1887, 二葉亭四迷, 浮雲:
夏の初より頼まれてお勢に英語を教授するように成ッてから、文三も些しく打解け出して、折節は日本婦人の有様、束髪の利害、さては男女交際の得失などを論ずるように成ると、不思議や今まで文三を男臭いとも思わず太平楽を並べ大風呂敷を拡げていたお勢が、文三の前では何時からともなく口数を聞かなく成ッて、何処ともなく落着て、優しく女性らしく成ッたように見えた。- (please add an English translation of this quotation)
1896, 清水紫琴, 野路の菊:
1898, 正岡子規, 句合の月:
1899, 泉鏡花, 黒百合:
1900, 押川春浪, 海島冐險奇譚 海底軍艦:
1901, 黒岩涙香, 幽霊塔:
勿論番人も無い、入口の戸も数年前に外した儘で、今以て鎖して無い、荒ら屋中の荒ら屋だ、頓て塔へ上る階段の許まで行くと、四辺が薄暗くて黴臭く芥臭く、如何にも幽霊の出そうな所だから、余は此の屋敷に就いての一番新しい幽霊話を思い出した、思うまいと思っても独り心へ浮んで来る。- (please add an English translation of this quotation)
1904, 河口慧海, チベット旅行記:
1905, 夏目漱石, 吾輩は猫である:
1906, 長塚節, 炭燒のむすめ:
1907, 若山牧水, 一家:
1908, 伊藤左千夫, 浜菊:
1909, 森林太郎, 長谷川辰之助:
此人は色の淺黒い、氣の利いた好男子で、不斷身綺麗にしてゐる人のやうに思つてゐたが、病氣の診斷が極まつて餘程立つてからであつたにも拘はらず、果して少しも病人臭くはしてゐなかつた。- (please add an English translation of this quotation)
1910, 小寺菊子, 河原の対面:
さうして、小さな西の窓から僅ばかり射し込んでくる鈍い光線に透かして見ると、其処等中一杯に家財道具が詰められるだけ詰まつて、黴臭いやうな饐えたにほひが、其処此処に流れ漂つてゐた。- (please add an English translation of this quotation)
1911, 徳冨蘆花, 謀叛論(草稿):
1912, 永井荷風, 妾宅:
先生は汚らしい桶の蓋を静に取って、下痢した人糞のような色を呈した海鼠の腸をば、杉箸の先ですくい上げると長く糸のようにつながって、なかなか切れないのを、気長に幾度となくすくっては落し、落してはまたすくい上げて、丁度|好加減の長さになるのを待って、傍の小皿に移し、再び丁寧に蓋をした後、やや暫くの間は口をも付けずに唯恍惚として荒海の磯臭い薫りをのみかいでいた。- (please add an English translation of this quotation)
1913, 内田魯庵, 斎藤緑雨:
また或る人たちが下司な河岸遊びをしたり、或る人が三ツ蒲団の上で新聞小説を書いて得意になって相方の女に読んで聞かせたり、また或る大家が吉原は何となく不潔なような気がするといいつつも折々それとなく誘いの謎を掛けたり、また或る有名な大家が細君にでもやるような手紙を女郎によこしたのを女郎が得意になってお客に見せびらかしてるというような話をして、いわゆる大家先生たちも遊びに掛けると存外な野暮で、田舎臭くて垢ぬけがしないと嘲っていた。- (please add an English translation of this quotation)
1914, 小島烏水, 天竜川:
谷の中が、黄な臭いやうに、ボーッと明るくなつたとおもふと、高い空を浮ぶ雲が、夕日を受けて、鈍い朱に染まつた、蜩が、時間を一秒一秒刻み込んで、谷の中へ追ひ込んでゆくやうに、キ、キ、キと啼き落す、杉林の一本々々の樹が、どちらから寄るともなく、塊まつて、黒い法師のやうになつて、囁き合つてゐる。- (please add an English translation of this quotation)
1915, 小川未明, 黒い旗物語:
子供はしかたなしに、雪の降る中をとぼとぼと歩いて、その店の前を去って、あてなくこちらにきかかりますと、そこには食べ物屋があって、おいしそうな魚の臭いや、酒の暖まる香いなどがもれてきました。- (please add an English translation of this quotation)
1916, 森鴎外, 渋江抽斎:
1917, 大杉栄, 新しき世界の為めの新しき芸術:
それでなくとも、民衆には丸で無関心な、若しくはロメン・ロオランの云ったように、民衆を少しも軽蔑しないと云う事を却って軽蔑のたねにする、即ち其の膏汗で自分等の力を養ってくれた親の田舎臭いのを恥じる、成上り者共の多い文壇の事である。- (please add an English translation of this quotation)
1918, 素木しづ, 秋は淋しい:
杉本さんが、時子の熱臭いやうな一種の妙な臭のする、小さな垢じみた身体を、金盥に持って来た熱いお湯でふき初めると、朝子はつく/″\と我子のやせてあさ黒い、あかの浮いてる身体を見つめた。- (please add an English translation of this quotation)
1919, 芥川龍之介, 開化の良人:
』そこで私は徐に赤いモロッコ皮の椅子を離れながら、無言のまま、彼と握手を交して、それからこの秘密臭い薄暮の書斎を更にうす暗い外の廊下へ、そっと独りで退きました。- (please add an English translation of this quotation)
1920, 島崎藤村, ふるさと:
斯の釣の道具を提げて、友伯父さん達と一緒に復た胡桃の木の見える谷間へ出掛けますと、何時でも父さんは魚に餌を取られてしまふか、さもなければもう面倒臭くなつて釣竿で石の間をかき廻すかしてしまひました。- (please add an English translation of this quotation)
1921, 内藤湖南, 應仁の亂に就て:
が併し私は澤山の本を讀んだといふ譯でありませぬから、僅かな材料でお話するのです、その材料も專門の側から見ると又胡散臭い材料があるかも知れませぬが、併しそれも構はぬと思ひます。- (please add an English translation of this quotation)
1922, 牧野信一, 妄想患者:
1923, 犬養健, 姉弟と新聞配達:
1924, 岡本綺堂, 青蛙堂鬼談:
1925, 江見水蔭, 死剣と生縄:
1926, 葉山嘉樹, 労働者の居ない船:
1927, 里村欣三, 放浪の宿:
1928, 堺利彦, ハガキ運動:
1929, 梶井基次郎, 詩集『戰爭』:
1930, 折口信夫, 古代に於ける言語伝承の推移:
1931, 岸田國士, 劇壇暗黒の弁:
従つて、アヴァン・ギャルドの芝居といへば、「素人臭い」のが特色のやうに思はれ、また実際、ヴィユウ・コロンビエ座のやうに有名な劇団でさへ、素人俳優が堂々と舞台に立つ有様であつたが、これらの劇団によつて演ぜられる脚本は、如何に独創的なもの、如何に新奇な様式を取り入れたものと雖も、決して、職業俳優の「表現能力」を越えたものなどはなく、却つて、本を洗へば、その脚本の作者達は、いつかどこかで観た「職業俳優」の演技から、貴重な示唆を与へられ、劇的|幻象の構成に、決定的な基礎を求めてゐることがわかるのである。- (please add an English translation of this quotation)
1932, 佐々木味津三, 流行暗殺節:
1933, 長岡半太郎, 大阪といふところ:
1934, 海野十三, 三人の双生児:
1935, 森本薫, 華々しき一族:
1936, 北條民雄, 癩院記録:
1937, 蘭郁二郎, 鱗粉:
1938, 幸田露伴, 淡島寒月のこと:
1939, 三木清, 思索者の日記:
1940, 田中英光, オリンポスの果実:
1941, 矢田津世子, 茶粥の記:
この頃になって清子はやっと正気づいたような気持で亡夫のことをあれこれと思い出すのだけれど、眼にまつわるのはその面立ちよりも不思議にいかつい肩のあたりや墨汁臭い指だった。- (please add an English translation of this quotation)
1942, 佐藤垢石, 水と骨:
1943, 野口米次郎, 能楽論:
小面には細長い目の上に、ずつと離れた一対の眉が附き、割りに太い低いどつしりと坐つた鼻だ……この平たい鼻に、軽快で理智的な現代を離れた土臭い昔の暗示がある。- (please add an English translation of this quotation)
1944, 水野葉舟, 言文一致:
の最絶頂に達して、一も西洋、二も西洋と、上下有頂天となつて西欧文化を高調した時、此潮流に棹さして極端に西洋臭い言文一致の文体を創めたのが忽ち人気を沸騰して、一躍文壇の大立者となつたのは山田美妙斎であつた。- (please add an English translation of this quotation)
1945, 太宰治, お伽草紙:
1946, 織田作之助, アド・バルーン:
坂を降りて北へ折れると、市場で、日覆を屋根の下にたぐり寄せた生臭い匂いのする軒先で、もう店をしもうたらしい若者が、猿股一つの裸に鈍い軒灯の光をあびながら将棋をしていましたが、浜子を見ると、どこ行きでンねンと声を掛けました。- (please add an English translation of this quotation)
1947, 坂口安吾, 金銭無情:
瀬戸一人の借金を十人ぐらゐの名前にわけて宿六の罵倒脅迫暴力を忍んでゐたが、急に借金の客がふへる一方、売上げがぐんぐん減るから、もとより清人は人一倍鋭敏、これは臭い曰くがあると思ひ、自分は知らぬ顔をして、旧友の一人にたのんで、お客に化けて行かせ様子を見て貰ふ、この旧友が然るに意外のその道の達人で、五日通ひ、瀬戸も絹川の顔も見て、なぜ客が減つたか法外な値段の秘密、みんな隈なくかぎだした。- (please add an English translation of this quotation)
1948, 原民喜, 星のわななき:
1949, 神西清, 夜の鳥:
1950, 宮本百合子, 心に疼く欲求がある:
しかもそれについて語りかたは、歴史の現実とともに急激に推進されて、わたしたちは、創作方法についてメリー・キューリー夫人が放射能を求めて、黒くて臭い鉱物を煮つめていた時代のように語ってばかりいることは許されない。- (please add an English translation of this quotation)
1951, 中井正一, 巨像を彫るもの:
しかるに、二十世紀に入って、町人が大いに威張り出してからは、世の中は威厳に対して、反感をもち、その臭いのするものは、「野暮」なものであり、それを脱したものが「意気」「粋」であると考えたのである。- (please add an English translation of this quotation)
1952, 北大路魯山人, 握り寿司の名人:
1953, 三好十郎, 清水幾太郎さんへの手紙:
1954, 久生十蘭, あなたも私も:
1955, 小林一三, アーニイ・パイルの前に立ちて:
私のごとき無学な老人においてすらも、洋映画のタイトルも読めず、スクリーンの訳文にたよる低能な観客においてすらも、東宝、松竹、大映の千篇一律な古臭いものよりも、洋映画のもつ芸術味と、興味の深い筋の運び方、こんこんとして湧いてくる音楽の盛り上る力、俳優の真剣なる態度等々、何もかも、比較にならない程優越している米国映画の方が嬉しいのである。- (please add an English translation of this quotation)
1956, 柳宗悦, 京都の朝市: