社長
概要[編集]
社長、プレジデント、CEO。非常にイカツイし、風格を感じる呼び名だ。多くの人が「社長というのは金持ち[1]でゴージャスで威厳たっぷり」という先入観を持っている事だろう。社長は年収が億単位で、あちこちに別荘を持っていて、しかも大して働かず社長室でふんぞり返っている人物。そういったイメージがあるに違いない。
否。社長はそんな華やかなものではない。 社長はツライ職業[2]である。
社長は夢の職業[編集]
読者諸君の多くは絶賛社畜労働中の事と思う。平社員から係長、課長、次長、部長…。役職は様々であろうが、「自分が社長である」という人は少ないに違いない。 ほとんどの読者は毎日「誰かの下で」働いている事だろう。そしてふとこう思うのではないだろうか。「社長はいいよなあ。」と。
一般社員からすれば社長は夢の職業。誰にも制約されないし[3]、誰にも気を使わなくていいし、歩いているだけで社員は皆敬服する。どうせ年収も億越えなんだろう。しかも社長室で美人の秘書と談笑しては、たまに送られてくる書類にハンコを押したりするだけの楽な仕事しかしていないのだろう。嗚呼、同じ人間なのになぜここまでの差が出来てしまったのか…!
どうせそんな事を思っては「もし自分が社長だったら」というような妄想で楽しんでいるのだろう?そうだろう?読者諸君よ[4]。
確かに社長という肩書には憧れるであろうし確かに年収は平社員よりは高いだろう。
しかし読者諸君が思うほど社長という仕事は煌びやかなものではない。なんなら平社員よりも泥臭いまである。我々が思い描く「社長像」というのはあくまで理想形に過ぎない。
借金を背負う社長[編集]
さて、読者諸君には自分が出社してからの事を思い浮かべて頂きたい。まずは、建物に入る。階段を上がればいつもの部屋があってそこにはデスクがあるだろう。冷房や冷蔵庫や電子レンジなんかもきっとあるはずだ。天井には明るい照明がついているし、仕事に使うパソコンも備品だったりするかもしれない。
ではこれらのビルやデスクや巨大なクーラーは誰が買ったのか?--それは社長である。
他にも商品の材料価格は誰が支払うのか?--もちろん社長である。
健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料や健康診断料まで半額負担し、特例を除いて自身には下りない労災保険料を丸々負担し、給料や交通費、ボーナス、そして自分はもらえない有給休暇や残業代を社員に支給するのは誰か?--やっぱり社長である。
我々一般社員は体一つで働きに行けばいいだけなのだが、社長はあらゆるものを用意しなくてはならない。当然莫大な借金をしているはずだ。株や貯金だけで会社の経営費を賄えるケースなど極々稀。殆どの社長は社長名義で何千万から何億単位のお金を借りている。
明日にでも辞表を出して自宅の警備にシフトできるような気楽な我々と違って、社長は会社が回らなくなればお仕舞いだ。借金に押しつぶされては苦しみ悶えて死ぬことになるだろう。そう、社長は非常にリスキー。
確かに何十年も続いている大企業だと、何の苦労もせずに就任した若社長なんかもいるだろうが、そんなのはほんの一握り。殆どの会社の社長はリスクを背負って会社を経営している。我々には想像もできない程のリスクを。
もちろん社長の失敗はクビなんかでは済まされない。借金地獄と死あるのみだ。
責任を背負う社長[編集]
社長が背負うのは借金のリスクだけではない。重い責任も伴う。
会社が倒産すれば後始末は全て社長の責任でやらなくてはいけない。残った消費税や法人税、労働保険料の年度更新、リース料など費用の支払いはつづく。廃業しても会社の膨大な書類を自宅かレンタルルームに数年から永年保管しなければならないのはもちろんのこと、商品不具合の受け付けも社長の責任。建物が賃貸なら、残った家賃を支払ったり荷物をすべて持ち出したりなど原状回復をしなければならない。がらんどうになった会社を見つめながら只ひとり、残務整理をおこなう義務がある。社屋が燃えたりなんかして火災保険がおりないタイプの被害が及んだり社員が失業しても社長が責任を取らなくてはいけないし、部下が不祥事を起こしても謝罪をするのは社長。問題が起きて辞任をするのも、メディアで干されるのも、民衆に叩かれるのも社長。会社で違法行為があれば関わっていなくとも逮捕されるのは社長。 何らかの理由で会社を恨む人間の怨念の矛先も社長に向くし、その恨み晴らしとしてスナイパーによって暗殺されるのも社長だ。
会社の責任はまるまる全部社長にある。
かと言って手柄は社員の物。働くプロフェッショナルとして紹介されるのは社員。優秀な人材と褒められるのも社員。会社がイノベーションを起こした時に称賛されるのも社員であり、たまに会社に届く応援メッセージも全て働く社員に向けての物。社長はといえば「ただお金を出した人」という扱いだ。
嫌な責任ばかり背負わされて、会社の手柄は責任者の社長ではなく労働者の社員の物。社長はことごとく不憫である。
同情者0[編集]
会社で一番の苦労人、社長。しかし社内の人間はそれを理解していない。
「威張っていて、金持ちで、仕事をしないだらけた奴で、美人秘書とイチャイチャしているキモいおっさん」
これが社長に対する偏見であり、その苦労を知らない。社長があまりにも哀れだ。
当然、社長はこのような「あまりに酷い自分の境遇」を分かってくれる同情者を「一人でも」と探す事だろうが、社員は皆羨望のまなざしで見つめてくるだけで、良き理解者など0。
しかしこの記事を読んだ読者諸君なら最初の「1」になれるはずだ。借金と責任を背負って苦しむ社長の懐に忍び込み、深く同情してやれ。
きっといいコトがあるだろう。