走れ神主

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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走れ神主(はしれかんぬし)とは神主伝説を元にして執筆された文芸作品である。発行は酒樽文庫。ベストセラー作品。 ベストセラー作品ではあるが、色々な意味で東方Project二次創作。実はの素晴らしさを広げる為に神主自らが執筆したのではという説も。 酒樽文庫から発行された原本は絶版となっている。

あらすじ[編集]

スポイラー
スポイラー

警告:以下の文章にはネタバレ、いわゆるスポイラーが含まれています。これにより記事はより空気力学的に洗練され、その結果としてより高速で疾走できるようになります。

もしあなたが、ガンダルフがファンゴルンの森で再び現れることや、U.N.オーエンの正体はローレンス・ウォーグレイヴであることや、かばんちゃんはミライさんの髪の毛から生まれたヒトのフレンズだったことや、カゲロウデイズは黒コノハによって女王に仕立て上げられたマリーの空想世界であることや、ダイは最終的に黒の結晶の爆発から地上を守り行方不明になることや、神楽坂明日菜は黄昏の姫巫女であることや、クラウド・ストライフはソルジャーではなく一般兵であることや、うたわれるものの舞台は人類が滅びた後の遠い未来の地球であることや、ディケイドは狂言回しでしかなく「ディケイドの物語」は存在しないことや、吾輩」は偉そうな事言った挙句に酔っ払って溺れ死ぬことや、ウィキペディアアンサイクロペディアのパロディであることを知らないのであれば、充分注意して、救急箱を手放さないようにしてください。

素朴な飲兵衛の神主ZUNは、肝臓不信のために多くの酒を禁止している暴君のはなしを聞き、激怒。王の暗殺を決意する。 しかし、あえなく衛兵に捕らえられ、即刻処刑されることになる。 神主は連載の東方香霖堂人質として王のもとにとどめおく事を条件に、 実家にある冷蔵庫のビールを飲み干すために三日間の猶予を得る。 王は酔いどれを信じておらず、死ぬ(禁酒する)ために再び戻ってくる事などはないと言いのけた。

ビールを飲み干してからの帰途で、アルコール不足による手の震えや目眩に息切れなどの度重なる不運に出遭う。 神主はそのために心身ともに困憊し、一度は王のもとに戻ることをあきらめかけた。 しかしその時、神主は自分自身が、かの肝臓不信の王がいう”醜いアル中”そのものである事に気づき、再び走り出す。 肝臓不信の王を見返すために、自分を信じて疑わない酒類を救うために、そして自分の命を(禁酒的な意味で)捧げるために。

こうして神主は日暮れに町へ到着し、約束を果たす。 そして王の気持ちを変える事に成功したのである。

ちなみにちゃんとした終わり方は、神主がガリガリである(まさに骨そのものである)ということを人質にされていたから指摘され、 神主がひどく赤面する(飲酒による赤ら顔的な意味で)というオチである。

元ネタになった神主伝説[編集]

『走れ神主』は以下のような神主伝説元ネタになっている。


幻想郷の酒屋をハシゴした神主と霖之助は酒代が無くなり、神主は霖之助を”人質”に酒屋に残したまま、博麗神社へ金の無心に行く。しかし神主は戻らない。

しびれを切らした霖之助が神主の家へ行くと、 神主は冷蔵庫に満たされたよく冷えたビールを飲んでいたのだ。

そのとき神主は霖之助に対して、 「待つ身がつらいかね、待たせる身がつらいかね」とつぶやいたという”ビール事件”。


後に、霖之助はこう記している。

『ビール事件』を『走れ神主』という作品が生まれた原因であったなどと、私は強弁するような、 そんな身勝手な妄想も意志も持っていない。 ただ、私は『走れ神主』という作品を読む度に、何となく『ビール事件』が思い合わされて、 その時間に耐えた神主の切ない祈りのような苦渋の表情が さながら目のあたりに見えてくるような心地がするというだけのことである。

第113季の暮であったか。五日待ったか、十日待ったか、もう忘れた。 私は酒屋に軟禁の態である。この時私が自分の褌代だけをでも持っていたならば、必ず脱出しただろう。 が、それさえ出来ず、ノミ屋のオヤヂに連れられて、 神主の家へノコノコと出かけていった汚辱の一瞬の思い出だけは忘れられるものではない。 神主は冷蔵庫の前でビールを飲んでいた。私は多分神主を怒鳴ったろう。そうするよりほかに恰好がつかなかった。 この時、神主が泣くような顔で、「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と 暗くつぶやいた言葉が今でも耳の底に消えにくい。

R-20指定[編集]

この作品は、メッセージ性の高さや尺加減のよさなどから義務教育国語教科書などで扱われることも検討されたが、作品に漂うあまりの臭さの為に「未成年の教育に用いるには不適当である」という結論が出された。また、それ同時に文学作品でありながら『走れ神主』はR-20指定を受けることとなった。これは作中における酒臭さのほか、この作品を読んで急性アルコール中毒に陥ってしまう者が続出したせいでもある。絶版になったことはこの出来事とは無関係ではないだろうとファンの間では噂されている。現在、絶版となった原本を手に入れるのは至難の業である。

取り扱い上の注意点[編集]

第二版以降は出版社もこの本の危険性を認知したようで、以下のような内容が記された帯が付けられるようになった。

  • 未成年の飲酒は法律で禁止されています。
  • つまり本書を未成年が購入することも禁止されているということです。
  • 火気厳禁。
  • この本は多量のアルコール分を含みますので運転前の読書は控えてください。
  • 本書を購入される前にアルコールパッチテストを行うことを推奨します。

『走れ神主』全文[編集]

既に絶版となっているが、著作権フリーの作品なのでここに全文を引用する。


神主は激怒した。
必ず、かの邪知暴虐の禁酒法を除かねばならぬと決意した。
神主には政治はわからぬ。神主は、オリ系の同人作家である。
ゲームを造り、酒を飲んで暮らしてきた。
けれどもアルコールには人一倍敏感であった。
きょう未明神主は神社を出発し、野を越え山越え十里離れたこの市にやってきた。
神主にはも、もない。女房も無い。1台の、大きな冷蔵庫と二人暮らしだ。
この冷蔵庫は、或る上質なビールを近々、買い足すことになっていた。
それゆえ、ふさわしいグラスやら祝宴のつまみやらを買いに、はるばる市にやってきたのだ。
まずはその品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶらと歩いた。
神主には竹馬の呑み友達があった。霖之助である。
今は神主の連載の、編集をしている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちに神主はまちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。
夜のせいばかりではなく、市全体が、アルコールの気配がしない。だんだん不安になってきた。
しばらく歩いて老爺にあい、語勢を強くして質問した。
「王は、酒を禁じます。」
「なぜ禁じるのだ。」
「体に毒である、というのですが、誰もそんな、弱い肝臓を持っては居りませぬ。」
「たくさんの酒を禁じたのか。」
「はい、はじめはワインを。それから、ウイスキーを。それから、ジンを。
それから、焼酎を。それから、日本酒を。今日はビールが禁じられました。」
聞いて、神主は激怒した。
「呆れた王だ。生かして置けぬ。」


神主は酒好きな人物であった。酒樽を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。
調べられて、神主の懐中からは酒瓶を開ける為の栓抜きとバトラーズ・フレンドが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
神主は、王の前に引き出された。
「この栓抜きで何をするつもりであったか。言え!」
「酒を暴君の手から救うのだ。」と神主は悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑した。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「では、ビールでも飲みましょうか(ンフフフ」と神主は、いきり立ってビール瓶を開けて言った。
「人の酒を断るのは、もっとも恥ずべき悪徳だ。王は、民の肝臓さえ疑っておられる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、酒の席だ。酔った人の発言は当てにならない。
人はもともと私欲の塊さ。信じては、ならぬ。」
暴君は落ち着いてつぶやき、ほっとため息ついた。
「わしだって酒宴を望んでいるんのだが。」
「何のための酒宴だ。自分をおだてる声を聞くためか。」今度は神主が嘲笑した。
「黙れ下賎の者。」王はさっと顔を上げて報いた。
「素面ではどんな清らかなことを言える。
お前だって、今に、アル中の禁断症状が出てから、泣いてわびたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は利口だ。私はちゃんと禁酒する覚悟で居るのに。酒をくれとは絶対に言わない。
ただ、私に情けをかけるつもりなら、処刑までに3日間の日限を与えてください。
たった一つの冷蔵庫を、ビールで満たしてやりたいのです。
私を信じられないのならば、よろしい、この市に香霖堂という店があります。私の唯一の連載なのだ。
私が逃げてしまって、3日目の日暮れまでに戻ってこなかったら、あの連載を会社ごとつぶしてください。」
「願いを、聞いた。その身代わりを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。
遅れたら、その身代わりを、きっとつぶすぞ。ちょっと遅れてくるがいい。お前の罪は、永遠に許してやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる」
「はは。酒が大事だったら、遅れてこい。お前の心は、わかっているぞ。」


雑誌キラー、霖之助は深夜、王城に召された。神主は霖之助に一切の事情を語った。
霖之助は無言でうなずいた。
神主はすぐに出発した。初夏、満天の星である。


神主はその夜、一杯も飲まず十里の道を急ぎに急いで、神社へ到着したのは、あくる日の午前だった。
いつも酒を頼む酒屋は、よろめいて歩いてくる神主の、アルコールの切れた姿を見て驚いた。
そうしてうるさく神主に質問を浴びせた。
「なんでもない。市に用事を残してきた。またすぐ市に行かなければならぬ。
明日、ビールを届けてくれ。早いほうがよかろう」
神主は、またよろよろと歩き出し、家へ帰って酒を飲み、間もなく床に倒れ伏し深い眠りに落ちてしまった。
ビールは、昼間に届けられた。
冷蔵庫に並べ終えたころ、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような雨が降り出した。
何か不吉なものを感じたが、それでも杯を重ねるうちに神主は、
満面に喜色をたたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。
冷蔵庫が空になったのは明くる日の薄明かりの頃である。
神主は跳ね起き、南無三、飲みすぎたか、いやまだまだ大丈夫、これから出発すれば、約束の刻限までには十分間にあう。
今日は是非とも、あの王に、酒の良さを見せてやろう。
そうして笑って禁酒してやる。身支度はできた。
さて、神主は、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。


私は今夜、禁酒する。禁酒するために走るのだ。メディアワークスを救うために走るのだ。
王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は禁酒する。
さらば酒よ。
神主は、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。
えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。
神社を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、
雨も止み日は高く昇って、そろそろアルコールが抜けてきた。
折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、
神主は幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、
よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
今、ここで、酒が切れて動けなくなるとは情無い。
メディアワークスは、おまえを信じたばかりに、やがて倒産しなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、
全身萎えて、もはやEASYすらクリアかなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった
メディアワークスよ許してくれ。私は、いつでも君を信じた。君はいつでも誤植が多かった。
本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。
王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、香霖堂を潰して、
私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。
会社だの、同人だの、信者だの、パッチだの、考えてみれば、くだらない。
人を潰して自分が飲む。それが酒の定法ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。
キャラリセットでも、勝手にするがよい。やんぬる哉。
――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。


ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、
見ると、岩の裂目から滾々と、何か小さく囁きながら清水が湧き出ているのである。
その泉に吸い込まれるように神主は身をかがめた。
両手で掬って、一くち飲んだ。


酒だ。
今までに飲んだことの無い見事な日本酒だった。


ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした
養老の滝…酒が好きな年老いた親のために、毎夜酒を買いにいく親孝行な息子、
それに感じ入った山神の力でが酒になったという伝説を思い出した。
歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。
義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。
斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。
日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。
禁酒なぞは、問題ではない。ブログでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! 神主。


私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。
悪い夢だ。忘れてしまえ。
酒が切れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。神主、お前の恥ではない。
やはり、お前は真の酒飲みだ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい!
私は、酒好きの士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ZUNZUN沈む。
待ってくれ、バッカスよ。私は生れた時から酒好きな男であった。
酒好きな男のままにして死なせて下さい。


路行く人を押しのけ、跳ねとばし、神主は黒い風のように走った。
野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒を残らず飲み干し、酒宴の人たちを仰天させ、
を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。
一団の旅人と颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。
「いまごろは、あの男も、にされかかっているよ。」
ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を変態にしてはならない。
急げ、神主。おくれてはならぬ。酒の力を、いまこそ知らせてやるがよい。
風態なんかは、どうでもいい。神主は、いまは、ほとんど骨であった。
呼吸も出来ず、二度、三度、口からトマトリキュールが噴き出た。見える。はるか向うに小さく、市の塔楼が見える。
塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。
まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、神主は走った。
神主の体は、からっぽだ。アルコール一滴存在しない。
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
神主は疾風の如く刑場に突入した。間に合った。
「私だ、刑吏! 刑を処せられるのは、私だ。神主だ。彼を人質にした私は、ここにいる!」
かすれた声で精一ぱいに叫びながらついに磔台に昇り、褌一丁の霖之助の両足に、齧りついた。
群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。
霖之助の縄は解かれ、メディアワークスは許されたのである。
「メディアワークス。」神主は目に涙を浮かべていった。
「私と飲め。ちからいっぱいに飲め。私は途中で一度悪い夢を見た。三月精の恨みをMWに返そうとした。
君が若し私と飲んでくれなかったら、私は君にもう一度連載する資格さえ無いのだ。飲め。」
「神主、勘弁してくれ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。
君がうちの社を酔い潰す気じゃないかと。君がほどほどで勘弁してくれなければ、私は君と酒を飲めない。」
神主はすべてを察した様子で首肯き腕に唸りをつけてメディアワークスのグラスに自分のグラスをぶつけた。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆の中からも、乾杯の声が聞えた。
暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
飲み友達とは、決して空虚な妄想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「乾杯、王様乾杯。」
一橋幻想研究会が、よく冷えたビールを神主に捧げた。
神主は、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「神主、君は、アルコールが切れて骨みたいじゃないか。早くそのビールを飲み干すがいい。
この東方のファン達は、神主の素面を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
神主は、ひどく赤面した。

関連項目[編集]