オーロラAキナーゼまたはオーロラキナーゼAオーロラA: Aurora kinase AAurora A)は、ヒトではAURKA遺伝子にコードされる酵素である[5][6]。Serine/threonine-protein kinase 6という名称でも知られる。

AURKA
PDBに登録されている構造
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PDBのIDコード一覧

4UZH, 1MQ4, 1MUO, 1OL5, 1OL6, 1OL7, 2BMC, 2C6D, 2C6E, 2DWB, 2J4Z, 2J50, 2NP8, 2W1C, 2W1D, 2W1E, 2W1F, 2W1G, 2WQE, 2WTV, 2WTW, 2X6D, 2X6E, 2X81, 2XNE, 2XNG, 2XRU, 3COH, 3E5A, 3EFW, 3FDN, 3H0Y, 3H0Z, 3H10, 3HA6, 3K5U, 3LAU, 3M11, 3MYG, 3NRM, 3O50, 3O51, 3P9J, 3QBN, 3R21, 3R22, 3UNZ, 3UO4, 3UO5, 3UO6, 3UOD, 3UOH, 3UOJ, 3UOK, 3UOL, 3UP2, 3UP7, 3VAP, 3W10, 3W16, 3W18, 3W2C, 4B0G, 4BN1, 4BYI, 4BYJ, 4C3P, 4C3R, 4CEG, 4DEA, 4DEB, 4DED, 4DEE, 4DHF, 4J8M, 4J8N, 4JAI, 4JAJ, 4JBO, 4JBP, 4JBQ, 4O0S, 4O0U, 4O0W, 4PRJ, 4UYN, 4UZD, 4UTD, 5AAD, 5AAE, 5AAF, 5AAG, 5EW9, 5DR9, 5DPV, 5DN3, 5DRD, 5L8J, 4ZS0, 5DR6

識別子
記号AURKA, AIK, ARK1, AURA, AURORA2, BTAK, PPP1R47, STK15, STK6, STK7, aurora kinase A
外部IDOMIM: 603072 MGI: 894678 HomoloGene: 2670 GeneCards: AURKA
遺伝子の位置 (ヒト)
20番染色体 (ヒト)
染色体20番染色体 (ヒト)[1]
20番染色体 (ヒト)
AURKA遺伝子の位置
AURKA遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点56,369,389 bp[1]
終点56,392,337 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
2番染色体 (マウス)
染色体2番染色体 (マウス)[2]
2番染色体 (マウス)
AURKA遺伝子の位置
AURKA遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点172,198,110 bp[2]
終点172,212,455 bp[2]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 トランスフェラーゼ活性
ヌクレオチド結合
キナーゼ活性
血漿タンパク結合
protein serine/threonine/tyrosine kinase activity
ATP binding
プロテインキナーゼ結合
ubiquitin protein ligase binding
protein serine/threonine kinase activity
histone serine kinase activity
protein kinase activity
protein heterodimerization activity
細胞の構成要素 細胞質
germinal vesicle
cell projection
spindle pole
microtubule cytoskeleton
meiotic spindle
spindle pole centrosome
繊毛
微小管形成中心
chromosome passenger complex
midbody
spindle microtubule
spindle midzone
perinuclear region of cytoplasm
軸索小丘
pronucleus
中心小体
mitotic spindle
細胞骨格
細胞核
微小管
中心体
核質
紡錘体
細胞質基質
mitotic spindle pole
生物学的プロセス regulation of cytokinesis
タンパク質安定性の制御
リン酸化
positive regulation of oocyte maturation
centrosome localization
negative regulation of apoptotic process
negative regulation of protein binding
neuron projection extension
細胞分裂
regulation of centrosome cycle
cell projection organization
G2/M transition of mitotic cell cycle
meiotic spindle organization
mitotic centrosome separation
自己リン酸化
anaphase-promoting complex-dependent catabolic process
protein localization to centrosome
細胞周期
anterior/posterior axis specification
positive regulation of mitotic nuclear division
spindle assembly involved in female meiosis I
positive regulation of proteasomal ubiquitin-dependent protein catabolic process
microtubule cytoskeleton organization
regulation of signal transduction by p53 class mediator
spindle organization
DNA damage response, signal transduction by p53 class mediator resulting in cell cycle arrest
mitotic spindle organization
タンパク質リン酸化
response to wounding
negative regulation of G2/M transition of mitotic cell cycle
liver regeneration
減数分裂
体細胞分裂
centrosome cycle
regulation of G2/M transition of mitotic cell cycle
ubiquitin-dependent protein catabolic process
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_003600
NM_198433
NM_198434
NM_198435
NM_198436

NM_198437
NM_001323303
NM_001323304
NM_001323305

NM_011497
NM_001291185

RefSeq
(タンパク質)
NP_001310232
NP_001310233
NP_001310234
NP_003591
NP_940835

NP_940836
NP_940837
NP_940838
NP_940839

NP_001278114
NP_035627

場所
(UCSC)
Chr 20: 56.37 – 56.39 MbChr 20: 172.2 – 172.21 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

オーロラAはセリン/スレオニンキナーゼファミリーのメンバーである。正常な細胞増殖には、有糸分裂減数分裂の過程においてオーロラAが適切に機能することが必要不可欠である。オーロラAは1つまたは複数箇所のリン酸化によって活性化され[7]、その活性は細胞周期G2からM期への移行時にピークに達する[8]

発見

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オーロラキナーゼは1990年にツメガエルXenpopusの卵のcDNAのスクリーニングから同定された[7]。発見されたキナーゼEg2が、現在ではオーロラAと呼ばれている[9]。しかし、オーロラAの減数分裂や有糸分裂における重要性が認識されたのは1998年になってからであった[7]

オーロラキナーゼファミリー

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ヒトのゲノムには、オーロラA、オーロラBオーロラCの3つのオーロラキナーゼファミリーのメンバーがコードされている。一方、ツメガエルXenopusショウジョウバエDrosophila、線虫Caenorhabditis elegansのゲノムにはオーロラAとオーロラBのオルソログのみが存在する[7]

研究が行われているすべての種において、オーロラキナーゼは有糸分裂のさまざまな段階で中心体に局在している[7][9]。ファミリーのメンバーには、高度に保存されたC末端の触媒ドメインが存在する。一方、N末端ドメインはそのサイズや配列に大きな多様性が存在する[9]

オーロラAとオーロラBは有糸分裂で重要な役割を果たす。オーロラAは中心体の成熟や分離と関係しており、紡錘体の組み立てや安定性を調節している[8]。オーロラBは染色体パッセンジャー複合体(chromosome passenger complex)のタンパク質で、染色体分離英語版細胞質分裂を調節している[10][11]

オーロラCが染色体パッセンジャー複合体のタンパク質である可能性を示唆する証拠が得られているが[12]、その機能は未解明である。

局在

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オーロラAはG1の末とS期の初めに中心体に隣接して局在する。細胞周期が進行すると、オーロラAの濃度は上昇し、紡錘体極やそこに隣接する紡錘体微小管と結合する。オーロラAは終期まで紡錘体に結合したままである[7]。有糸分裂の終了直前に、オーロラAは紡錘体の中心部mid-zoneと呼ばれる領域に再局在する[13]

有糸分裂

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有糸分裂の間、紡錘体は微小管を用いて母中心体と娘中心体を結びつけるように組み立てられる。形成された紡錘体はその後、新たな2つの娘細胞への姉妹染色体の分離を推し進める。オーロラAは紡錘体が正しく形成されるために重要であり、紡錘体の形成に重要ないくつかの異なるタンパク質のリクルートに必要である。こうしたオーロラAの標的タンパク質には、中心体微小管を安定化する微小管結合タンパク質であるTACCや、二極型の紡錘体の形成に関与するモータータンパク質であるキネシン5がある[7]。中心体微小管の重合の基礎をなす構造であるγ-チューブリンも、オーロラAによってリクルートされる。オーロラAが存在しない場合、γ-チューブリンの蓄積量は正常な中心体で終期に移行する前にリクルートされる量よりも少なくなる。γ-チューブリンが欠乏していても細胞周期は継続されるが、中心体が完全に成熟することはなく、星状体微小管は通常よりも少なくなる[8]

さらに、オーロラAは紡錘体が形成された後の中心体の適切な分離にも必要である。オーロラAが存在しない場合、その影響は生物種に依存するが、紡錘体の分離が全く起こらないか、分離を開始するものの自身と再結合することとなる[8]。前者のケースとなるツメガエルXenopusでは、オーロラAはキナーゼNek2英語版と協働して中心体を結び付けている構造を解体することが示唆されている。そのため、オーロラAが適切に発現していない場合、中心体は分離することができない[13]

また、オーロラAは前中期の間の染色体の適切な組織化と整列を保証している。オーロラAはキネトコアと紡錘体微小管との相互作用に直接関与する。オーロラAはオーロラBと協働してこのタスクを完了すると想定されている。オーロラAが存在しない場合、通常は適切なキネトコア-微小管間結合がなされた場合には消失する、Mad2タンパク質が中期の間も存在し続ける[13]

さらに、オーロラAは細胞質分裂の完了に寄与し、有糸分裂の終結の調整を補助している。細胞質分裂は、親細胞の細胞質が2つの娘細胞に分割される過程である。細胞質分裂の間、母中心小体は分裂中の細胞の中央体(midbody)に移動し、中心部の微小管を中央体から放出させる。この放出によって、有糸分裂は完了する。オーロラAが細胞質分裂を助ける正確な機構は不明であるが、有糸分裂の完了直前に中央体に再局在化することは十分に裏付けられている[13]

興味深いことに、RNAiによるオーロラAの欠失は、生物種や細胞種によって異なる変異体表現型を引き起こす[13]。例えば、C. elegansでのオーロラAの欠失は、中心体の分離の直後に迅速に星状体英語版の崩壊を引き起こす。Xenopusでは、欠失によって紡錘体は形成されなくなる[8]Drosophilaでは、オーロラAを持たないハエでも効率的な紡錘体形成と分離が起こるが、星状体微小管は矮小化する。こうした観察からは、オーロラAのオルソログは多くの異なる種に存在しているが、その役割は類似しているもののそれぞれ少しずつ異なるものである可能性が示唆される[13]

減数分裂

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オーロラAによるリン酸化は、MAPキナーゼキナーゼキナーゼタンパク質MOS英語版などのmRNAに対する細胞質でのポリアデニル化翻訳を指示する。MOSはXenopus卵母細胞の減数分裂の完了に重要なタンパク質である[9]。第一減数分裂中期に先立って、オーロラAはMOSの合成を誘導する。MOSタンパク質は閾値を越えるまで蓄積し、その後MAPキナーゼリン酸化カスケードの伝達を行う。このシグナルはキナーゼRSKを活性化し、RSKはMyt1と結合する。RSKと複合体を形成したMyt1はCdc2を阻害することができなくなる。その結果、Cdc2によって減数分裂の開始が許可される[7]。同様のオーロラA依存的過程によって、減数第一分裂から第二分裂への移行も調節されている。

さらに、オーロラAは減数分裂の進行中に二相性の活性化パターンを示すことが観察されている。オーロラAの活性化の変動または位相の変化は、p13SUC1結合プロテインキナーゼとのポジティブフィードバック機構に依存している[9]

臨床的意義

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オーロラAの調節異常はがんの発生頻度の高さと関係している。例えば、ある研究ではオーロラAの過剰発現は乳がんの浸潤性組織増殖の94%でみられるが、周囲の健康な組織ではオーロラAの発現レベルは正常であることが示されている[7]。オーロラAはアグレッシブな前立腺がん細胞の上皮間葉転換と神経内分泌分化転換に関与していることも示されている[14]

オーロラAは細胞質分裂の完了に必要であるため、オーロラAの調節異常はがんにつながる可能性がある。細胞がDNA複製と有糸分裂を開始したものの2つの別個の細胞へ分裂することができない場合、その細胞は正常よりも多くの染色体を含む異数体細胞となる。異数性は多くの癌性腫瘍が持つ形質である[13]。通常は、オーロラAの発現レベルはがん抑制因子であるp53によって抑制されている[7]

オーロラAの遺伝子を含む染色体領域20q13の変異は、一般的に予後が悪いとみなされている[7]

肺がんに対する2つの抗がん剤オシメルチニブロシレチニブ英語版は変異型EGFRを遮断することによって機能し、初期には癌性腫瘍に有効であるが、腫瘍は発現パターンの変化を起こし、オーロラAを活性化することで再び癌性増殖を起こすようになる。2018年の研究では、EGFRとオーロラキナーゼの双方を標的とすることで薬剤抵抗性腫瘍の出現が防がれることが報告されている[15]

相互作用

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オーロラキナーゼAは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

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  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000087586 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000027496 - Ensembl, May 2017
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関連文献

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外部リンク

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  • Human AURKA genome location and AURKA gene details page in the UCSC Genome Browser.
  • PDBe-KB provides an overview of all the structure information available in the PDB for Human Aurora kinase A
  • PDBe-KB provides an overview of all the structure information available in the PDB for Mouse Aurora kinase A