ファースーツ
ファースーツ(Fursuit)とは、ファーリーファンダムにおける動物を模したコスチュームのこと。日本語においては単に「着ぐるみ」と呼ぶか、ケモノを模している点を強調して「獣型着ぐるみ」「ケモきぐ」ともいい、それを着用することを「獣化」という。
目次
概要[編集]
「Fursuit」という呼称は、1993年、アメリカ在住のロバート・キングがコスチューム制作に関するメーリングリスト「Fursuit Mailing List」を立ち上げた際につくられた造語である。[1]
もとはコスプレのひとつとして発生し、アニメやSFのイベントで時たま見かけるか、仲間内での集まり(furmeet)で披露される程度のものだった。1989年に開かれた最初のファーリー・コンベンションであるConFurence 0のプログラミングには"Furry Costuming"と表記されている。
インターネットの発達によりファンダムが拡大、イベントの増加もあって存在が広く知られるようになり、また制作方法も共有が図られたことから自作する者が増え、なかには制作をビジネスとして成り立たせている人もいる。
特徴[編集]
ファースーツはフェイクファーなどを縫い合わせて作られる。一般的なファースーツはフルスーツ(full-suit)と呼ばれる。頭、前足(手袋)、後足(靴)、ボディ、尻尾といった複数のパーツから構成される。尻尾は、ベルトで腰回りに固定してボディに開けた穴を通すタイプと、はじめからボディと一体になったタイプがある。着用時には皮膚の汗や汚れがつかないようインナーウェアを用意し、綿やウレタンなどの詰め物で膨らみを持たせる。ヘッドはファースーツの中で最も重要なパーツで、全体の印象を大きく左右する。ウレタンやまた工夫を凝らしやすいパーツでもあり、顎を稼動したり、瞬きできたりするヘッドも作られている。
形態による分類[編集]
フルスーツ[編集]
全身を覆う種類のファースーツ。ツナギのように頭部を除く全てが一つのピースになっているものや、手、腕、足、尻尾、などパーツごとにバラバラになっているものも存在する。一人で着用するのは大変で、多くの場合介助人を必要とする。
ハーフスーツ[編集]
ハーフスーツ(half-suit, partial-suit)はフルスーツからボディを省いたものとなる。ボディの代わりに普段着やシチュエーションに合わせた衣装を着用する。衣装によっては後足や尻尾も省かれる。類似したものとして、上半身のみ作られたthree-quarter suitというのもある。
種類による分類[編集]
動物を模したファースーツ[編集]
ファースーツは一般的にファーソナ(自身の動物の自我)に沿ったキャラクターを作るのが一般的であり、様々な種類の動物が存在する。イヌ、オオカミ、ネコなどスタンダードなものから、コウモリ、カンガルーの他、自身が考えたオリジナルの動物や、複数の動物を混合したハイブリッドと呼ばれるものもある。
キャラクターを模したファースーツ[編集]
人気キャラクターを模したファースーツも多く存在する。ポケモン、デジモン、MLPなどのキャラがこれに相当する。これらに自身のアレンジを加えたものや、他の動物と混合したファースーツも少なくない。
バリエーション[編集]
ファースーツにはフルスーツ、ハーフスーツのほかにも特徴的なものがいくつかある。
- Boobsuit - メスケモのファースーツ特に胸を大きく強調したもの。
- Taursuit - タウルと呼ばれる六足のキャラクターを模したもの。
- Quadsuit - 四足歩行にしたもの。より動物らしい造形ができる。
- Living plushie - ぬいぐるみらしさを強調したもの。
- スウツ - 密着度の高いもの。日本語独自の呼称で異説あり。
着ぐるみとの違い[編集]
原則として形態による着ぐるみとの差は無い。日本で「着ぐるみ」として知られている人体着用ぬいぐるみに海外では「ファースーツ」という語句が充てられ文化的に発達したに過ぎない。従って、日本で着ぐるみを「ファースーツ」と呼ぶ人もいれば、海外でファースーツを「着ぐるみ」と呼ぶ人もいる。(これはケモノとファーリーの差異に近い。)
但し、文化的な特徴により両者には多少の差異が挙げられる。以下に例を挙げる:
- カートゥーンをベースにデフォルメされた瞳や相貌(ファースーツでは余りグラデーションが用いられない。)
- ダイナミックな身体パーツやギミック
- 原色に近い様々な色のファーを取り入れたカラフルな配色
ただし、当然これらは飽くまでも身体的な一特徴でしかなくこれらの特徴を持たない為「着ぐるみ」に分類するのは早計である。
入手方法[編集]
ファースーツは身長など個人の身体的特徴に合わせて作られているため、全て手造りである。入手するには自分で制作するか、他人に制作を頼む(コミッション)、もしくは譲り受けるしかない。形などにもよるが、自作の場合で1万円から10万円、制作委託で15万円から30万円もしくはそれ以上の費用が必要となる。
自作の場合、必要な道具や素材は手芸店や工具店、もしくはインターネット通販で入手できる。制作方法も複数のウェブサイトで掲載されているので、自分の好みに合った方法を探し出すのもひとつの楽しみとなる。
他人に製作を委託する場合、自らの好みに合ったものをつくれるかが重要となる。意思疎通を明確に図るため、キャラクターシートなども用い、費用の面でも十分な事前確認が必要である。
パフォーマンス[編集]
ファースーツを着用しているときにはただ立っているのではなく、動きが求められる。特殊なパフォーマンスをする必要はないが、キャラクターになりきり、その場に合わせた動きをすることで、キャラクターがより生き生きしているように見せることができる。
キャラクターイメージを維持するため、着用時にはしゃべらないというケースもある。その場合、ボディーランゲージで意思疎通を図る必要があり、サポートとの間で緊急時の合図などを事前に決め合わせなければならない。
また、着用時には通常よりも体力を消耗するため、水分補給を充分に行い、体調が悪い時には着用しない、長時間に及ぶ着用は控えるなど、様々なことに注意をする。
メンテナンス[編集]
ファースーツは特殊な素材が使われるため、すべてを水洗いすることはできない。使用後には消臭抗菌スプレーをかけ、風通しの良いところで乾燥させる。汚れが付いた場合、素材に気をつけながら水ぶきなどで汚れを落とす。ファーは癖がつかないよう定期的にブラッシングする必要もある。保管する際には匂い移りや火気に注意する。
その他[編集]
「ファースーツ」はファーリーファンダムでのみ用いられる呼称で、一般的な英語話者には通じないので注意が必要である。(一般的には"Animal costume"と呼ばれる。)
関連事項[編集]
着ぐるみ - 日本国におけるファースーツ
脚注[編集]
- ↑ Critter Costuming, p13 - Professional Profile - Robert King
このページはWikipediaから派生したものです。元記事はFursuitです。 ページ履歴に著者のリストがあります。WikiFur同様、WikipediaのテキストはCC-BY-SAとGFDLの下で利用できます。 |