりに軟らかく[31]、組織はしっかりしている。茨城県西部地区産は主に春と秋に、北海道など関東地方以外の市場に出荷されている。
- 札幌大球(サッポロタイキュウ)
- 北海道札幌市発祥の巨大なキャベツ。一般的に市販されるキャベツの重さが1 kg前後なのに対し、札幌大球はその10倍以上となる10 kgを超えるものも存在する[32]。葉は軟らかく甘味も強いため、様々な料理に向くが、近年は主にニシン漬けなどの漬物用に使われる[33]。明治時代(1895年頃)に米国から持ち込まれたうち、大きく育ち日持ちするキャベツから育成された。収穫作業に労力が必要なため札幌市内での栽培は一時途絶えかけたが[34]、JAさっぽろが2014年に復活運動を開始。JA職員が収穫を手伝ったり、漬け物や外食店などでの消費拡大を後押しする「札幌大球応援隊」を組織したりしている[35]。
- サボイキャベツ (Brassica oleracea convar. capitata var. sabauda L.)
- 別名グラッド(縮緬甘藍)、ちりめんキャベツともいう[36]。ヨーロッパではポピュラーなフランスの品種で[37]、フランス南東部のサボイ地方が起源だといわれている[2]。ちりめん状に縮れた葉を持ち、肉厚で緑色が濃く中心部は黄色[2]。葉は甘味があり、普通のキャベツに比べると繊維が多くかたいので、スープや長時間の煮込みなどに使われる[38][31]。プティ・シュー・ベールは、ちりめんキャベツを早採りしたもので、温野菜や炒め物などに使われる[2]。
- ムラサキキャベツ(Brassica oleracea convar. capitata var. rubra L.)
- 赤キャベツとも。冬キャベツよりも肉厚でかたい。葉の表面は紫色であるが葉肉は白色で、切り口の見た目、特に色合いの美しさからピクルスやサラダに用いられる[2]。また、ムラサキキャベツの色素アントシアニンは、酸性やアルカリ性の水溶液に反応し変色するのでpH指示薬とすることができるほか、キャンディーやゼリーなどに赤紫色を発色させる着色料としてよく使用されている。
- エンスイキャベツ (Brassica oleracea var. capitata f, acuta)
- 別名イアステリングといい、オランダ語で「初物」という意味を持つ[37]。とんがりキャベツ[39]、たけのこ型キャベツとも呼ばれ、普通のキャベツよりも小ぶりで円錐状に尖った形で葉が巻き[37]、角卵形に結球する。みさきやトンガリボウシがある。葉は柔らかく甘味がある[37]。
- メキャベツ(芽キャベツ、Brassica oleracea var. gemmifera)
- 葉の付け根につく脇芽が、径2 - 3 cmに球結するキャベツの1変種。子持ちカンラン、ヒメカンランともよばれる[39]。ふつうのキャベツより水分が少なく、ビタミンCは豊富に含まれる。独特なほろ苦みがあり、主に煮込み料理や炒め物に使われる[2]。
- カーボロネロ
- 別名は黒キャベツ。分類上はケールの品種でトスカーナケールともよばれる。地中海沿岸原産の結球しないイタリアの品種で、トスカーナ地方の名産[38]。葉は深緑色でまっすぐ伸びて、葉身の表面がちりめん状に縮れる[17]。甘味を増す冬に出荷され[37]、生では少しかたく、煮込み料理に使うと甘味が出る[2]。
- アフリカキャベツ
- 別名スクマイキとも呼ばれ、スワヒリ語で「命の泉」の意[37]。アフリカ原産のキャベツの原種で栄養価が高く、ミネラルを豊富に含む[37]。
- ハボタン(Brassica oleracea var. acephala f. tricolor )
- 花キャベツとも呼ばれ、食用ではなく葉を観賞する。株の中心部の葉が白や赤に染まり牡丹の花の様に見えることから名付けられた。分類上はキャベツではなく、ケールの品種。
利用
編集葉が柔らかく癖のない味なので、様々な料理に使われる野菜である。また、茎に生える小さな腋芽も本体同様に食用となる。アクの成分はほとんどなく、千切りにして付け合わせやサラダにしたり、生で食べる以外にも、煮たり炒めたり、汁の実にして食べる[4][2]。硬い芯も、細かく刻み加熱するなどすれば食べることができ、米飯の代用品が商品化されている[40]。春キャベツは、やわらかいのが特徴で生食に最も向いており、炒めてもおいしく食べられる[31]。冬キャベツは、玉の中までかたく締まり、寒さや霜に当たると甘味を増す[31]。
- 生食
- 繊切りにして揚げ物などの付け合わせにしたり、コールスローなどのサラダ類に調理したりして食べるほか、乱切りにしてそのまま塩や味噌、タレをつけて食べることもある。豚カツ店などでは繊切りキャベツを食べ放題として提供している店もあるが、生キャベツの食物繊維は消化が悪いため、食べ過ぎると腹痛を起こすおそれがある。業務用で繊切りを使用する場合には、水に浸しておくと水分を吸収して膨張することで量が増えるうえ、瑞々しさを保つ利点があるが、ビタミンCなど水溶性の栄養素は減少する。なお、カツなどの揚げ物に添える千切りキャベツは、日本の洋食屋で生まれたものである[17]。
- 煮物
- スープの具材にしたり、挽肉などを巻いてロールキャベツにしたりする。また、それらの先に油で炒めると甘味が引き出される。もつ鍋には具材として用いられるほか、水炊きにはスープを吸うことで風味を増す[41]キャベツを白菜の代わりに用いる場合がある。ちりめんキャベツは、煮崩れしにくいため煮込み料理に向く[2]。
- 温野菜
- 茹でてサラダにしたり、付け合わせにする[2]。
- 蒸す
- 蒸し煮による調理法も多い。登山では、キャベツから出る水分で豚肉を煮るキャベッジダウンという調理法がある。
- 炒め物
- 野菜炒めやお好み焼きに欠かせないほか、焼きそばや焼き肉では脂っこさを抑える働きがある。
- 漬物
- 浅漬けや糠漬けといった普通の漬け物以外に、北海道ではサケやニシンの重ね漬けの材料として、札幌大球という大型の品種が一般的に用いられる。また、ドイツ料理のザワークラウトは、キャベツを乳酸発酵させた漬物である。ほかに小型のキャベツの品種であるグリーンボールを使ったグリーンボール漬がある[42]。
- 健康食品、医薬品
- キャベツに含まれる酵素成分を抽出した栄養ドリンクやダイエット食品、ビタミンUを利用したキャベジンなどの胃腸薬も作られている。
- ワイン
- 横浜国立大学がオリジナルキャベツワインとして開発し、販売している。また、キャベツの特産地として知られる山梨県南都留郡鳴沢村の農業協同組合がブドウ果汁と混合した「キャベツワイン」を開発・販売している[43]。
保存
編集収穫後のキャベツは長期にわたる保存が可能で、1 - 2度の低温倉庫で、湿度を高めに維持しておけば、極端に冬が長くない限り4か月間は新鮮さを保ち保存可能である[29]。長期保存では、細かく刻んだキャベツに塩を均等に混ぜて漬け込み発酵させたザウアークラウトにすれば、数年間は保存可能になる[29]。適度に乳酸発酵したザウアークラウトは、特有の刺激臭と酸味があるが腐敗臭はない[44]。
代表的な民族料理
編集キャベツ料理に強い愛着を抱いている民族は多い[45]。キャベツを主材にした料理には、ゴウォンプキ(ポーランドのロールキャベツ)、シチー(ロシア料理)、カプシニャック(ポーランド料理)、ガルビュール(フランス南西部の料理)、ロートコール(ドイツ料理)、コルカノン(アイルランド料理)、コーンビーフとキャベツ(アメリカ料理)、ザウアークラウト(ドイツ料理)などがあり、いずれも家庭的な伝統料理のイメージがある[46]。料理の主材でキャベツが使われているのは北半球地域のみで、南半球の地域では料理の主役になっている例はひとつもなく、シチューやスープ、あるいはピラフやペイストリーの一具材としての使用にとどまる[47]。
- キャベツ・スープ
- スープは英語で、もとは「すする」「浸す」を意味するデンマーク語に由来し、ヨーロッパ中世以降に、深皿にパンを入れてその上からスープを注いだ習慣から名付けられた。キャベツ・スープは、裕福層から貧民層まで一緒に使われる具材に多少の違いはあるが、19世紀以降のフランスでは様々なレシピ本が出されるほど国民的に食べられていた料理で、ベーコンや他の野菜と一緒に煮込んでパンに浸して食べるスープである[48]。ガルビュールもフランスの伝統的なキャベツ・スープの一種である[49]。シチーはロシアのキャベツのスープで、肉などで出汁を取ったスープに粗く刻んだキャベツかザウアークラウトと挽き割りオオムギを入れて、サワークリーム、香草などで風味づけしたもの[50]。カプシニャクはウクライナやポーランドで食される、ザウアークラウトとポーク・ソーセージに他の野菜を入れて小麦粉でとろみづけしたスープである[51]。ポルトガルのカルドヴェルデ・スープはポタージュで、キャベツの他にジャガイモ、タマネギ、ブロスとトロンシューダ・ケールというアプラナ属の野菜を使う[51]。さらにスペインにはカレドガジュゴという、カルドヴェルデの変形でトロンシェンダー・ケールの代わりにカブの一種であるグレロを入れたスープと、同じくキャベツが主役のコシード・マドリレーニョという豚肉・ソーセージ・ヒヨコ豆入りのスープがある[52]。
- ロールキャベツ
- ロールキャベツを表わすキャベツの巻き物と、その反対の詰め物の料理は、バルカン半島諸国から北極圏までの広範囲に分布している[53]。バルカン半島と中東にはサルマ(トルコ語の「包む」に由来する)があり、一握りのコメをキャベツの葉で包んだ料理である[53]。また、北欧のスウェーデンにはドルマ(トルコ語の「詰め込まれる」に由来する)があって、キャベツの玉の芯をくり抜いてコメを詰め込んだ料理である[53]。ポーランドのゴウォンプキ、ウクライナのホロブツィ、リトアニアのバランデーリ、ロシアのゴルゥツィ[注釈 2]など、東欧諸国の肉とコメを包んだロールキャベツには、いずれも「小さなハト」を意味する名前がつけられている[54]。ロシアのロールキャベツは甘酸っぱいソースとサワークリームとともに食卓に出し、ウクライナのロールキャベツは具にソバ・アワ・コーンスターチなども一緒に詰める[54]。ロールキャベツの中に詰める具材は諸国ごとに変化し、バルカン半島の住人はザウアークラウトの葉で肉だねを包み、中東には肉が全く入っていないサルマもある[54]。使われるスープは、ベースにトマトソースやブイヨンなど、普段家庭にストックしてあるものが使われる[54]。フランスでは、キャベツの葉でパン生地を包んで鍋に入れるという伝統料理があり、ガスコーニュ地方ではブラゼールというキビのパンが使われている[55]。キャベツ芯をくり抜いて具を詰めたヨーロッパの詰め物料理は、たいてい酸っぱくて塩気がある[56]。キャベツの詰め物はハンガリーでは国民的料理として親しまれているが、詰め物料理の場合、キャベツの玉を調理が終わるまでそのままの形で扱うのは大変なので、大半の国ではその代品としてロールキャベツが作られている[56]。
- ザウアークラウトと肉の煮込み
- ザウアークラウトとソーセージをよく食べる地域では、この2つを煮込んで料理する。バルカン半島諸国のポドヴァラクと、ポーランドのビゴスは、ほぼ同じ内容の料理であり、タマネギとザウアークラウトを炒めて、肉で煮込んだ料理である[57]。フランスでは、ソーセージとザウアークラウトをワインで煮込むことが多い[58]。アメリカのペンシルベニア州に移民したドイツ人のあいだで作られるグンビスまたはクナブルスとよばれる料理は、肉と千切りキャベツが層になっているビゴスに似た料理とされる[59]。
- ダンプリング
- モンゴル帝国時代にモンゴル人によって広められたといわれるダンプリングは、丸く延ばした小麦粉の生地を半分に折って具材を包んだ料理である[60]。南は中国の餃子、西はロシア、ポーランドのピエロギ、ウクライナのヴァレーニキまで広がり、高緯度地域になるほど具材は肉に加えてキャベツ(もしくはザウアークラウト)を包む傾向が強い[60]。
- ジャガイモとキャベツを使った料理
- ヨーロッパ北部地域は、ジャガイモとキャベツを組み合わせた料理が多岐にわたる。ジャガイモをざく切りのキャベツとともに炒めた料理に、イギリスのバブル&スクイーズ、カタロニアのトリンチャットがある[61]。スコットランドのランブルディサンプスは、マッシュポテトに千切りキャベツを混ぜてオーブン焼きした料理である[61]。また、茹でたキャベツとジャガイモを合わせて潰した料理に、アイルランドのコルカノン、オランダのスタンポット、フランドル地域のストゥンプがある[61]。
- その他
- コールスローは18世紀のアメリカで呼ばれ始められたサラダで、粗みじん切りのキャベツをサラダと一緒にドレッシング・マヨネーズと混ぜて作る[62]。ドイツ人、チェコ人、北欧人は秋になると、赤キャベツと肉を使った甘酸っぱい蒸し煮料理を作る風習がある[62]。北欧では真冬に「グリュンコールエッセン」「コールファート」とよばれる、大酒を飲むために一緒にキャベツなどを食べることを口実に連れ立って居酒屋へ出歩く風習がある[63]。ニュージーランドでは、マオリ族の伝統料理ハンギで、蒸し焼きにする肉などの食材を包むためにキャベツの葉を使う[63]。朝鮮人は白菜以外にもキムチに用いる。中米エルサルバドルにはクルティドというキャベツの酢漬けがあり、ププサという軽食に付け合わせる[47]。
薬効
編集薬用とする部位は茎葉で、甘藍(かんらん)と称する[4]。胃や十二指腸などの潰瘍予防に、食事の副食にキャベツを積極的に取り入れるよいとされる[1]。食物繊維も豊富なことから、便通をよくする働きから便秘がちの人にも役立つ[1]。
古代ギリシアの時代から健康食として薬用に利用されており、様々な機能調整をしてくれる薬菜であり、体質にあまり関係なく万人に合い使用できる[4]。8世紀はじめの唐代に中国で書かれた『本草拾遺(ほんそうしゅうい)』には、「骨髄、筋骨に力をつけ、五臓六腑の機能を整え、関節、耳、目の機能を調製し、胃のつかえを取る」とある[4]。
葉はパルミチン酸、リノール酸、オレイン酸などの脂肪、ビタミンUなどを含んでいる[1]。ビタミンUは抗潰瘍性で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの粘膜のただれを再生する作用があることから、製薬メーカーから製剤も市販されている[1]。キャベツの外側の葉にはビタミンKが多く含まれ、止血作用があり、骨粗鬆症の予防や肝機能を助ける働きがあるといわれている[9]。蔬菜類には結石の原因となるシュウ酸を含むものが多いといわれるが、キャベツには含まれない[1]。食物繊維も多く、便通をよくする野菜として注目されている[1]。
フランスの薬草療養家モーリス・メッセゲによれば、1975年に発表した薬草療法を紹介した著書で、リウマチ、痛風、腰痛、座骨神経痛などの痛みで悩んでいる人に、キャベツの葉をとってすべすべになるまでアイロンがけして、身体の痛い患部に葉を巻き付けて包帯かガーゼで軽く止め、1日数回新しいものと交換するようにすると、痛みを和らげるのに役立つとしている[64]。現在の医師も、授乳中の乳腺炎の腫れにはキャベツの葉で湿布するように勧めているという[65]。アメリカやヨーロッパ、インドでは、授乳中の母親は、胸の張りの痛みを和らげるためブラジャーにキャベツの葉を入れるように勧められるというが、医学的には効果がないことがわかっている[66]。日本の民間療法でも、腰痛や筋肉痛に大きめの葉を火であぶって2 - 3枚重ねて貼るとしている[4]。
抗癌作用を主張する研究
編集キャベツが属するアブラナ科の野菜にはがん予防効果があると言われており[67]、がん抑制物質であるアブラナ科のイソチオシアネートなどの成分や、調理過程で発生するニトロソアミンという発がん物質の作用を抑制するペルオキシダーゼの効果とも言われている[9][68][信頼性要検証]。かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドで1群に属しており、カンゾウと共に、最上位に属するニンニクに次いで2番目に高い癌予防効果のある食材であるとの評価を受けていた[9][69]。また、キャベツに多く含まれるビタミンCも抗酸化作用の働きによってがん予防に貢献する[9]。
苦味成分のグルコシノレートががんのリスクを低減させるという報告もあるが、キャベツのグルコシノレートはヨウ素の体内摂取を妨げる働きもあることから、甲状腺肥大(甲状腺腫)の原因にもなるので、一度に食べ過ぎるのはよくないともいわれている[70]。
栽培
編集キャベツは冷涼な気候に適した野菜であり[8]、栽培時期は北半球では一般に秋から春(9 - 5月)のシーズン中に行われ、気温15 - 20度が栽培に適している[71]。気温が5度まで下がっても成長をし続け、まだ小さなうちの苗であれば、マイナス12度の環境でも1、2晩程度なら耐えられる[8]。
日本では、春まき、夏まき、秋まきによる3つの作型によってつくられる[72]。どの時期も苗づくりの温度管理が重要となり、春まきは保温しながら育苗し、夏まき・秋まきは涼しく管理して育苗する[72]。キャベツは連作を嫌う作物で、同じアブラナ科作物を3 - 4年作っていない土地がよい[71]。輪作年限は2 - 3年とされる[72]。酸性土壌に弱い性質で、苦土石灰などを散布し、元肥をたくさんすき込んだ土壌だとよく育つ[71]。夏に種を蒔いても育てられるが、ふつう秋に畑地に苗を植えて定植し、乾燥に弱いため根付くまで水やりに注意がいる[71]。植え付け後、気温が下がってから結球が始まるまで、苗が伸びる時期は追肥や水やりが行われる[73]。結球部が大きく育ち、玉が固く締まるころが収穫時期となる。収穫適期を過ぎてしまうと、結球部が割れてしまったり、とう立ちしてしまうことがある[73]。アオムシの食害に注意を要する[73]。
播種は、季節に合わせた苗の管理が重要になる[72]。土を入れた育苗箱に筋まきする[72]。キャベツの発芽温度は15 - 30度が適温となり、春まきの場合は、最低温度が15度以下にならないように保温しながら育苗する[72]。夏まきや秋まきでは、暑くなりすぎないように育苗箱や育苗ポットを風通しよくする[72]。本葉が出たら1 - 2本ずつ育苗ポットに植え替え、引き続き温度管理しながら育てる[72]。本葉が5枚前後のころが定植の適期となり、あらかじめ元肥を施して準備した畑の畝に植え付ける[74]。株間は45 cm前後が目安になる[74]。定植後はアオムシなどの害虫を防ぐために寒冷紗でトンネルがけをしたり、雑草対策に畝にマルチングをしてから定植するとよい[74]。定植から2週間ほどで中耕と追肥を行い、キャベツが十分な大きさに固く巻いてきたものから収穫する[75]。収穫の際は、外葉を押さえて、株元を包丁で切り取って収穫する[75]。収穫適期を過ぎると、そのうちキャベツが割れて腐りやすくなってしまうことがある[75]。外葉がアオムシなどに食害されていても、中央の葉がしっかり巻いていれば収穫して食べることはできる[75]。
病虫害
編集モンシロチョウやコナガ、ヨトウガ、アワノメイガなどの幼虫(アオムシやヨトウムシ、シンクイムシなど)の格好のエサになるため、食害(害虫)が問題となる[74][76]。
無農薬栽培の手法として、キャベツの畝毎にチョウ類の進入を許さないよう、寒冷紗でトンネルを張る手法も取られるが[72]、手間が掛かることもあり、販売価は通常のキャベツの倍近くになる。家庭菜園の場合は、秋蒔き栽培にすると、農薬や殺虫剤の使用量を抑えやすい。
現代の遺伝学者であるイギリスのオックスフォードシャーの科学者グループは、生物殺虫剤の研究において、キャベツにつく害虫でイラクサギンウワバという蛾の幼虫を駆除する目的で、キャベツに感染させるウイルスをキャベツ畑に噴霧したが、このウイルスが遺伝子組み換えを起こして、キャベツ細胞内で複製を行ったのはサソリ毒と同じ成分だった[77]。この衝撃的な出来事はインターネットのウェブサイト上で取り上げられて物議を醸したが、バイオ農薬としては生産されていない[77]。
生産
編集キャベツ生産量で世界をリードしているのは中国で、世界全体の生産量の半分以上を占め、2007年にはさまざまな種のキャベツ類3600万トン以上を生産している[29]。
日本での統計は、1910年頃から。生産が急速に伸びたのは1960年 - 1965年頃。
年度 | 生産量(千t) | 補足 |
---|---|---|
1910年 | 43 | |
1945年 | 191 | |
1986年 | 1,667 | 最多 |
2003年 | 1,435 | |
2004年 | 1,375 | |
2005年 | 1,363 | |
2006年 | 1,372 | 東京市場 卸売価格 34円/kg(12月6日) |
2008年 | — | 東京市場 卸売価格 49円/kg(9月22日) |
2011年 | 1,360 |
本来の旬は原産地の気候(地中海性気候)から冬季と考えられる。しかし、日本では栽培地の標高や緯度で出荷時期が異なる。さらに現代に至る品種改良の結果、年間を通して出荷可能となっているので、特定の旬が存在しない。
日本では出荷時期によって、冬キャベツ(11 - 3月。作付・出荷ともに最多で、球が締まった平たい形が特徴)、夏秋キャベツ(7 - 10月。[注釈 3])、春キャベツ(4 - 6月。生産量は少なめだが人気が高く、近郊栽培中心。新キャベツとも)に分類されている。
キャベツは、収穫時期により特定の産地へ生産が集中してきている。おおよそであるが、冬キャベツは愛知県(渥美半島など)が中心で、夏秋キャベツは群馬県(嬬恋村など)、北海道、長野県など[78]。春キャベツは千葉県(銚子市など)、神奈川県(三浦市など)が主体となっている[78]。
冬キャベツの場合、8月頃に種をまき、12月 - 4月にかけて収穫される。他のアブラナ科の野菜にも当てはまることが多いが、栽培されるのは固定品種ではなく、一代雑種が大半である。また北海道の和寒町では秋のキャベツを雪の中で寝かせ糖度を増した越冬野菜の越冬キャベツが有名である。
生産過剰問題
編集農業は、天候など予測しにくい要素によって生産量が左右され、生産者の頭を悩ませる。不作はもちろん、大豊作によっても、キャベツを発送したり梱包材(ダンボール)を購入する代金も出ないほど、卸売価格が暴落してしまう。
豊作により、市場卸売価格に相当な下落が見込まれる場合、農業協同組合から農林水産省へ届出を行い、緊急需給調整(市場隔離 一般には生産調整と称される)として、各農家に出荷を抑えるよう依頼する。これに協力して廃棄する場合には、大規模な生産農家に限り、交付金(2008年は、32円/kg。半分が農家による積立金、半分が税金)が支給される。
秋になると、生産過剰となった年には愛知県東三河地方(渥美半島など)や群馬県(嬬恋村など)で、生産調整によって廃棄されるキャベツの映像が報道される。そのキャベツは、畑の肥料としてトラクターで土と一緒に耕起することが多い。
一方で、中華人民共和国からの輸入が、2010年(平成22年)時点で3 - 6%程度行われている。
消費量と収穫量の減少問題
編集世界的に、中国や発展途上国を中心に、一人あたりの年間野菜消費量は先進諸国を越えて増加しており、特に中国はアブラナ属のキャベツなどの消費が拡大している[79]。しかし、中国以外の地域のキャベツ消費量は減少傾向にある[79]。アメリカのキャベツ年間消費量は、1920年は一人あたり10キログラムあったが、2002年には3.7キログラムへ減少している[80]。ドイツのザウアークラウト消費量も減少しており、1990年代の10年間でドイツ国民一人あたりの年間消費量は、1.7キログラムから1.2キログラムまで減少した[81]。こうしたキャベツ消費量が減少する現象は、都市環境が大きなところほど顕著であるといわれている[81]。フランスでは、ケールの人気に押されて、1890年代からブルターニュ地方で栽培されていた甘いちりめんキャベツが姿を消しつつある[81]。
近年の地球温暖化問題も、キャベツにとって大きな脅威となっている。キャベツは気温30度を超えると収穫量は減少し、35度以上になると種から育てたキャベツの苗は枯れてしまう[82]。
文化
編集英語でcabbagehead(キャベツ頭)は「石頭」の意(ドイツ方面のキャベツの固さから)。またKraut(クラウト)といえば侮蔑的にドイツ人のことを指す(ザワークラウトからの連想。ドイツ野郎)。一方、ドイツ語ではキャベツをコール(Kohl)というが、これはドイツ人の苗字にもなっている。例えばドイツ連邦共和国元首相のヘルムート・コールなどが挙げられる。またコール(Kohl)はスラングで「低能、バカ」と言う意味もある。
オランダ語では、「キャベツ」「石炭」ともにkool(コール)である。つまり、ドイツ語のKohl(キャベツ)・Kohle(石炭)、英語のcoalは同語源である。カチカチに固いのが共通点である。
フランスではキャベツをchouといい、愛情表現としてmon chou (monは英語のmyに相当)と男女が呼び合ったり、子供に対して言ったりする。
言い伝え
編集南ヨーロッパではキャベツはブドウの天敵とされ、ブドウ畑の近くにはキャベツを植えない。蜜蜂を介してキャベツの臭いがブドウに移るのを防ぐためと言われている。同様の理由で養蜂家はキャベツ畑の周りには巣箱を置かない。また、ギリシャ神話には酒神ディオニュソスとトラキアの王リュクルゴスにまつわるキャベツの起源伝説がある[83]。
アメリカ南部では、元日にキャベツの葉を食べるとその年の金運が上昇するといわれている[84]。ドイツやオランダ、ベルギーでは何百年ものあいだ、赤ちゃんはキャベツの葉の下から見つかっていると言われ続けていた[8]。
風習
編集ハロウィーンのキャベツ占いの伝統は、1835年の北アイルランドからあったといわれ、大西洋を渡ってアメリカにも伝わっている[85]。目隠しをした若い男女が畑に連れて行かれ、キャベツを引き抜いて、茎の大きさや形で未来の伴侶を占うというものである[85]。米国ニューイングランドとニュージャージー州の一部では、ハロウィーンの前夜は「キャベツ・ナイト」と今でもよばれている[86]。キャベツ・ナイトの名称は、スコットランドのキャベツ(ケール)占いの風習から発しているといわれ、占いの役目を果たしたキャベツをドアに向かって投げつけて、その場から逃げ去る悪ふざけが伝統となっている[86]。カナダのノヴァンコシア州都ハリファックスと、ニューイングランドの一部では、ハロウィーン前夜を「キャベツ・スタンプ・ナイト」(キャベツの幹の夜)とよんで、悪ふざけをする者がキャベツの幹で隣家のドアをたたく[87]。
キャベツにまつわる作品
編集作曲家クロード・ドビュッシーは娘クロード=エンマ・ドビュッシーをシュウシュウChouchou(キャベツちゃん)と呼んで可愛がり、愛娘のために『子供の領分』や『おもちゃ箱』といった作品を生んだ。
1982年(昭和57年)、アメリカにてキャベツ人形(キャベツ畑人形とも)が玩具メーカーのコレコによって量産化され、1980年代半ばに大ブームを巻き起こした[80]。この人形は量産前の製作者が幼い頃「キャベツから生まれた」と聞かされていたため、「キャベツから子供が生まれる」というモチーフを元に作成されている。メーカーの説明によれば、キャベツの葉にある子宮から1億1500万個を超えるキャベツ人形が誕生したという[81]。
脚注
編集注釈
編集出典
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参考書籍
編集- マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著、玉村豊男 訳『世界食物百科』原書房、1998年。ISBN 4562030534。
- メグ・マッケンハウプト 著、角敦子 訳『キャベツと白菜の歴史』原書房〈「食」の図書館〉、2019年4月23日。ISBN 978-4-562-05651-4。
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日。ISBN 4-09-208016-6。
- 金子美登『有機・無農薬でできる野菜づくり大事典』成美堂出版、2012年4月1日。ISBN 978-4-415-30998-9。
- 講談社 編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日。ISBN 978-4-06-218342-0。
- 主婦の友社 編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日。ISBN 978-4-07-273608-1。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日。ISBN 4-06-195372-9。
- 矢野恒太記念会『数字で見る日本の100年』改訂第5版、ISBN 4-87549-438-6
関連項目
編集外部リンク
編集- 小売価格の推移 キャベツ (PDF) - 統計局
- 清水克志「日本におけるキャベツ生産地域の成立とその背景としてのキャベツ食習慣の定着-明治後期から昭和戦前期を中心として-」『地理学評論』81巻1号、2008年、1-24頁。doi:10.4157/grj.81.1
- 『キャベツ』 - コトバンク