ギャン
ギャン(GYAN、型式番号YMS-15)とは、ジオン公国軍の試作型(♀)MSである。主なパイロットはマ・クベであり、彼の時代錯誤な騎士道精神と、趣味の骨董(主に壺)蒐集にかける情熱へ対するリスペクトを表した独特のデザインで知られている。
概要[編集]
ギャンはゲルググと同時期に開発された機体であり、それまでリニューアルが進まないままになっており(地球連邦軍と相対的な意味で)旧式化の一途を辿りつつあったジオン軍の軍容を一新する次期主力量産タイプのMS(モビルスーツ)として大いに期待が寄せられた。
しかし、その扱いについては、映画を観れば一目瞭然となる通り、実にどうでもいい扱いを受けてしまった可愛そうな機体である。
そもそも、素人将校であるマ・クベがそのパイロットとして振り分けられた辺りから、ギャンの運命は決定されたと言っても過言ではない。とは言いつつも、ほぼまったくの素人であったマ・クベが搭乗しても、地球連邦軍の主力部隊と対等に戦えたところから、MS自体の性能は決して悪くないという事を証明している。後述のごとく、ごく短期の訓練でも操縦が可能という扱いやすさは、兵器として優れた素質を持つものであった。
その戦果こそ残念に終わってしまったものの、戦の勝敗は兵家の常にして時の運であり、決してジオン軍MS開発部の手抜かりでもミスでもない、という主張が後々まで繰り返されたのは言うまでもなかった。
余談となるが後述の壮絶なる最期の後、民間人の手によって拾われ改修したという説がある。
武装[編集]
ギャンには当時最新鋭であった武装がふんだんに装着され、その開発経費も含めてギャン自体の開発予算として計上された。
ジオン軍首脳部からは「ただ高いだけで、案山子(かかし)くらいにしか役立たない」と酷評されたため、決してそんな事はない、とツィマッド社MS開発部はツイッターに書き込み、軍事ヲタと大舌戦を繰り広げた。兵装はほぼ接近戦に特化したもので、大火力および遠距離攻撃は他機種や艦艇に任せるコンセプトであった。
どんな強力な兵器であろうともそれを使いこなすのは人間なのである。ギャンというMSは、その事実について深く考えさせられる機会を関係者にもたらしたとも言える。
……もっとも、それで潔く反省するようなタマであればあんな負け方はしないのであるが。
- 専用ビームサーベル
- 基本のひな型はザクのそれを流用しているものの、放出する熱量は従来の1.56倍に達し、本体との仮接装着によってMS自体の機械擦動部から発せられる金属摩擦(機械損耗の原因となるため、あまり歓迎されない)を熱転換によってビームサーベルへと転移させることによって更なる出力向上に成功した。機械損耗も最小限に防ぐことができるため、一石二鳥である。また、通常時(使用しない時)はエッジ部分(光っている刃)を出力部(サーベルの取っ手)に収納した上で、頭部のツノにかぶせる(サーベルを持っていない時、頭部のツノは少々大きめになっている)ことで機体を格納する際の省スペースにも貢献している。
- 専用ミサイルシールド
- ギャン専用に開発された丸型のシールドで、独特なフォルムが非常にマッチしている。12発のニードル・ミサイルを格納し、随意に発射することで直接攻撃はもちろんのこと、空中に待機させることも可能(固定滞空時間:156分)であるため、空中機雷としての活用も可能であり、更には自身が逃げる場合に退路を塞ぐ形で放出すれば、いわゆる撒菱(まきびし)として活用することも出来るすぐれものである。また、特有の半円型は耐衝撃性に優れており、楯として理想的な形をしているものの、生産コストが高く量産性も低いため、結局ギャン専用装備としてのみ使用されていた(そもそも他のMSに装着するとカッコ悪いという大人の事情を言うべきではない)。そして楯の裏に隠されているハイドボンブ(Hyde-Bomb)は本来、空中機雷としての使用を意図して開発された156kg爆弾であるが、刀折れ矢尽きた状態において自爆する用途で使われることが多かった[要出典]。
- 中には、順次放出したニードル・ミサイルで巧みに攻撃を防ぎながらハイドボンブを抱えてカミカゼ突撃をしたという超絶技術を誇る勇者もいたらしいが、そんな戦技をもっているなら普通に戦い抜いた方がよほど戦略に貢献できた筈であり、男の中の男ほど死に急ぐという教訓のみを残して、彼は散って行ったのであった。
評価[編集]
かくして最先端技術と最新鋭兵器、そしてなけなしの予算と人材をふんだんに盛り込んだ起死回生の一手として開発されたギャンであったが、やはり軍首脳部が硬直している状態において戦況はいかんともしがたく、とある司令官などは「そんな軟弱なフォルムで戦えるものか、いやしくも誇り高きジオン軍軍人たる者、その兵器のデザイン一つとっても英雄的気質を求めるべきであり、ミノフスキー戦略論などは到底受け入れられるものに非ず……」などと喚き散らすばかりであったため、結局のところギャンならではの特性に合致した運用・戦術については採用されることなく、あたら「戦場の藁人形」として無駄に破壊されて行くばかりなのであった。
そのため、後世に伝わったのは「ギャンは弱い、かませ犬」という根拠のない噂ばかりであり、その高性能や投入された最新鋭技術などについてはなかったこととされてしまった(その後、連邦軍によって技術のみが伝わったが、それがギャンに由来していることなどは誰も気にしない)のであった。
戦歴[編集]
かくして開発されたギャンは数多くの戦場へ投入されたが、なにぶん試験に費やす時間がなかったのと同様に、パイロットの訓練にも時間がとれず、ほとんど何も知らないまま気づいたらコックピットに乗せられていた、という笑えない逸話が数多く残されている。
つまりは体で覚えろという事であり、戦場がすなわち学習の場と言うよりむしろ試運転である。
そのため、機械や作動プログラムに不具合が生じたり、各種の不備によって運用に支障が生じたために次々と戦線から脱落……できたのであればまだ幸運というもの、例えば中にはほんのはずみで虎の子(最終兵器)であるハイドボンブを作動させてしまったためにそのまま……という悲惨な事故(脱出方法すら満足に教育されていなかった)もあった。
そんな、ある意味における修羅場を乗り越えた少数精鋭の(部隊コードは秘密)であったが、補給もままならぬまま、多勢に無勢、結局は全滅してしまったのであった。
しかしながらその果敢な奮闘ぶりについては地球連邦軍の脅威と尊敬の的となり、むしろジオン公国においてよりも地球連邦軍において彼らの功績は高く評価されているのであった。ウラガン!あの壺は間違いなくキシリア様に届けてくれよ!あれは、いいものだぁ!!
戦後処理[編集]
実戦にて出撃した機体は、前述の通り、可動機全機が破壊されたため現存しないが、整備中やメーカーからの引き渡し前などの理由で数機が残存しており、博物館送りのほか民間にも横流しされた。
民間転用時の改修もあり操縦のしやすさが評価され、ホビーザック同様に戦後の再生産もされ、民間でも様々な世界で平和利用目的で転用された。
戦後は数多くの絵師が、鉛筆書きの下書きとして多数のギャンを描いており、ゴーギャンなどギャンの絵で名を残した有名な画家も数多いとされる。 なかには機体に女物の服を着せる、外見だけ戦中の各陣営の他機種とすげ替えるなどの事例もみられた。
もし近所に、無駄に決めポーズをしていたり、セクシーポーズをしているギャンを見かけたら周辺を見てみよう、きっと神絵師が自分の機体を撮影やスケッチしているはずである。
近代文明と無縁のはずの世界でも、しばしばギャンの姿を見かけるため、外来種としての野生化が憂慮されている。
関連項目[編集]
ああっ!ウラガン…あのつぼをキシリア様に届けておくれ!
あれは…いいものだ! (Portal:スタブ)