Citations:怯える
Japanese citations of 怯える
- 1911, 薄田泣菫, 飛鳥寺:
- ――私は怯えたやうな心を抱いて、じつと眼をつぶつた。
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- 1920, 菊池寛, 真珠夫人:
- 勝平は、暴風雨の音に、怯えたやうに耳を聳てゝゐる瑠璃子にさう云つた。
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- 1923, 宮本百合子, 私の覚え書:
- 真暗な東京を考えるだけで、ふだんの東京を知っているものは心は怯える。
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- 1923, 国枝史郎, 沙漠の古都:
- すると同じ恐怖のために気絶しかかっているダンチョンは、私の手を堅く握りながら怯えた声で叫び出した。
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- 1924, 宮本百合子, 伸子:
- しかし、ドドーンと土煙が彼方にあがると、彼女は再び怯えて自制を失った。
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- 1924, 牧野信一, 父の百ヶ日前後:
- その時、隣室に寝かせてあつた彼の三才の子供が疳高く、怯えた泣声を挙げた。
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- 1924, 牧野信一, 余の倅に就いて:
- 彼は厳然とうなるが、そこに一種の明るさが含まれてゐるから、相手をいぢけさせたり怯えさせたりはしない。
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- 1925, 細井和喜蔵, モルモット:
- モルモット屋の小舎の中に、数千頭かためて飼われて、多くの友達をもっていた動物は、二頭だけ急にそこから引っこぬいて別な世界へつれて来られたので、辺りに怯えたもののように小さくなって打ち顫えていた。
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- 1925, 牧野信一, 「悪」の同意語:
- と同時に、突然魔物に襲はれる怖ろしさに怯えて、夢中で、動物園裏の家まで駈け込んだ、袂に投げ込んだ眼鏡が、石のやうに痛く手首に打つかるのも関はなかつた。
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- 1925, 国枝史郎, 大捕物仙人壺:
- 「え!」とトン公は怯えたように声を上げたが「ふうんそいつあ悪かったなあ。
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- 1926, 宮本百合子, 秋の反射:
- まして、村の若い者、仙二位の男達だって、赤児で始めて沢や婆さんの顔を見、怯えて泣き立てて以来、見なれて、改った身元の穿索もせずに来た。
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- 1926, 宮本百合子, 小村淡彩:
- 彼女は、怯えたように、しおたれて立っているろくと厳しい駐在とを見較べた。
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- 1926, 宮本百合子, 昔の思い出:
- 何でも題は忘れたけれども、電燈の下で赤ちゃんに添乳していて、急に、この頭の上の電球が破裂して、子供に怪我をさせはしないかと考え出して怯えることを書いた作品は好きで今でも覚えている作である。
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- 1926, 田中貢太郎, 日本天変地異記:
- この地震は安政の地震に匹敵する大地震で、その数日前即ち十一月十四日の外には、その前ぶれのように四谷塩町から出た火が、青山、赤坂、麻布、品川を焼いて、元禄の豪奢に酔うていた江戸市民に警告を与えたが、地震の後でもまた火事があって、怯えている市民の心をいやが上にも怯えさした。
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- 1927, 渡辺温, 可哀相な姉:
- 姉は怯えた眼をして首を縦に振った。
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- 1927, 牧野信一, 西瓜喰ふ人:
- 」と滝は、怯えたらしい眼眸でチラリと余の顔色を窺つて、静かにわけもなく、妥協するやうに呟いた。
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- 1928, 宮本百合子, 赤い貨車:
- 云ううちに、涙が眼からころがり落ちて、怯えたナースチャの頬を流れた。
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- 1928, 牧野信一, 鶴がゐた家:
- 鶴は怯えて花の中に姿をかくして訴へるが如き悲鳴をあげたり、蹲つてパタ/\と地面に翼を鳴したりした。
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- 1928, 国枝史郎, 娘煙術師:
- 決心をして刀を引っこ抜くと、やにわに一人を叩き切って、それに怯えて後へ退く、敵方の隙をうかがって、脇差しのほうを素早く抜くと、ついて来たお粂の手へ渡した。
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- 1928, 国枝史郎, 血ぬられた懐刀:
- 「……何を恐れる! 天下人だぞ! 何を遠慮する、関白だ! 一天四界俺の物だ! 何を怯える、石田、増田に! 巷の童どもが悪口を云わば、用捨はいらない、切ってすてろ! 妻妾の数三十余人! それがどうした、少ないくらいだ! まだまだ美人を集めて見せる! 俺を殺生関白だという! 殺生ならぬ人間がどこにある! 政治に暗く人心離反し衆人俺を笑うという! 伏見の爺が悪いからだ! 爺が政治を執っているからだ。
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- 1929, 薄田泣菫, 艸木虫魚:
- してみると、擁剣蟹がどんなに嫌がったところで、青白い顔をした満月は、月に一度はきっと海の上を見舞うにきまっているので、明るみを好まないこの蟹は、そんな夜になると、静かな波の響にも、青ざめた光の不気味さに怯えつつ、海底の土にでもこっそり潜っている外はなかった。
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- 1930, 下村千秋, 天國の記録:
- 「それは銘酒屋ですか?」周三は、もう怯えてゐるやうに訊いた。
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- 1931, 坂口安吾, 海の霧:
- 僕は僕の陰性な生活を、常にこれらの愚かな興奮に悩まされて来た、所詮脱け難い僕の陰鬱な生活に、ややともすれば溺れ易い、そして又醒め易い興奮が重い負担を永々と負はせた記憶は、思ひ出しても厭な気がする、その計算に怯える故、それ故僕は躊躇して、この興奮を紛らすわけでも又なかつた。
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- 1931, 坂口安吾, 黒谷村:
- 鋭い影は一線に海を流れてすでに深い背の闇に溶け去つてゐるが、男はそのただ一つなる決意のみを心とする人の如く、ひたすらに帰らんとして疲れた足をいそがせてゐる、しばらくして、ものに怯えた人の如く、男はふと頸をめぐらして背の闇をぬすみみた、そして……うう、「如是我聞、如是我聞――」、算を乱して逃亡する自我の滅裂を感じながら、居ずまひを立て直した凡太は、勇気をかりおこして経文を呟きはぢめたのであつた。
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- 1931, 牧野信一, 南風譜:
- 一同の物腰態度は稍円熟の境に達して、脚どりと云ひ、咳払ひの具合と云ひ、道往く人に出遇つた時の、何気ない挨拶を交して素知らぬ風を装ふ話振りと云ひ、凡そもう何処にも怯えた気色のない堂々たるロビンフツドの徒党であつた。
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- 1932, 坂口安吾, 母:
- すると此の女は私の根気に癇癪を起して日毎に私への軽蔑を深め、若し私が、「いや、辰夫は明らかに全快してゐます」等と言ふならば、忽ちギョッと怯えた様をして、私も亦辰夫と共に精神に異常があるのだと頻りに疑ぐり出すのであつた。
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- 1932, 蘭郁二郎, 歪んだ夢:
- うつらうつらとしたかと思うと、夢を見てはっと眼をさまし、真暗な闇の中に、物の気を幻覚したり、夜風の梢を渡る音に怯えたりしては、又深々と床の中に潜込み、そして夢の続きに吸込まれて行ったのでした。
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- 1932, 牧野信一, 鬼の門:
- あの怖ろしい風巻に怯える父祖伝来の血統が、村人一帯に流れてゐる故に、一名「吹雪病」と称ばれてゐるこの癲癇の一種に就いては村人は余り気にも掛けぬのであつた。
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- 1933, 徳田秋聲, 和解:
- 私は不吉の予感に怯えながら、急いで暖かい背広に身を固めた。
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- 1933, 神西清, 垂水:
- 彼もまた、何かに怯えてゐるやうであつた。
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- 1933, 大阪圭吉, 死の快走船:
- 「はい、あの、恰度私の聞きましたのは、なんでも主人が、こう卓を叩いて、うわずった声で、『明日の午后だ、明日の午后までだ』と、それから低い声で、怯えるように、『きっとここまでやって来る』とそれだけでございますが……それから急に主人は、さもじっとしていられないように立上って室を出て来たのでございますが、恰度そこに立っていました私を見つけますと、一層不機嫌になりまして、いままでついぞ口にしたこともないような卑しい口調で、お前達の知ったことではないと云うように叱りつけるのでございます……でも先生。
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- 1934, 坂口安吾, 訣れも愉し:
- 彼女は私をおど/\眺めて、まるで怯えきつた様子で言ふことがあつた。
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- 1935, 坂口安吾, 逃げたい心:
- 後ろにその気配を感じてゐたが、病的に熱中してゐた魚則のこととて、書き物の手を休める余裕がなかつたため、一段落つくところまで脇目もふらず書いてから、さておもむろに振向いてみると、扉のところに朦朧と立ちすくんで怯えきつた眼付をしながらこつちをボンヤリ瞶めてゐるのは、泥棒ではなく父親の蒲原氏その人であつた。
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- 1935, 小栗虫太郎, オフェリヤ殺し:
- 恐らくその俸給の額は、絶えず生計の不安に怯え続け、安定を得ない座員の眼を、眩ますに充分なものだったであろう。
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- 1935, 国枝史郎, 犬神娘:
- この凄まじい光景には、さすがの国臣様も怯えましたものか、抜き身を頭上にふりかぶったままで、進みもなさらず退きもなさらず、小刻みに肩を刻んでおられました。
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- 1936, 坂口安吾, 幽霊と文学:
- 幽霊を人間の味方にし親友としたゴーゴリは、幽霊に誰より怯えた臆病者でもあつたのであらう。
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- 1936, 坂口安吾, 手紙雑談:
- 私が日夜の妄想に悩み孤独を怖れて連日彼を訪れるものだから、彼は私の蒼白な顔とギラギラ底光りのする眼付に怯えて、突然夜逃げをしてしまつた。
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- 1936, 坂口安吾, 狼園:
- 怖ろしい想像を弄ぶこと、それに怯えて立ちすくむことを私は避けたい。
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- 1936, 坂口安吾, 雨宮紅庵:
- 過失を怖れ怯えた様子で出てくるものと思つた蕗子が、顔には単純な喜悦のみを漲らし、喜びの叫びをあげて飛びだしてきたので、伊東伴作は面喰つた。
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- 1936, 坂口安吾, 老嫗面:
- 野辺の送りもすんでから、松江は改めて遠山に会ひ、日のたつにつれ益々まざまざ眼先にちらつく悪鬼の相に怯えながら、首つくくりの××××××老婆の話を物語つた。
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- 1936, 坂口安吾, 母を殺した少年:
- 警備の武士は新発田藩から駈けつけたが、街角を右往左往の警備の武士を見ることに怯えきつた町民達は、白昼から窓を閉して暗らがりの中にひれふしてゐた。
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- 1936, 三好十郎, 彦六大いに笑ふ:
- 修は殆んど怯えてしまつてゐる。
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- 1936, 牧野信一, タンタレスの春:
- 私が大声を挙げて腕をひろげると、彼女はほんとうに怯えたかのやうな悲鳴をあげて、夢中で逃げ出したりした。
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- 1936, 牧野信一, サクラの花びら:
- などゝふざけると、太郎は心底から怯えた悲鳴をあげてお葉の床へ飛び込んだ。
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- 1936, 岡本かの子, 渾沌未分:
- 駸々と水泳場も住居をも追い流す都会文化の猛威を、一面灰色の焔の屋根瓦に感じて、小初は心の髄にまで怯えを持ったが、しかししばらく見詰めていると、怯えてわが家|没落の必至の感を深くするほど、不思議とかえって、その猛威がなつかしくなって来た。
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- 1936, 国枝史郎, 剣侠:
- 現在人を殺して置いて、本名を宣る膽の太さ、あらためて浪之助の怯えている心を、底の方から怯やかした。
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- 1937, 宮本百合子, ジャンの物語:
- にとりかこまれ、無抵抗主義の信条で、全財産を放棄したがっているトルストイの希望に、怯え、憎悪し、それとの闘争に立ち向った第一の人は夫人ソフィヤと五男のアンドレイであった。
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- 1937, 国枝史郎, 鸚鵡蔵代首伝説:
- 「わッ」という怯えた声が響いた時には、綱五郎は躍り上っていた。
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- 1938, 堀辰雄, 幼年時代:
- 一方、いままではちゃんと間を隔いて鳴っていた近所の半鐘の方も、そのとき突然自分の立てつづけている音に怯え出しでもしたかのように、急に物狂おしく鳴り出していた。
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- 1939, 国枝史郎, 血曼陀羅紙帳武士:
- それを見送ろうともせず、怯えた眼で、角右衛門は、紙帳ばかりを見ていた。
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- 1940, 金史良, 天馬:
- 彼は怯えたようにいきなり耳を塞いで逃げ出しながら叫んだ。
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- 1940, 小栗虫太郎, 「太平洋漏水孔」漂流記:
- 「君、そう怯えなくたって、何もしやしないよ。
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- 1941, 坂口安吾, 死と鼻唄:
- 常人は「必ず死ぬ」となれば怯える。
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- 1943, 坂口安吾, 二十一:
- いゝえ辰夫は全快してゐるのですよなどゝでも言ふものなら、実に深刻に怯えきつて僕をみつめ、こいつも気違ひだ、と疑ぐりだすから、ヤア、それはどうもお気の毒でした、では本日は之まで、と戻つてくる。
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- 1945, 海野十三, 地球発狂事件:
- 水戸はこの友情に篤いドレゴがその夜飲み過ぎたことと、日頃に似合わず虚無的な影に怯えているらしいことを案じて彼の邸まで送って来たのである。
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- 1945, 海野十三, 地球発狂事件:
- 水戸はこの友情に篤いドレゴがその夜飲み過ぎたことと、日頃に似合わず虚無的な影に怯えているらしいことを案じて彼の邸まで送って来たのである。
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- 1946, 坂口安吾, 白痴:
- 深夜に隣人を叩き起して怯えきった女を返すのもやりにくいことであり、さりとて夜が明けて女を返して一夜泊めたということが如何なる誤解を生みだすか、相手が気違いのことだから想像すらもつかなかった。
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- 1946, 坂口安吾, 戦争と一人の女:
- からだも怯えのためにかたくすくんでゐるのである。
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- 1946, 宮本百合子, 私たちの建設:
- 近松は、この世の義理に苦しみ、社会の制裁に怯える男女の歎きと愛着とを、七五調の極めて情緒的な、感性的な文章で愬えて、当時のあらゆる人の心を魅した。
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- 1949, 原民喜, 魔のひととき:
- 僕は怯えはじめた。
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- 1949, 坂口安吾, 神経衰弱的野球美学論:
- ネット裏だから心配はないようなものだが、視覚が不確実であるから、どうにも怯えて仕方がない。
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- 1949, 豊島与志雄, 悲しい誤解:
- 暗い夜、掘割のふちを歩いていると、空の星が水面に降ってくるようで、なにか怯えた気持ちになる。
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- 1950, 坂口安吾, 水鳥亭:
- 亀の子のように怯えた顔である。
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- 1950, 坂口安吾, 街はふるさと:
- 記代子は半死半生の経験によっても、冒険や危険に怯える心を植えつけられはしなかった。
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- 1951, 坂口安吾, フシギな女:
- たまたま護身用に薪割を持っていた女が、何かに怯えて逆上的に四人を叩き斬ったのであろうか。
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- 1951, 宮本百合子, 日は輝けり:
- 彼女は子供のように、大きな声をあげて泣きながら、名状しがたい恐怖に、怯えた。
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- 1951, 宮本百合子, 禰宜様宮田:
- 突然怯えきった絶叫が、仲間の中から起った。
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- 1951, 宮本百合子, お久美さんと其の周囲:
- あまりの事に暫くの間黙って見て居た娘共は、物凄い叫び声と皆の顔に怯えて、音もたてずコソコソとかたまりあって黒い外へと逃げ出して、息を弾ませながら走り去って仕舞った。
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- 1952, 坂口安吾, 夜長姫と耳男:
- そして腑抜けのバケモノを再びマトモに見直す勇気が湧くまでには、この山の蛇の生き血を飲みほしても足りないのではないかと怯えつづけていたものだった。
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- 1952, 坂口安吾, もう軍備はいらない:
- 三発目の原子バクダンがいつオレの頭上にサクレツするかと怯えつづけていたが、原子バクダンを呪う気持などはサラサラなかったね。
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- 1952, 豊島与志雄, 擬体:
- 登志子は真蒼な顔をして、口も利けないほど怯えていた。
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- 1952, 相馬愛蔵, 私の小売商道:
- かくすることによって、没落の恐怖に怯えている我が小商店の更生の道を見出すことが出来るであろう。
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- 1953, 坂口安吾, 犯人:
- そして「やっぱり」という言葉にちょッと怯えて「とうとう」という言葉に頭の中で置き変えてみた。
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- 1954, 坂口安吾, 握った手:
- そして、思いだすことが怖しくて、その怯えだけで冷汗をかいた。
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