新橋
新橋(しんばし)とは、東京都港区が世界に誇るサラリーマンとオヤジのパラダイス。国際的な認知度の高さからアメリカ人・イギリス人は「ニュー・ブリッジ」と呼び、フランス人は「ポン・ヌフ」と呼ぶ。そんなわけで、駅そばの店名も「ぽん・ぬふ」。
心癒すオヤジの香り[編集]
日本特有の接待の慣行や、飲酒に対する社会的な寛容さから、日本のサラリーマンは身体がアルコール漬けになっているほど、仕事が出来ると評価されている。「ビジネスは、夜、行われる」という言葉はウソではなく、日本でもトップクラスの企業の企画運営の中枢に関わる案件、特に機密会議は、本社でなくこの街のバーかクラブか赤提灯か一杯飲み屋で行われている。銀座の華やかな飲み屋では産業スパイに狙われやすい、だから新橋の裏の裏、いわゆるなじみの店こそ、こうした任務を果たすのに最適なのである。そうした重い任務を背負ったリーマンが酔ってたかって離合集散するのであるから、新橋駅周辺、特に烏森口は、空気がなんとなくどんよりとアルコール臭い。くわえてニコチン臭さ、脇の下や股間の臭い、歯槽膿漏の臭い、加齢臭、オヤジギャグの臭さなど、ありとあらゆる香りがひしめいていて、映画「パフューム」も真っ青な、香りのアンサンブルを堪能することができる。またこの世界の臭いを肉体にたきしめることで、ようやく新橋を舞台に活躍する一人前のリーマンになることができるのである。ここはオヤジの故郷。この新橋の臭いをかいで、またオヤジたちは涙をこらえビジネスの戦場へと戻っていくのである。
新橋の1日[編集]
朝[編集]
JR新橋駅から大量のサラリーマンが排出され、あたりの歩道は会社へ向かう人で埋め尽くされる。早朝から営業を行う薬局がいくつか存在し、店頭では栄養ドリンクをチャージするオヤジも見られる。
9時半頃には混雑は緩和され、営業リーマンがあたりを闊歩する。
昼[編集]
リーマンがビルから排出され、ランチタイム営業を行う居酒屋に収容される。アルコールは提供されないが、ランチメニューにはオヤジのメタボリック化を加速する物(揚げ物)が多い。
昼食の摂取を終えたリーマンは公園でタバコを一服した後ビルに戻り、フリーセルで遊ぶ。
夜[編集]
ビルには夜遅くまで明かりが灯るが、幸いにも残業を早めに切り上げたリーマンが再び居酒屋に収容されるか、立ち飲み屋・焼き鳥屋台・キャバクラでくだをまく。まさにオヤジパラダイスである(メイド居酒屋も存在するようだ)。そうしてオヤジは1日の労を癒したのち帰途につき、新橋の街は夜遅く眠りにつく。
日刊紙乱舞[編集]
インターネットの普及が急速に進んだ昨今にあっても、幼少時に受けた敗戦トラウマによる戦後教育のせいか、今でもこの界隈では熱心な紙メディアの信者が多数残存している。団塊を中心とする50~60代に限って言えば、ラッシュ時であってもわざわざ自宅から持ってきた新聞を細かく折りたたんで読むことがあるべきリーマンの姿だと信じている人々がほとんどである。 こうした人々は例外なくパソコン機器を使いこなすことができないため、これを世に「情報弱者」と呼んでいる。
朝でさえそうのだから帰途につく団塊リーマンでごったがえす新橋駅のキオスクはすさまじい。エロ記事や競馬競輪の情報を求め、ランチでさえ銭貨を惜しむくせに、日刊紙・スポーツ紙を買いあさるリーマンは、ここぞとばかり大枚はたくために黒山の如く押し寄せるのである。政治の不平不満と愚痴とイヤがらせなら日刊ゲンダイ、ハッタリ記事やトンデモ記事なら東京スポーツ、巨人とナベツネ軍団なら報知新聞、海外向けのエロ記事なら毎日新聞と読者のニーズに合わせて、その傾向や特徴が細分化しているのが日刊紙の特徴である。
しかしこの日刊紙のパラダイスも終焉を迎えつつある。「情報弱者」である団塊が消滅したら日刊紙業界が道連れになることは日を見るよりも明らかである。その意味で日刊紙読者が集う日本で最後のコロニーがこの新橋駅周辺なのであり、電車内でエロ記事を見てニヤついているハゲのおっさんも滅びゆく絶滅危惧種なのである。日刊紙を読むリーマンをどう維持していくのがこれからの大きな課題である。
鉄道オタクの聖地[編集]
新橋駅の日比谷口を出ると、目の前に見えるのはSL広場である。鉄道開業100年を記念して1972年に作られた。 このSL広場には、かつて威容を誇った蒸気機関車C11形が中央に飾られている。言わずと知れた新橋は鉄道発祥の地であり、その縁もあってか比較的多くの鉄道マニアないしは鉄道オタクを見かけることがある。半ズボンをはいたまま人を押しのけ蹴飛ばして写真撮影したり、車内放送の真似をして独り言をボソボソしゃべったり、時刻表片手にわけのわからん駅名・運賃表・車体デザインのことを大声でその仲間とべちゃべちゃしゃべったりする鉄道オタクを見ると、時に殴り殺したい衝動に駆られなくもないが、それでも彼らだとて人の子、彼らが汐留の鉄道発祥の碑やこのSL広場で鉄道のことを想い、感慨から涙を流す光景には、思わず心打たれるものがある。
なお、日本のテレビ局は何かことが起こるたびにこの広場に出向いては、わざわざぐでんぐでんのオヤジをつかまえて、どーでもいいような質問をし、あたかも「これぞ日本の庶民の声」のように放送する。マスメディアがやりがちな情報操作の1つである。東京、新宿、池袋等の各駅前でもできそうなのに、ほとんど新橋で行われている。これはあまりにもオヤジやリーマンをバカにした所業であろう。オヤジたちは名誉毀損で立ち上がるべきである。
蒸気機関車をじっと見つめる鉄道オタクのそばを横切りながら、へべれけのリーマンが大声で罵りあうシーンも、この街ならではのほのぼのした光景であるが、夜、自販機で買った缶ビールを飲むリーマンを見ると何か別の感情が胸にこみ上げてくる。
そういった経緯から、サラリーマンランドとしての「SL」とも言われている。
ヒートアイランド現象[編集]
代わって今度は汐留口を見ておこう。汐留(東新橋)の再開発は新橋の風景を一変させた。電通・日本テレビ・パナソニック電工の巨大ビルが立ち並ぶこの地域の活性化は確かに、ポスト・バブル時代の日本経済の牽引車であると言えなくもない。しかし思わぬ副産物がつきまとうことになる。以前は遠くに浜離宮をのぞむ広々とした海岸線があったが、もはやその景色を思い返すことは難しい。巨大ビルは海に面した屏風のような役割を果たすことになり、遮蔽された空気は海に流れ出すことなく、東京全体の温度を急上昇させることになったのである。いわゆるヒートアイランド現象である。厚いコンクリートに囲まれた汐留巨大ビル群は、石焼ビビンバの石のように熱々になり、年間平均気温は5度以上上がったと言う。もちろん海に逃げ出さない熱風は駅を超えて、烏森のオヤジや鉄道マニア少年をも襲い、彼らはSL広場でのたうちまわった。かくして鉄道マニアだけではなく、クールビズしていたオヤジたちも半ズボン氏に様変わりした。今年の夏も飲み屋街で半ズボンをはいて黒々としたスネ毛を晒す、少年の目をしたさわやかなオヤジたちに会うことができるだろう。
再開発計画[編集]
西口に聳え立つのは1971年開業の『ニュー新橋ビル』。地下1階は70軒余の飲食店フロア。1階には格安チケットやアジア系マッサージ店がある。しかし、同ビルはSL広場を含め、2032年に新建物(35階ツインタワー)が完成予定の「西口地区再開発地域」にすっぽり入っている。
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