ASML
フェルトホーフェンの本社 | |
種類 | 公開会社 |
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市場情報 |
Euronext: ASML NASDAQ: ASML |
本社所在地 |
オランダ 5504 De Run 6501, フェルトホーフェン |
設立 | 1984年 |
業種 | 半導体産業 |
事業内容 | 半導体露光装置の製造・販売 |
売上高 | 211億7000万ユーロ(2022年)[1] |
純利益 | 56億2400万ユーロ(2022年)[1] |
総資産 | 363億ユーロ(2022年)[1] |
従業員数 | 39,086人(2022年) |
外部リンク | 公式ウェブサイト |
ASML(日: エーエスエムエル、蘭: ASML Holding N.V.)は、オランダ北ブラバント州フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーである。半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)を販売する世界最大の会社で、16カ国に60以上の拠点を有し、世界中の主な半導体メーカーの80%以上がASMLの顧客である。日本法人はエーエスエムエル・ジャパン株式会社。ユーロネクスト・アムステルダム、NASDAQ上場企業(Euronext: ASML 、NASDAQ: ASML)。
概要
[編集]IDMやファウンドリなどの半導体メーカーは、ムーアの法則に従い、製造する集積回路(IC)を年々微細化する。ICの製造工程では、感光材料(フォトレジスト)の膜で覆われたシリコンウェハー上にパターンを光学的に結像させる。このシリコンウェハーに露光する手順を1枚のウェハー上で30から40回くり返す。その後、フォトレジストはさらに加工され、シリコン上に実際の電子回路が形成される。したがって、露光機の性能がICの性能を左右すると言っても過言ではない。そのためASMLは継続的に研究開発を行っている[2]。
ASMLは液浸の採用によって2003年以降、躍進した[3]。一方で、現代の液浸露光技術に関する基本特許はニコンが保有していて両社の間には最近の2019年まで様々な法的紛争が起きていた。2006年に出荷された「XT:1700i」は45nm世代の量産に向けたArF液浸スキャナーで、光学系の開口数(N.A.)が1.20と、初めてこれまでの限界とされてきた1.00を超えた[3]。
近年の露光機には、光源に紫外線を発するArFエキシマレーザーが使用されており、さらに液浸露光技術が用いられる。2019年には液浸露光装置の解像度が13ナノメートルに達した[4]。
また、ASMLは2020年(令和2年)現在、世界唯一の極端紫外線リソグラフィ(EUVL)装置メーカーである。同装置は7nmノード以下の露光が可能である。同装置の価格は1台当240億円に達する[5]。
光学系は前からカール・ツァイスが供給し、蛍石や石英がレンズに使用されている。近年では反射鏡を組み合わせた光学系もある。技術をアウトソーシングする戦略は、国内外からオープンイノベーションの成功例とも評価された。
ただし、躍進を始めてからは違う局面になっている。ツァイスの半導体事業は、2000年代初頭に子会社であるSMT社に分社化されていて、近年ASMLが資本参加している[6]。前からの光源サプライヤーであるアメリカのサイマーは2012年に買収している[7]。2020年には他の光学メーカーを買収し、光学技術まで内製化している[8]。
ASMLは本来オランダの政策金融で破綻を免れた後、日本勢の独走に危機感を感じていたアメリカ官民の理解を得て、技術導入と買収によって成長した企業という背景をもつ。
製品
[編集]液浸リソグラフィー
[編集]液浸リソグラフィは1970年代にバーン・ジェン・リンによって初めて提案されて以来[9]、ASMLは台湾積体電路製造(TSMC)と協力してきた。2004年、TSMCはASMLの液浸リソグラフィを使用して90ナノメートルプロセスの半導体ノードの商業生産を開始した[10]。2011年には、同社のTWINSCAN NXT:1950iシステムは、水浸レンズと波長193nmの光を発生するフッ化アルゴンレーザーを使用して、1時間当たり最大200枚のウェハで32ナノメートルまでのフィーチャーを製造するために使用されている[11]。2011年現在、平均的なリソグラフィ装置の価格は2700万ユーロである[12]。
DUVリソグラフィー
[編集]ASMLの深紫外(DUV)リソグラフィ装置は、IC の構造を形成する微小な回路を印刷するために、紫外スペクトルを透過する光を使用する[13]。
2009年、ベルギーのIMEC研究センターは、プロトタイプのEUVリソグラフィ装置を用いて、世界で初めて機能的な22ナノメートル CMOSスタティック・ランダムアクセス・メモリ・セル(SRAM)を製造した[14]。 2011年には、量産型(非プロトタイプ)のEUV装置が出荷された[12]。
EUVリソグラフィー
[編集]数十年にわたる開発の末、ASMLは2013年に初の量産型極端紫外線露光装置を出荷した[15]。これらの装置は、高エネルギーレーザーを溶融スズの微細な液滴に集光してプラズマを生成し、EUV光を放出することで、波長13.5nmの光を生成する。この光は、世界で最も平坦なツァイス製ミラーに反射され、シリコンウェーハの表面に照射され、チップの設計を実現する[16]。ASMLのEUV製品で最も売れているのはツインスキャンNXE:3600Dで、最高2億ドルもする[17]。トラック1台分の大きさのこの装置を出荷するには、ボーイング747型機3機で180トンを移動させる必要がある[18]。
ASMLは次世代のEUVシステムに取り組み、研究開発目的の顧客への最初の出荷は2023年末に行われる予定である[19]。このプラットフォームは、開口数(NA)を0.33から0.55に増加させることからHigh-NAと名付けられ[20]、各システムの価格は3億ドルになると予想されている[21]。
ナノインプリントリソグラフィー
[編集]液浸リソグラフィとEUVリソグラフィに加えて、ASMLはインプリントリソグラフィをカバーする充実した知的財産ポートフォリオを有している[22]。
世界シェア・ランキング
[編集]売上高ベースで2019年のASML露光装置の世界シェアは81.2%である[23]。1996年は日本のニコンが約50%弱、キヤノンが約25%のシェアを獲得していた。ASMLは同ベースで2002年に初めて1位となり、2005年以降ニコンを完全に抜いた。
露光装置の内訳を見ると、EUVで世界シェア100%、ArF液浸で97%、KrFで65%(2018年、売上高ベース[24])と高分解能の露光装置では圧倒的なシェアを獲得している、装置の価格はEUV装置で一台200億円程度、比較的安い装置でも数十億円は下らない非常に高価な設備である。
2008年の半導体製造装置メーカーランキング(VLSI Researchによる)では、東京エレクトロンを抜き2位に浮上し[25]、2011年の同ランキングではアプライド・マテリアルズを抜き、初めて1位となった。その後2022年度ランキングまでは2位を保持している[26]。
大学との産学連携によって始めたIMECは、今はリソグラフィだけではなく、先端工程開発全般をリードしている。
沿革
[編集]- 1984年 フィリップス社とASMインターナショナル社がそれぞれ50%ずつ出資する合弁会社ASM Lithographyとして設立[4]
- 1988年 スピンオフし独立した企業となり、旧社名の省略形のASMLを社名とする
- 1995年 アムステルダム証券取引所およびナスダックに上場[4]
- 2000年 アメリカの同業SVGを買収した事によって、それまでにアジア新興勢を取引先としていたASMLが最大の半導体メーカー米インテルへのアクセスを確保、一気にシェアを拡大
- 2001年 エーエスエムエル・ジャパン株式会社を設立。同年12月ニコンが特許侵害でASMLを提訴(2004年に和解)[27]
- 2004年8月にArF液浸露光装置の第1世代機(試作機)「AT:1150i」出荷
- 2004年 第2世代機(先行量産機)「XT:1250i」出荷
- 2004年 第3世代機(量産機)「XT:1400i」出荷
- 2006年 第4世代機(量産機)「XT:1700i」出荷
- 2011年 量産型(非プロトタイプ)「NXT:1950i」出荷
- 2012年 次世代露光技術の一つである極端紫外線の開発の加速化のため、世界半導体大手の3社インテル、サムスン、TSMCから約50億ドルの投資を受け入れる。ニコンと長いパートナー関係のインテルが6割の30億ドルを担う事になる[28]。ニコンは同技術の普及が起こる可能性が低いと判断し、2010年代初頭に開発から撤退した
- 同年 アメリカのサイマーを買収[7]
- 2016年 台湾の漢民微速科技を買収[29]
- 2017年 ニコンがASMLを再び特許侵害で提訴[30]
- 2018年 極端紫外線初の量産機「NXE:3400B」の本格的な出荷と使用の開始
- 2019年 ニコンとの和解成立[31]
- 2020年 ドイツのベルライナー・グラス・グループを買収[8]
日本法人
[編集]日本法人は「エーエスエムエル・ジャパン株式会社」(ASMLジャパン)で、2001年に設立、東京(御殿山トラストタワー)に本社オフィスを持つほか、岩手県北上市、山形県鶴岡市、三重県四日市市、広島県東広島市、長崎県諫早市、熊本県益城郡、大分県大分市にオフィスを持つ[32]。
出典
[編集]- ^ a b c “ASML Financial statements US GAAP”. asml.com. 25 January 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。26 November 2023閲覧。
- ^ “ASMLの半導体技術、「ムーアの法則」維持できるか”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2016年10月3日). 2017年1月2日閲覧。
- ^ a b F2スキャナーからArF「液浸」スキャナーへの大逆転 EE Times Japan 2016年8月30日配信 2021年6月4日閲覧。
- ^ a b c “ASMLの歴史”. 2012年7月20日閲覧。
- ^ Sterling, Toby (2020年4月15日). “ASML first quarter net profit misses estimates, 2020 targets still achievable” (英語). Reuters 2020年10月15日閲覧。
- ^ “ASML、独光学機器大手系に1100億円出資”. 日本経済新聞 電子版 (2016年11月4日). 2020年9月18日閲覧。
- ^ a b “ASML、半導体向けEUVリソグラフィの開発を促進に向けCymerを買収”. マイナビニュース (2012年10月17日). 2017年1月2日閲覧。
- ^ a b “半導体製造装置のASMLが独光学部品メーカーを買収”. FBC (2020年7月16日). 2021年2月10日閲覧。
- ^ “Burn Lin: The 2023 SPIE Mozi Award”. spie.org. 6 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月6日閲覧。
- ^ “90 nm Technology”. TSMC (2019年). 26 June 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。30 June 2019閲覧。
- ^ ASML Enhances NXT:1950i to Meet Challenging Imaging and Overlay Requirements and Provide a Cost Effective Platform for 22nm Archived 5 April 2012 at the Wayback Machine.. Press release, 12 July 2011.
- ^ a b Third quarter 2011 results Archived 5 April 2012 at the Wayback Machine.. ASML press release.
- ^ “ASML EUV lithography systems” (英語). www.asml.com. 2023年7月4日閲覧。
- ^ IMEC presents functional 22 nm SRAM cells fabricated using EUV technology Archived 1 June 2010 at the Wayback Machine.. IMEC press release, 22 April 2009.
- ^ “ASML EUV lithography systems” (英語). ASML. 31 March 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月30日閲覧。
- ^ Patel, Nilay (2023年1月31日). “The global battle over chip manufacturing and why the US is trying to stop China from buying machines from the Netherlands” (英語). The Verge. 31 March 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月30日閲覧。
- ^ Tarasov, Katie (23 March 2022). “ASML is the only company making the $200 million machines needed to print every advanced microchip. Here's an inside look” (英語). CNBC. 14 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月30日閲覧。
- ^ Christoph G. Schmutz (July 30, 2021). “Wie die niederländische Firma ASML in den technologischen kalten Krieg zwischen den USA und China geraten ist”
- ^ “ASML EUV lithography systems” (英語). ASML. 31 March 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月30日閲覧。
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- ^ For example, U. S. Patents 7618250, 7692771 and U. S. Patent Applications 20070018360, 20100193994.
- ^ 世界半導体製造装置・試験/検査装置市場年鑑2019. グローバルネット株式会社. (2019)
- ^ 能夫, 今中. “特集:EUV露光装置が織り成す半導体革命(レーザーテック、東京エレクトロン、アドバンテスト)”. トウシル 楽天証券の投資情報メディア. 2020年11月25日閲覧。
- ^ 2008 Top Ten IC and Related Equipment Suppliers (PDF) VLSIresearch
- ^ 2011 Top Semiconductor Equipment Suppliers (PDF) VLSIresearch
- ^ “ニコン、ステッパー特許訴訟でASMLと和解”. ITmedia News (2004年9月29日). 2020年9月15日閲覧。
- ^ “Samsung、ASML株の3%を6億3000万ドルで取得へ”. EE Times Japan. 2020年12月1日閲覧。
- ^ “蘭ASMLが台湾の漢民微測科技を買収へ-約3260億円で”. ブルームバーグ (2016年6月16日). 2017年1月2日閲覧。
- ^ “ASMLおよびCarl Zeissに対する半導体露光装置に関する特許侵害訴訟の提起について”. www.nikon.co.jp (2017年4月24日). 2020年9月15日閲覧。
- ^ “Nikon | ニュース | 報道資料:ニコン、ASML、Carl Zeiss間における全ての訴訟手続の和解合意について”. www.nikon.co.jp. 2020年9月9日閲覧。
- ^ “Contact information” (英語). ASML Holding N.V.. 2020年7月25日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- エーエスエムエル・ジャパン株式会社(ASMLジャパン)
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