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Pas de Deux (Japanese Translation)

Chapter 24: 第二十四章

Chapter Text

それから続いた日々で、ソーを長いこと苦しめてきた彼だけの秘密は二人の秘密となった。そして、それは数々の秘密の中でももっとも美味なものだった――互いの部屋で数分間隠れて過ごすのは、期待していたよりも長い時間で、望んでいたよりも短い時間だったが、笑いとキスと触れ合いで満たされ、どちらもこれまで夢にも思わなかった新しい関係性を学ぶことに使われた。

ロキはかつてないほど幸せだった。そして、ソーも幸せそうに見えて、その輝かんばかりの笑顔がロキに向けられるたびに、彼は内側から温もりが湧き上がるようになった(それは正直に言えば、ものすごく頻繁になっていた)。

秘密にし続けないといけないことも気にならなかった。少なくとも今のところは。それどころか、二人きりの時間がよりスリリングに感じられた。

感謝祭の一週間前のファミリーディナーの日のことだった。ロキはテーブルの下でソーの足をつついていた。

「フレイ伯父さんのところに行く時には、お前たちには別の車で向かってほしい」オーディンがニンジンを口いっぱいに頬張りながら言った。

「え?なんで?」ソーが尋ねる。

「それと、気持ち悪いよ」ロキが言った。「せめて先に口の中の物を飲み込んでからにしてよね」

「お父さんと私は週末ずっと向こうで過ごすのよ。ゲルダ伯母さんが両膝の手術をしたばかりだから、家のことで少し手伝いが必要なんですって」

「わしらが留守にしている間、この家を爆発だけはさせんでくれ」オーディンが言った。「友達を呼んでも構わないが、責任ある行動を頼むぞ」彼は二人の息子に厳しげな顔をしてみせた。

ロキは腹の底でピリッと緊張した興奮を僅かに感じた。この家で丸三日間、二人きりの時間を過ごせるのだ。こっそりとソーの方を見やれば、彼はテーブルナプキンで口許をゆっくりと拭いていた。

「オーケー」ソーが言った。オーケーだと?

「僕たちなら大丈夫だよ」ロキは陽気に告げながら、ソーの足を踏みつけた。「しかも、ちゃんとゴミ出しもするよ。ね?」

「あー、ああ」

フリッガは彼らをじっと見やった。

「ターキーちゃんたち、あなたたちの頭の中で歯車が回っているのが見えるわよ」彼女は言った。「あなたたちが望むなら、友達を呼んでもいいことはもう言いました。だけど、違法なことだけはしないでちょうだい。それと、私がしないだろうこともね」

「それだと違法なことが除外されないけどね」ロキがニヤリとして言った。

「わかったよ、母さん」ソーが言って、逆にロキの足を踏みつけ返すと、彼を怯ませた。「俺たちだけで問題ないよ、本当だ」

「子供たち」オーディンが溜め息と共に立ち上がると、空になった皿をカウンターの方に運んでいった。「いったい、わしらは何をしてこんな子供たちを授かったというんだろうな?」

「セックスしたからじゃない?」ロキが彼の背中に呼びかければ、父はぶつぶつ呟きながらリビングに移動していった。

「ロキ!」ソーが笑いながら低く言った。

フリッガがやって来て彼らの頭のてっぺんにそれぞれキスを落とした。

「あなたたちがいい子なのは分かっています」彼女は言った。「そして、あなたたちを信用もしているわ。さ、片付けてちょうだい」

感謝祭までの日々がゆっくりと通り過ぎ、フレイ伯父さんの家までのドライブもゆっくりと過ぎ、そしてディナーそのものは実は結構良くって(だって、食べ物!)、だけどその後善意の親戚としばらく話す必要ができてしまい、ロキはひどく興奮するあまり、世間話に興じるどころかじっと座っていることさえ辛かった。

『それで、来年はどこの大学に進むんだ?』『ダンスの勉強を続けるの?』『高校最後の一年はどうだ?』などとずっとこの調子だ。ロキはソーに歩み寄って望み通りに彼に抱き付き、その太陽のような温もりと彼の精神的な強さを少しだけでも分けてもらいたくて仕方なかった。代わりに視線を交わし合ったり、『たまたま』体の一部が触れ合ったりすることで我慢するほかなく、そこを出る頃には車に飛び込む勢いだった。

「もう行かないと」ソーがどこぞの伯母か何かに申し訳なさそうに告げている。「深夜になる前には帰っていたいから、ああ、久しぶりに会えて良かった、ああ、もっと頻繁に遊びに来るべきだな、オーケー、俺も愛してるよ、うん、もちろん安全運転だよ」

ロキは積極的に彼をドアから引きずり出した。彼らの車は木々の多い、長いドライブウェイの隅っこに駐めてあり、道はとても暗く、木の幹はとても大きくて…

ソーも同じ考えがあったようで、何が何だか分からないうちにソーはロキを大きく冷たい樫の木の幹に押しつけていた。

「あそこから出られなくなるかと思ったよ」彼はロキの唇に触れながら呟き、下唇を口に含んで啜ると、舌で舐めた。

「んん」ロキは同意し、ソーに口を好き勝手にさせながら蕩けるように背後に寄り掛かった。「あんっ」ソーが耳朶に吸い付くと息を呑んだロキの腕を、寒さとは関係のない戦慄が駆け抜けた。

「ソー?」誰かの声がした。八百人の従兄弟のうちの一人に聞こえる。ソーはその場を飛び退くと、手の甲で口を急いで拭った。「おい、マフラーを忘れていったぞ。出発する前に捕まえられて良かった。ロキはどこ行ったんだ?」

「ここだよ」ロキは引き結んだ唇に笑みを浮かべて手を振り、まだ木に寄り掛かっていた。普通だ。普通の態度を死守せよ。

「ああ。久しぶりにお前らに会えてよかったよ。感謝祭おめでとう!」

「お前もな」ソーが言った。

「危なかったね」ロキは従兄弟の足音が遠ざかると、小声で言った。「早く帰ろ」

ソーは帰りの道中、制限速度を十五上回ったまま運転した。背後で玄関の扉を閉めきる前にロキはくるりと向きを変えてソーに飛びつき、ソーは彼を宙に抱き上げると二人してくるくると回った。

「週末の間は、これを好きな所でできるんだ」ロキはニヤリと笑った。

「週末の間は、これをどこでもできるんだ」と同意したソーの目が煌めいていた。

その夜の「どこでも」というのはリビングルームのソファの上となり、ソーがロキを喉の奥まで咥え込んだ。やがてクッションから背中を浮き上がらせて喉の奥へと欲を吐き出したロキは、相手と場所を代り、その後子供だった頃以来初めて同じベッドで眠った。

ソーの広い胸板に頭を載せ、その腹に腕を回して横になったロキは恥ずかしくなっていた。涎を垂らしたらどうする?眠っているうちに足を蹴ったら?イチャイチャしている時とは違った不思議な親密さが感じられた。

ソーは翌朝早く目が覚めるとロキを背後から抱え込み、首と肩の付け根に鼻先を突っ込み、片方の大きな手で相手の胸を上下に大きく撫で、腰をキュッと掴んできたのでロキはゆっくりと意識を浮上させると背後に身体を押しつけた。

お忍びの時間のように感じられた。この、時間の狭間、日々の狭間、どこか不思議な夢のようなこの場所では彼らがこの世に二人きりであり、いつでもこうしていられるふりができる時間だった。唐突に切ない気持ちに支配されたロキはソーの腕の中で向きを変えると、必死の思いで相手にキスを贈り、残ったものが肺を満たすソーの吐息と、彼のペニスを包み込むソーの手と、達する時に唇に上ったソーの名前だけになるまでそうし続けた。

以前も恋に落ちたことはあったと思っていたが、今恋愛していると感じる気分とは比べ物にもならなかった。今のそれは鋭く、彼を痛めつけるもので、それを失うくらいなら百回死んでもいいと思うくらいだった。

次の日は一日中家の中にいて、数インチ以上離れずべったりとして過ごした。この日の「どこでも」はキッチンテーブルとなり、この日初めてロキは指の滑りを良くしてソーの中に入り、探るような指先で触れるとソーが身を捩り、美しく喘ぐ場所を見つけ、その姿を見て声を聞いているだけでロキまでイってしまいそうになった。空いた手でソーのペニスを扱き、ソーが荒れたキスをするために彼を引っ張り寄せ、淫らで湿った口づけをする間に彼が身震いして二人の身体に白濁を吐き出した。その後、ソーは自分の出したものをローション代わりにロキがイクまで手淫した。

夕飯にはピッツァを頼み、地下室のソファで寄り添い合って映画を観た。何の心配もせず、伸びやかに、彼ら以外の目を気にすることもなく。

「今夜もまた俺と一緒に寝てくれるか?」ソーがロキの耳元で囁いた。「お前の隣で目覚めたことが、凄く幸せだった」

こんなにも簡単に深い愛情表現をされると、未だにロキは呼吸を奪われてしまい、無言のキスでのみ是と答えることができた。

その夜もまた夢を見た。ダンプスターに顔面を押しつけられ、襲撃者が背後で笑っている夢だ。恐怖に駆られ、それに麻痺したロキはなんとか声を出して助けを求めようとした。その声は彼の喉元で引っかかり、これから悪いことが起こると悟り、『ソー』、必死に叫び声を上げようと、『ソー』、だけどこの夢の中でソーが彼を助けることはもう何週間もなかったし――

ビクリと体を震わせ、心臓がバクバクとしながら目が覚めると、ソーが目の前にいた。すぐ目の前に。その腕がロキの肩をしっかりと抱え込み、大きく温かく、彼を守るように――

小さな嗚咽を押し殺し、彼はソーの胸板に顔を埋めた。

「どうしたんだ、ベイブ?」ソーが眠たげに尋ね、片手を上げてロキの髪を撫でてやった。

「あなたがここにいる」ロキは意味を成さずに告げた。

ソーはただ彼の髪を撫で続ける。「いるぞ」彼は同意した。「いつだってここにいる」

「同じ夢を見るんだ。あの…ガソリンスタンドとアイツらの夢。もし、あなたが来てくれなかったらどんなことになっていたか――」

「だが俺は来た」ソーが言った。「お前は無事だ。それはただの夢なんだ」

「無事」ロキは繰り返して呟いた。「ソー。ソー。あなたを心から愛してる――」するとソーが彼の頬にキスをして涙を拭い、その瞼にもキスを落とし、ロキは強い力で彼にしがみついた。

「準備が整った」ロキが告げた。「してほしい…お願い…」

「いいのか?」

「うん、おねがい。あなたが欲しい。欲しいの」

「ロロ」ソーの囁き声が割れていた。

今回はもっとゆっくりで、以前ほどの切迫したものがなかった。キスと愛撫をたっぷりと交わし、ロキが真っ赤になるまでソーは愛情の言葉を注ぎつづけ、感謝と憤懣の両方でロキが泣きたくなるまで彼を辛抱強く、そして優しく開いていった。

「本当にいいんだな?」ソーがまたも尋ね、ロキの入り口にローションを縫った亀頭を当てていた。「お前を――お前のことが欲しくてたまらないけど、お前をまた傷つけたくはない」

「本当にいい」ロキが答える。「本当の本当に。今度は覚悟ができてる」手を上げて、ソーの顔を撫で、そこに浮かべられた懸念そうな表情を宥めてやった。彼は一体何をしてこんなに素敵な人に愛されたのだろう?

ソーが中に押し込むと、二人は同時に呻き声を上げ、ロキはソーの腰に両脚を回すと相手をもっと近く、もっと近くと、ついには互いの身体がぴったりと合わさるまで引き寄せた。やはりまだ焼けつくような感覚があったが、ロキはあまりに満たされ、愛され、完成された気持ちだったので、火事でも起こらない限り中断する気にはなれなかった。ソーが彼の左右に肘をつき、その筋肉が凝縮して緊張し、檻のように彼を囲い込むと、ロキは自分が小さいが、守られ、大事にされているような気分になった。

その時、ロキは命を預けられるほどにソーを信用できるのだと思い知った。むしろ、すでに命を預けたことがあり、しかしそれは物理的な安全だけを意味しているのではなく、心と魂をも守られているのだと知り、ソーがそれら全てをその広大な手の平に包み込んで守ってくれると信じることができた。

「僕は兄さんのものだよ」ロキが囁きかけた。「いつまでも」

「俺たちはお互いのだ」ソーが誓いのように言って、彼にキスをした。

そうして二人一緒に動き出し、はじめはゆっくりと、だがやがてどちらももっと、はやく、もっとと疼くまでになっていた。

「もっと強くっ」ロキが息を呑む。「ぁああっ!もっと、はげしくして!」

ソーは唸り声を出し、腰の動きがより荒々しくなり、ついにはロキは両腕を横に投げ出してシーツにしがみつくほかなくなるまでソーは彼の中を何度も穿ち、そうされる度にロキ自身が腹の上で飛び跳ね、苦悶の縁まできている極限の快楽を味わった。

そしてソーも呻き声を漏らしており、膝立ちになるとロキの足首を肩に引っ掛けて腰を掴み、より深く潜り込んで、何度も、何度も、腰を突き出して――

ロキは甲高い音を、まさしく嬌声を上げており、ソーは低く原始的な唸り声を上げ続け、ロキは完全に我を忘れ、意識は身体の何処か上の方で浮遊しながら自分たちの姿を見降ろしており、襲い掛かる快感があまりに圧倒的で、とんでもなくて――あと少しで――ああっあっソーがちょうど良い場所を何度も穿ち――息を詰めて全身がばねが縮むように緊張し、その場であと二秒だけ完全に動きを止めて、だって、ああ、そこ、そこ、そこ――

長引く悲鳴のような声を上げたロキは、自分の中でダムが決壊するのを感じ、爪先が丸くなるくらいの快楽が波のように彼の中を駆け抜けていくと、ペニスから自分の腹に濃い白濁が飛び散り、彼はマットレスに力なく溶け込んでいった。その間もソーは彼の中を穿ち続け、ついに耐えるような声を絞り出すともう一度だけ奥を突き上げ、その場に留まり、ロキの上に倒れ込んでその首筋に顔を埋めて腰を何度か小刻みに痙攣させた。

長い数分間、彼らは汗だくで手足を絡ませたまま、互いに息を整えながら現実に戻って来た。

沈黙を破るのを躊躇い、ロキは小さく呟いた。「ありがとう」

「何がだ?」

「待ってくれて。僕の心の準備が整うまで」

ソーは彼を近くに引き寄せた。

「こっちこそ、ありがとう」彼は言った。

「何が?最高のセックスを?」ロキが得意げな顔をする。

「お前がお前でいてくれて。俺を好きになってくれて」

「ダサいんだから」ロキは嬉しげに文句を言って、ソーは同意するような声を出した。「それで、気になってたんだけど。日記のこと。だいたい、VVってどういうこと?」

「ああ」ソーが言った。左手を掲げ、親指と人差し指を使ってLの形を表現した。「ロロ。Lが二つだ」手を僅かに左側に倒す。「LがVになる」

ロキはどうしようもなくなって笑った。「うっそ、暗号下手すぎ」

ソーは嬉しげに肩を竦めた。「だが、おかげで俺たちは一緒になれただろ?」

「そうかもね」

この狂ったようなダンスは全てロキがソーの部屋に忍び込んでその日記を盗み読みしたことから始まったが、その頃二人のステップは完全に不揃いで、同じ音楽を聞いてもいなかった混乱したダンサーが二人いただけだった。

ロキは相変わらずソーの部屋に忍び込んでいたが、以前とは違っている。彼らは共有するメロディーを発見し、かつてはバラバラだった旋回が安定したデュエットへと変わった。ロキが飛び跳ねれば、彼を受け止めるべくソーが待ち構えていた。

そして踊ることは難しかった。とても難しかった。この先もステップを間違えることはどちらにもあることは確定していたが、彼らは良いダンスパートナーとして互いを支え合い、地面に転げてしまった相手を助け起こし、傷をキスで慰めて、動き続けることだろう。

ソーはロキのこめかみに長く唇を押しつけて、ロキは満足げに息をついた。

彼以上に良いダンスパートナーは望めなかった。