Japanese citations of 残存

  • 1912, 長塚節, :
    彼は最早それ以上彼の心裏に残存して居る或る物をまで奪ひ去られることには堪へないのである。
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  • 1920, 徳田秋声, 蒼白い月:
    私がもし古美術の研究家というような道楽をでももっていたら、煩いほど残存している寺々の建築や、そこにしまわれてある絵画や彫刻によって、どれだけ慰められ、得をしたかしれなかったが――もちろん私もそういう趣味はないことはないので、それらの宝蔵を瞥見しただけでも、多少のありがた味を感じないわけにはいかなかったが、それも今の私の気分とはだいぶ距離のあるものであった。
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  • 1922, 三上義夫, 文化史上より見たる日本の数学:
    少し古い人については草稿も残っていなければ、子孫について尋ねることもできないけれども、さまで年代の経過せぬ人達はその子孫の家に俳句を記したものなどが無数に残存し、その事情をうかがうことができるのである。
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  • 1924, 喜田貞吉, 間人考:
    の名称が、或る低級なる農民の称呼として徳川時代までも各地に残存していたことは、また看過すべからざる興味深い事実である。
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  • 1927, 永井荷風, 向嶋:
    わたくしは唯墨堤の処々に今なお残存している石碑の文字を見る時|鵬斎米庵らが書風の支那古今の名家に比して遜色なきが如くなるに反して、東京市中に立てる銅像の製作西洋の市街に見る彫刻に比して遥に劣れるが如き思をなすのみである。
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  • 1928, 内田魯庵, 八犬伝談余:
    古今詩人文人の藁本の今に残存するものは数多くあるが、これほど文人の悲痛なる芸術的の悩みを味わわせるものはない。
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  • 1931, 中山太郎, 本朝変態葬礼史:
    そして令集解の古註によると、信濃国では夫が死ぬと妻を殉死させたと載せてあるのを、粗忽の者は姥捨山の派生伝説位に考えているようであるが、これは決して左様なものではなく、古く我が全国に渉って行われた殉死の弊風が、たまたま同国に残存したものと見るべきである。
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  • 1933, 宮本百合子, マクシム・ゴーリキイの人及び芸術:
    何故なら、ゴーリキイは五年ぶりの訪問で、驚くばかりの建設を目撃すると同時に五年前彼がレーニンの考えとは一致しない見解をプロレタリアート独裁下のインテリゲンツィアに対して抱いていたのにつけ込んで、ソヴェト同盟内の富農的ブルジョア的残存分子が、いろいろの泣きごとを彼に向ってぶちかけた。
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  • 1934, 夢野久作, 梅津只圓翁伝:
    しかし前述の通り旧門下といっても指を屈する程度にしか残存していないので、大きな計画は無論出来ない。
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  • 1936, 戸坂潤, 思想と風俗:
    そういう馬鹿げたことがない以上、或いはそういう馬鹿げたことがあってはならない以上、私生活と公的な社会的な生活との区別は、いつも残存しなければならない筈だ。
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  • 1937, 三好十郎, おスミの持参金:
    土方の哲学――悪徒のツムジ曲りの人生観――トツサの間に人命を助けたことに就ては、彼は自分自ら、そんな気持が自分の裡に残存してゐたことに就て、ひどく驚き、且、心外に思つてゐるのである。
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  • 1938, 岡本かの子, 東海道五十三次:
    私は十六七の頃にはもう濃く礬水をひいた薄美濃紙を宛てがって絵巻物の断片を謄き写しすることも出来たし、残存の兜の錣を、比較を間違えず写生することも出来た。
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  • 1946, 坂口安吾, デカダン文学論:
    鐘の音がボーンと鳴つてその余韻の中に千万無量の思ひがこもつてゐたり、その音に耳をすまして二十秒ばかりで浮世の垢を流したり、海苔の裏だか表だかのどつちか側から一方的にあぶらないと味がどうだとか、フザけたことにかゝづらつて何百何千語の註釈をつけたり、果ては奥義書や秘伝を書くのが日本的思考の在り方で、近頃は女房の眉を落させたりオハグロをぬらせることは無くなつたが、刺青と大して異ならないかゝる野蛮な風習でもそれが今日残存して現実の風習であるなら、それを疑るよりも、奥義書を書いて無理矢理に美を見出し、疑る者を俗なる者、野卑にして素朴なる者ときめつけるのが日本であつた。
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  • 1947, 豊島与志雄, 朝やけ:
    敗戦後の苛辣な世の中に、こういう文化人……彼もまあ一個の文化人だろう……それが残存しているということは、或は新たに生れたということは、悲しい事柄だ。
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  • 1949, 木村荘八, 両国今昔:
    それよりも盛観はこの小路せましと目白押しに並んだ自動車の堵列で、今年はそれが例年より少ないとはいつても、そのスマートに黒くあるひは青く水のやうに光る車の列の影に蹴おされて、小汚ない右手の渡廊下の奥の奥に、例の治郎太夫、鼠小僧の墓が――さういつてはこの侠盗の故人に気の毒ながら、先づ外後架といつた、むさくるしい感じに、辛くも残存するのを見た。
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  • 1950, 折口信夫, 日琉語族論:
    うごなはる――連体形が著しく残つた――の場合の、琉球残存形は、残存かどうかが疑はしくなるほどだ。
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  • 1953, 牧野富太郎, 植物一日一題:
    もしも万が一どこかに無事に残存していたら極めて珍重すべきものたることを失わない。
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